口内炎・舌荒れの原因 ー 東洋医学のアプローチと鍼灸治療
「口の中に白いものができて痛い…」
「食事がしみたり、話しにくかったりする…」
「口内炎が何度も再発してつらい…」
口内炎や舌荒れは、多くの方が一度は経験する身近なトラブルですが、長引いたり繰り返したりすると、食事や会話の妨げとなり、日常生活の質を大きく低下させます。
この記事では、口内炎の様々なタイプとその原因、東洋医学に基づく鍼灸治療によるアプローチ、そして注意すべき危険なサインとの見分け方まで、詳しく解説していきます。
【目次】
1.口内炎・舌荒れとは?~その原因と主な症状~
口内炎の定義と様々なタイプ
口内炎とは、歯ぐき、舌、唇の内側、頬の粘膜など、口腔粘膜全体に起こる炎症の総称です。 その症状によって、以下のようにいくつかのタイプに分けられます。
- アフタ性口内炎
最も一般的なタイプ。白く円形の小さな潰瘍ができる。 - カタル性口内炎
粘膜が赤く腫れたり、白く濁ったりする。入れ歯の不適合や火傷などで起こりやすい。 - 潰瘍性口内炎
カタル性が悪化し、粘膜の深い部分まで傷ついた(潰瘍)状態。強い痛みを伴う。 - ウイルス性・真菌性口内炎
ヘルペスウイルスやカンジダ菌などが原因で起こる。 - その他(中毒性、アレルギー性など)
最も多い「アフタ性口内炎」とは
口の中に、痛みを伴う白く円形の斑点(潰瘍)ができるのをよく見かけますが、これがアフタ性口内炎です。 一度治っても、身体の調子によって何度でも再発するのが特徴で、女性に多く、20歳前後で初めて発症するケースが多いようです。その後、数年から十数年にわたって繰り返し再発することがあります。
初期の症状はそれほどひどくなく、通常は1週間前後で自然に治ることが多いですが、数年経ってからできるものは直径2cmほどの大きな潰瘍になることもあり、口の中だけでなく喉まで荒れてしまう場合もあります。 このような大きな潰瘍は、治癒に1ヶ月以上かかることもあり、その間、痛みがひどくて食事も思うようにできず、精神的にも大きな苦痛となります。
東洋医学で考える口内炎の原因
口内炎を完全に治すためには、何よりもその原因をはっきりさせることが大切です。医師の診察を受け、原因となっている病気(例えばベーチェット病やクローン病など)があれば、その治療をすることで口内炎も自然に治ります。 しかし、口内炎の多くは、現代医学的には原因がはっきりしないのが実態のようです。
東洋医学では、口の中やその周囲にできる潰瘍のようなものは、主に消化器系(特に胃腸)の異常や不調が原因で起こると考えます。 胃に熱がこもったり(胃熱)、ストレスで肝の機能が乱れて胃に影響したり(肝胃不和)、身体全体のエネルギーや潤いが不足したりすることで、口の粘膜が弱り、炎症が起こりやすくなるのです。
言い換えれば、胃腸が丈夫であれば、口や唇、舌の様々な病気は起こりにくくなる、という立場に立って、ひごころ治療院では鍼灸治療を行います。
2.口内炎・舌荒れに対する鍼灸治療
鍼灸が口内炎に効果的な理由
鍼灸治療は、口内炎のつらい症状を和らげ、再発しにくい身体づくりを目指す上で、非常に有効なアプローチです。
- 消炎・鎮痛効果
口内炎の周囲や関連するツボに刺激を与えることで、局所の血行を促進し、炎症を鎮め、痛みを和らげます。 - 消化器機能の調整
東洋医学的な考えに基づき、胃腸の働きを整えるツボを刺激し、口内炎の根本原因と考えられる内臓の不調を改善します。 - 免疫機能の調整と自律神経の安定
全身のバランスを整えることで、免疫力を高め、ストレスや疲労による自律神経の乱れを安定させ、口内炎ができにくい体質へと導きます。
症状緩和に効果が期待できる主要なツボの例
口内炎・舌荒れの症状や体質に合わせて、以下のツボを中心に施術します。
具体的な鍼灸治療法
鍼灸治療を受ける上での注意点
口内炎や舌荒れには、鍼灸治療が大変有効な場合があります。
特にお灸(灸治療)は、「廉泉」(あごの下)、「天突」、「中脘」、「脾兪」といったツボに対して、米粒大のもぐさを1カ所に3~5壮施灸することで、身体の内側から温め、回復力を高める効果が期待できます。
ご家庭でできるお腹のマッサージ
胃腸の調子が悪いと、口内炎ができやすくなります。このような場合は、ご家庭でも以下のセルフケアを試してみてください。
- ツボの名前
中脘 - 方法
3.【重要】体からのSOSサイン~口内炎と間違えやすい危険な病気~
口の中に白い斑点や膜がある場合は要注意(口腔がんの可能性)
口の中に炎症が起き、赤く腫れ、中央がへこんで白くなり痛みを伴う…。
これはよくあるアフタ性口内炎で、潰瘍の一種です。アフタ性口内炎は、疲れやストレス、栄養不足でできやすく、通常は1~2週間で自然に治るものがほとんどです。
一方で、これとは異なる注意すべきサインがあります。
- サイン
口や舌の粘膜に、こすってもとれない白い斑点や膜ができる。 - 考えられる疾患
これは口内炎ではなく、「白板症」という病気の可能性があります。白板症は、口腔がんの前段階(前がん病変)とも言われ、がん化するリスクが口内炎より断然高いとされています。
白板症の特徴
- 初めは口内炎のように潰瘍になっておらず、痛みもそれほど感じないことが多いです。
- なかなか治らない(2週間以上続く)のが最大の特徴です。治りにくい分、粘膜の修復が繰り返され、その過程で細胞ががん化しやすいと考えられています。
- 発生しやすい場所
口内のダメージを受けやすい場所に起こります。歯並びが悪かったり、合わない詰め物や入れ歯があったりして、その部分がいつもこすれている、あるいは頬の内側の同じ場所を噛む癖がある、といった場合に発症しやすくなります。
思い当たる節がある方は、すぐに歯科・口腔外科を受診しましょう。 歯の不具合が原因でいつも同じ場所に白板症ができる人は、歯医者さんで歯の調整をしてもらうことが重要です。
口腔がんは、かなり進行してから見つかるケースも少なくありません。口の中の異変は、ご自身では意外と気づきにくいからです。特に、痛みのない白板症の場合はなおさらです。 早期発見のために、定期的に鏡で口の中を隅々までチェックしたり、スマートフォンのカメラで口の中を動画撮影して記録したりすることをお勧めします。気になる部分が見つかれば、ただちに専門医に相談し、検査を受けましょう。
口腔がんを疑うその他のサイン
- しみる、痛む
- その部分を避けようとして、舌の動きが悪くなる、しゃべりづらい
- 出血して、口の中で血の味がする
「口の中がおかしいな」と思うことが続く場合は、「いつもの口内炎だ」と軽く考えずに、必ず専門医に診てもらうようにしてください。
何科に行くべき?
歯科/口腔外科/耳鼻咽喉科