慢性胃炎の原因と治療法 - 東洋医学のアプローチ
症状
慢性胃炎は、背が高い、やせ型、ひ弱な体質の人に多いといわれますが、一見、丈夫そうなのに慢性胃炎で悩んでいる人もいます。その病気の状態など、まだまだ解明されていないことも多く、鍼灸による東洋医学的アプローチも活用が期待されています。
症状は、食後の軽い胃痛や胃のもたれ、吐き気、お腹の張り、便秘、食欲不振などがあります。
初期の症状の表われ方も不安定ですが、長引きますと、体力の衰え、貧血、肩こり、脱力感なども伴います。なお、胃にポリープがある場合も慢性胃炎に似たような症状が起こります。
だいたい、50歳以上の人では、80%以上の割合で慢性胃炎がみられるといいます。中には自覚症状がないままに慢性胃炎になっている人もいるので、用心は大切であります。正確な判断には、定期的内の検査をすることであります。
東洋医学では、昔から「胃の六ツ灸」といいまして、背中の「肝兪」、「脾兪」、「胃兪」を重視しますが、これらのツボは慢性胃炎の症状を治すために実に効果的であります。逆に胃が悪いと、これらのツボにコリやしこりがあらわれます。
近年は、現代医学でもこのような現象に注目し始めて、「内臓の異常は関連する皮膚や筋肉の異常として体表にあらわれる」という「内臓-体性反射」によって説明されるようになっています。
鍼灸治療
主要なツボ
背部 「肝兪」、「脾兪」、「胃兪」
腹部 「巨闕」、「中脘」、「天枢」
手部 「合谷」、「内関」
足部 「足三里」、「三陰交」
などが基本的なツボです。
治療法
背中の「肝兪」、「脾兪」、「胃兪」を施術します。これらのツボは胃の六ツ灸といって灸をすえますと、慢性胃炎の症状に非常に効果があります。胃が悪い場合に、コリやしこりがあらわれているはずです。
次に腹部の治療をします。「巨闕」、「中脘」、「天枢」は慢性胃炎には重要なツボです。
最後に、腕の「内関」、手の「合谷」、足の「足三里」を刺激して、胃腸の調子を整えます。足の冷えが強い場合は、足の「三陰交」もあわせて刺激します。
慢性胃炎は、灸治療が非常に効果があります。半米粒大から米粒大のもぐさで、透熱灸あるいは知熱灸で、1カ所に3~5壮くらい3週間続けます。ニンニク灸やショウガ灸も効き目があります。鍼治療も同様に、ツボ治療が中心で、非常に効果があります。
メモ
慢性胃炎は東洋医学的治療とあわせて、胃を酷使しない生活習慣も大事になります。慢性胃炎は胃の働きが弱まり、抵抗力の衰えが原因なので、食事量が過度にならないようにします。刺激の強い食事はなるべく制限して、食べ過ぎや飲み過ぎを慎まなければいけません。
また、精神的な不安や緊張を取り除く規則正しい平穏生活は計り知れないものがあります。
慢性胃炎の家庭療法
下腹に力を込めて、おへそを中心に「の」の字を書くように摩擦をします。1回に100回以上なでるようにして、1日3回行うと胃の血流がよくなり、胃の働きが活発になります。お腹周りの体幹を強化するのも有効です。
体からのSOS
真っ黒な軟便が出る・・・胃がん
大便は体からの便り
便の色は、多少なりとも食べたものに影響されます。イカ墨スパゲティーを食べたら、真っ黒な便が出てくることもあるでしょう。ただし、そんな便が何度も出てくるときは注意が必要になります。特に真っ黒な軟便が出た場合は、すぐに医師の診断を受けたほうがいいでしょう。
病的な黒い便はタール便ともいわれ、その主な原因は胃がんです。胃の出血により便に血が混じり、便は黒くなります。ここで覚えておかなければいけないのは危険な便の色です。
便が黒い:胃がん、胃潰瘍
便が赤い:大腸がん、大腸ポリープ
便が白い:胆管がん、膵頭部がん
このように便の色によって、どこが悪いかが分かります。便は健康状態を知る重要なバロメータになります。おかしな色をしていないか、ちらっと見る癖をつけておきましょう。
なお、便が白くなる胆管がん、膵頭部がんは、非常に予後が悪いがんです。白くなる理由は胆汁にあります。人間の便は、もともとバリウムのような白色をしていますが、胆汁によって黄色くなります。この胆汁の通り道がふさがってしまうと、胆汁が腸に出ないために、便が黄色くならなくなります。痰咳の可能性もありますが、その場合は激しい痛みを伴います。痛みがあまりなく、便だけが白くなっている場合はがんの疑いが濃厚です。胆汁の通り道である胆管のがんや、すい臓の頭部と胆管の合流部辺りにがんができる膵頭部がんが考えられます。
胃がんの場合は、便の色のほかに、体内の出血によって貧血症状があらわれることも少なくありません。大腸がんと同様に、男性や閉経後の女性に貧血がある場合は注意が必要です。
ただし、小さながんの場合は、少量の出血のために明確な自覚症状があらわれないこともあります。そういう場合でも、爪やまぶたの裏が白っぽくなったり、軽度のめまい、ふらつき、息切れがあらわれたりします。
また、食後のみぞおちの鈍痛も、胃がんの初期症状として多いとされています。進行すると、食事に関係なく痛みが出るようになります。
なお現在、胃がんは早めに対処すればそこまで怖いがんではありません。一方で、胃がんは日本人がかかりやすい病気の一つで、がんによる死因でも、肺がん、大腸がんに次いで第3位になっています。しっかりと検診を受け、早期発見・対処が必要になります。
胃がんの原因のほとんどは、胃の中のピロリ菌であることが分かっています。ピロリ菌が長年にわたって胃の粘膜を刺激した結果、胃炎や胃潰瘍をおこし、胃がんまで進行させます。ですから、保有者はピロリ菌の除去が必要になります。ピロリ菌は、血液検査のほか、呼気検査でも分かります。ピロリ菌がいた場合でも、薬で簡単に除去できます。
他にも過度な飲酒や塩分摂取、刺激物、タバコ、ストレスが胃がんの原因として挙げられます。あまりい偏った食生活や習慣は、すぐに見直してください。
何科に行くべき?
消化器外科・内科/胃腸科
胃がんの最大の危険因子
がんとは、何らかの遺伝子の変化よって細胞が無秩序に増殖する病気のことであります。周囲の臓器を破壊するなどして大きくなり、時には命を脅かします。
多くのがんは、様々な要因が重なってできていて、原因は単一ではありません。しかし、それぞれのがんについては罹患リスクを上げる危険因子は多く知られています。
例えば、肺がんは喫煙者に多いがんであります。喫煙者の肺がんは非喫煙者より4.8倍も多く、喫煙は最大の危険因子であります。ちなみに、喉頭がんは5.5倍、食道がんは3.4倍、喫煙者に多いです。
では、胃がんはどうなのでしょうか。胃がんの危険因子としては、食塩や塩蔵品が知られています。塩蔵品とは、漬物のような塩漬けの食べ物のことです。また、喫煙が胃がんリスクを高めることも知られています。
しかし近年、もっと大きく、かつ確実な危険因子の存在が明らかになりました。ヘリコバクター・ピロリという細菌であります。胃にピロリ菌が感染しますと、胃の粘膜に慢性的な炎症を引き起こします。長い年月を経て萎縮性胃炎と呼ばれる胃粘膜の萎縮に発展して、胃がんが発生しやすい状態になると考えられています。
ピロリ菌に感染しても必ず胃がんになるわけではなく、ピロリ菌感染は一つの危険因子であります。しかし、感染者の胃がんのリスクは非感染者の15~20倍以上であり、ピロリ菌感染のない胃がんは1%以下とされています。
では、ピロリ菌はどのようにして人に感染するのでしょうか。実はほとんどが家庭内感染であります。乳幼児期に、親から口を介した感染が多いです。一方、大人になってからは、キスなどによる感染や食事による感染はないとされています。
胃にピロリ菌がいるかどうかは、様々な検査で調べることができます。よく行われるのが、尿素呼気試験という検査であります。尿素を含む検査薬を飲んだ後、口から吐く息を調べるものです。
ピロリ菌は、尿素を分解するという特徴を持ちます。尿素が分解されてできるのが、二酸化炭素とアンモニアです。よって、胃の中にピロリ菌がいれば、検査薬中の尿素が分解されて、発生した二酸化炭素が呼気に含まれます。逆にいえば、この二酸化炭素が検出できれば、ピロリ菌の存在を証明できます
ところが、ピロリ菌感染の有無にかかわらず、そもそも誰の呼気にも二酸化炭素は含まれています。どのようにして、ピロリ菌が発生させた二酸化炭素を認識すればいいのでしょうか。
実は検査薬の尿素中の炭素原子Cを、同位元素である¹³Cに置き換えておき、¹³CO₂を検出するのであります。自然界には、質量の異なる炭素原子Cが複数種類があり、約99%が¹²Cであります。したがって、検査薬を内服した後、呼気に含まれる二酸化炭素に¹³CO₂が多ければ、ピロリ菌の存在が証明できます。もちろん¹³Cは人体には害がありません。
ピロリ菌は、胃がん以外にも胃のポリープやリンパ腫、胃・十二指腸潰瘍など、さまざまな病気と関連しています。胃潰瘍や十二指腸の原因は何かと問うと、多くの人がストレスや暴飲暴食を挙げますが、実は約9割がピロリ菌か痛み止めであります。
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