慢性の下痢

慢性の下痢

慢性下痢の原因と見分け方
東洋医学と鍼灸治療で腸から整える

「お腹が弱く、いつも下痢気味…」
「ストレスを感じると、

すぐにお腹の調子が悪くなる…」
「下痢止めを飲んでも、根本的には治らない…」

長引く慢性の下痢は、日常生活の質(QOL)を大きく低下させる、非常につらい症状です。

この記事では、慢性下痢がなぜ起こるのか、その原因と症状のタイプ、そして東洋医学に基づく鍼灸治療によるアプローチや、ご家庭でできるセルフケア、食事療法について詳しく解説します。

【目次】

  1. 慢性の下痢とは?~その原因と症状の見分け方~
    • 下痢が起こるメカニズム
    • 慢性の下痢を引き起こす主な原因
    • 【重要】 まずは専門医による正確な診断を
  2. 慢性の下痢に対する鍼灸治療
  3. ご家庭でできる!下痢のセルフケアと食事療法
    • 外出先での急な下痢の症状には「足三里」
    • 急性胃腸炎の場合の家庭療法
    • 食べて改善 消化機能を助け、身体を温める食事
  4. 【コラム】体からのSOSサイン~飲酒後の下痢は膵臓の疲れかも?~
    • なぜ飲んだ翌日に下痢をするのか?
    • 危険なサインと予防法
    • 何科に行くべき?

1.慢性の下痢とは?
~その原因と症状の見分け方~

下痢が起こるメカニズム

お腹が痛む女性

下痢とは、便が形を失って、水分量の多い水様便泥状便になる状態を指します。 これは通常、大腸で行われる水分吸収がうまくいかないために起こります。その背景には、大きく分けて二つの原因があります。

  1. 腸の運動亢進
    腸のぜん動運動が活発になりすぎて、内容物が急速に腸を通過するため、水分が十分に吸収される時間がない。
  2. 水分吸収機能の低下
    腸の粘膜などに問題があり、水分を吸収する働き自体が低下している。

いずれにしても、その陰には何らかの原因が潜んでいます。

慢性の下痢を引き起こす主な原因

下痢には、症状の現れ方から急性と慢性の2種類があります。 食中毒やウイルス感染などによる急性の下痢とは異なり、長期間続く慢性の下痢には、以下のような原因が考えられます。

  • 消化器系の疾患
    • 過敏性腸症候群(IBS)
      ストレスなどが原因で、検査では異常がないのに下痢と便秘を交互に繰り返すことが多い。
    • 慢性腸炎
      潰瘍性大腸炎やクローン病など。
    • 吸収不良症候群
      消化された食べ物の栄養分が腸管からうまく吸収されず、体重が著しく減少することがある。
  • 胃腸病以外の全身性疾患
    • ホルモン異常
      バセドウ病(甲状腺機能亢進症)など。
    • その他の内臓疾患
      腎臓病(アジソン病など)や心臓病が進行し、尿毒症になった場合、腸の粘膜がうっ血して水分の吸収が悪くなり、下痢を起こすことがあります。
  • 生理的・心因性の要因
    • 生活習慣
      水分やアルコールの摂りすぎ、冷たいものの飲食など。
    • 精神的ストレス
      不安や悩み、緊張などが自律神経を乱し、腸の働きに影響を与える。
    • アレルギー
      食物アレルギーなどが原因となることもあります。

【重要】まずは専門医による正確な診断を

下痢が続くときは、その原因が食べ過ぎや寝冷えといった一時的なものなのか、あるいは治療を必要とする病気なのかを見極めることが非常に重要です。 特に、高熱が出たり、お腹の痛みが激しかったり、下痢の回数が極端に多いといった場合は、重い病気の可能性も考えられますので、自己判断せずに必ず速やかに医療機関(内科、胃腸科など)を受診してください。

鍼灸治療の対象となる下痢

鍼灸治療は、特にはっきりとした原因疾患がなく、消化器系の検査をしても異常が検出されないにも関わらず、下痢をしやすくて困っているという方に、優れた効果を発揮します。

強いて原因を挙げれば、精神的なストレスや不規則な生活など、神経症的な要素が関わっているケースが多いです。

このような下痢でお悩みの方は、神経質でやせ型、顔色が悪く、お腹が船底のように凹んで硬くなっている、といった特徴が見られることがあります。また、へそのあたりでゴロゴロと音がし、下痢と便秘を交互に繰り返しがちです。

このような慢性化した下痢は、2~3回の治療で完治させようとせず、気長に体質改善に取り組むことが大切です。性急な効果を期待すると、その焦りがまた下痢の原因になってしまうこともあるからです。

腎臓病
心身症

2.慢性の下痢に対する鍼灸治療

鍼灸が慢性の下痢に効果的な理由

  • 自律神経の調整
    ストレスや疲労で乱れた自律神経のバランスを整え、過敏になった腸の働きを正常化するのを助けます。
  • 消化器機能の強化
    東洋医学でいう「」や「」の働きを高め、消化吸収機能を改善します。
  • 「冷え」の改善
    お灸などを活用し、お腹や腰を芯から温めることで、冷えからくる下痢を改善します。
  • 水分代謝の調整
    全身の水分代謝を整えるツボを刺激し、身体の「水はけ」を良くします。
  • 体力・気力の向上
    根本的な体質改善により、疲れにくく、環境の変化にも対応できる身体づくりをサポートします。

症状緩和に効果が期待できる主要なツボの例

慢性の下痢のタイプや体質に合わせて、以下のツボを中心に施術します。

背部 「三焦兪さんしょうゆ」、「胃兪いゆ」、「大腸兪だいちょうゆ
   「小腸兪しょうちょうゆ
腹部 「中脘ちゅうかん」、「天枢てんすう」、「大巨だいこ
手部 「合谷ごうこく
足部 「足三里あしさんり」、「三陰交さんいんこう」、「築賓ちくひん

具体的な鍼灸治療法(鍼・灸・粒鍼)

  1. まず、うつ伏せで、背中にある「三焦兪」、「胃兪」、「大腸兪」、「小腸兪」を刺激します。
    • 三焦兪」は、東洋医学で飲食物の消化・吸収・排泄という一連のエネルギー代謝を司る重要なツボです。
    • 胃兪」、「大腸兪」、「小腸兪」は、その名の通り、胃、大腸、小腸の機能をそれぞれ整えるツボで、特に「大腸兪」は消化不良による下痢に欠かせません。
  2. 慢性下痢には、さらに生命力を補う腰の「腎兪じんゆ」と、胃腸障害を改善する働きのある首の付け根の「大椎だいつい」にも治療を加えます。
  3. 次に、仰向けで、お腹の「中脘」、「天枢」、「大巨」を刺激し、胃腸の働きを直接的に整えます。
  4. 最後に、手足のツボ、「足三里」、「三陰交」、「築賓」や、手の「曲池きょくち」、「合谷」などを刺激して、全身のバランスを調整します。

【お灸(灸治療)の活用】 慢性下痢には、お灸が非常に効果的です。上記のツボのほか、腕の「曲池」、「手三里てさんり」、人差し指の「商陽しょうよう」、足の「梁丘りょうきゅう」、「裏内庭うらないてい」(内庭のほぼ裏の位置で、第2・3中足骨基節関節前方の陥凹部)なども加えると一層効果が期待できます。 症状に応じて、以下のようにお灸のポイントを絞ることもあります。

  • 一般的な下痢 「大腸兪
  • 胃の具合も悪い時 「胃兪
  • 痩せていて元気がない人 「胃兪
  • 絶えずお腹が痛む人 「天枢
  • 下腹が痛み、冷える人 「大巨」に加えて「関元かんげん」を最優先に。 お灸は、1カ所に5~7壮すえます。腹部が冷えている場合は、熱さがマイルドな知熱灸ちねつきゅうを用いるのも良いでしょう。

治療効果を高めるポイント

  • 温熱刺激
    慢性の下痢の場合、お腹を温めると腸の過剰な働きが抑えられ、下痢を止める助けとなります。施術前に蒸しタオルやホットパックなどで腹部を温めてから治療を行うと、効果が高まります。
  • 粒鍼りゅうしん
    治療後にツボに粒鍼(円皮鍼)を貼っておくと、刺激が持続し、一層の効果が期待できます。これは、皮膚に直接接触するため、その効果が鍼や灸と同様になると考えられるからです。

3.ご家庭でできる!
下痢のセルフケアと食事療法

外出先での急な下痢の症状には「足三里」

外出先で急にお腹の調子が悪くなる原因は、食中毒などの病気でなければ、冷えからくる場合がほとんどです。そんな時には、膝の下にある万能ツボ「足三里あしさんり」を強く指圧してみてください。親指で爪先を立てるようにして、グーッと刺激します。

急性胃腸炎の場合の家庭療法

暴飲暴食、腐敗物の摂取、寝冷えなどによる急性胃腸炎の場合は、以下のマッサージが役立つことがあります。

  1. うつ伏せになり、お腹の下に枕などを置きます。
  2. ご家族に、背中とその両側を親指で押し揉みしてもらい、その後、親指の側面を使ってしごくようにマッサージしてもらいます。
  3. 仰向けになり、お腹の中央線とへその両側を、皮膚が赤くなるくらいまで親指で押し揉みします。
  4. 最後に、眉間にある「印堂いんどう」、「攅竹さんちく」、「太陽たいよう」などを人差し指で押し揉みして終了です。

食べて改善
消化機能を助け、身体を温める食事

下痢をしやすい方は、冷たい食べ物は控え、体を温める食材を取り入れましょう。また、消化機能を円滑にする食材もおすすめです。

  • 下痢を止め、腸の働きを整える食材例
    餅米、ハトムギ、レンコン(加熱したもの)、梅干し、りんご、イチゴ、キウイフルーツなど
  • 消化機能を円滑にする食材例
    餅米、えんどう豆、カボチャ、アジ、黒砂糖など

下痢をしたからといって、安易に市販の下痢止めを飲むのは注意が必要です。身体が悪いものを排出しようとしている場合、無理に止めるとかえって回復を遅らせることがあります。まずは出すものを出し切り、経口補水液などで水分と電解質をしっかり補給しながら、腸の中がきれいになるのを待つのが、下痢の正しい対処法の一つです。

4.【コラム】体からのSOSサイン
~飲酒後の下痢は膵臓の疲れかも?~

なぜ飲んだ翌日に下痢をするのか?

ストレスや食べ物など、下痢の原因は様々ですが、お酒を飲んだ翌日に決まって下痢になるという方は、膵臓すいぞうの機能が低下している(疲れている)可能性が疑われます。 もし、その下痢の際に便器の水面に薄く油が浮いていたら、膵臓がSOSを出しているサインかもしれません。

膵臓は、胃の裏側にある臓器で、主に二つの重要な役割を持っています。

  1. 消化酵素の分泌
    食べ物を分解するための消化酵素を分泌します。特に、脂質(油)を分解する上で不可欠な酵素(リパーゼ)を分泌します。
  2. ホルモンの分泌
    血糖値をコントロールするインスリンなどを分泌します。

飲酒後の下痢は、このうち脂質の分解機能に深く関わります。 もともと膵臓はアルコールに弱い臓器です。過度な飲酒によって膵臓の機能が低下すると、脂質を分解する酵素が十分に分泌されなくなり、一緒に食べた油物が消化できずに、そのまま下痢(脂肪便)として排出されてしまうのです。

危険なサインと予防法

お酒と一緒にポテトチップスや唐揚げ、脂たっぷりの焼肉を食べたり、締めに脂こってりのラーメンを食べたりする生活を続けると、次第に膵臓は疲弊し、悲鳴を上げてしまいます。 このような生活は、慢性膵炎に移行したり、激痛を伴う急性膵炎にかかったりするリスクを高めます。慢性膵炎は、糖尿病やすい臓がんの原因にもなりますし、急性膵炎も重症化すると命に関わる怖い病気です。

このような大病に進行しないように、特に日常的に飲酒される方は、

  • 休肝日を設ける
  • 飲酒時の油物を控える
  • 食事はゆっくりとよく噛んで食べることを心がけましょう。「キンキンに冷えた生ビールと脂っこいおつまみ」は、膵臓にとって最悪の組み合わせの一つです。

何科に行くべき?

飲酒後の下痢が続く、脂肪便が見られるといった場合は、一度、内科消化器内科を受診し、膵臓の状態を調べてもらうことをお勧めします。

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