腎臓病の原因 ー慢性腎炎とネフローゼ症候群と鍼灸治療
症状
腎臓病の中で代表的なものは、慢性腎炎とネフローゼ症候群であります。
慢性腎炎は、10~40代の間に多くみられて、大多数が自覚症状がなく、入社時の検診や定期健診、あるいは風邪や妊娠時などに、偶然タンパク尿を発見され、気づくことが少なくありません。進行しますと体がだるく、むくみや高血圧、心疾患などが生じて、治療は厄介になります。
また、ネフローゼ症候群とは、独立した一つの病名ではなく、①高度のタンパク尿、②低タンパク血症、③高脂血症、④全身のむくみの四つを主な症状とするものにつけられた広い呼び名であります。知るきっかけとしては、むくみで気づくことが多く、進行しますと、胸水や腹水もたまってきて、咳やたんが増え、呼吸も苦しくなり、食欲も減り、体がだるく、皮膚は蒼白となり、次第に体力が衰えてきます。
鍼灸治療は、腎臓の諸症状を軽くして、体の調子を整えて、腎臓の機能回復を目的で行います。
元来、腎臓は人体の水分代謝を調整する働きをします。東洋医学では、肺・脾・腎の三つが水分代謝に深い臓とされています。そして、臓を補うパートナーとして腑を考えますが、この場合、腎の臓に対する腑は膀胱となっています。
さらに、泌尿排泄系と関係が深いものに三焦があります。この三焦の機能が低下すると、水分のめぐりが悪くなって、尿が出にくくなります。
以上のことから、腎臓病に対するツボの治療方針は、肺・脾・腎の機能を整え、膀胱、三焦の機能を亢進することをねらいます。
鍼灸治療
主要なツボ
背部 「肝兪」、「腎兪」
腹部 「水分」、「肓兪」、「気海」
足部 「湧泉」
腕部 「曲池」
特に「腎兪」と「水分」は腎臓病の場合の特効穴といえます。
治療法
まず、背中の「肝兪」、腰の「腎兪」を刺激します。このとき、頻尿のある人は「膀胱兪」も刺激します。
腹部では「水分」を中心に、「肓兪」、「気海」を刺激します。このときも、頻尿のある人は「中極」を加えます。
顔のむくみには、腕の「曲池」、手の「合谷」を用い、足のむくみと冷えとりには、「足三里」、「築賓」、「三陰交」、「太渓」などを用います。
消化器系の不調やみぞおちの重苦しさがあれば、「巨闕」、「中脘」、「大巨」などを加えて治療します。
なお、腎臓病特有の疲れやすさや体のだるさをとるには、「肝兪」、「三焦兪」、「腎兪」、「肓兪」、「関元」を選んで治療します。
灸治療の場合は、「天柱」、「肝兪」、「腎兪」、「水分」、「肓兪」などに透熱灸を行います。「合谷」や「足三里」も効果的です。
血圧が高い場合は、頭頂部の「百会」を治療に加えます。
メモ
灸をすえるときは、もぐさをなるべく小さく切り、水疱やかさぶたをつくらないようにします。灸痕が化膿しますと、タンパクが増えるためです。
また、腎臓病は長い経過をとることが多いので、日常生活と飲食に気を配り、風邪その他の感染防止に努め、血圧の上昇を防ぎます。
むくみをとるには、かかとの中央をもむとよい
むくみの最も大きな原因は、尿をつくる腎臓の働きが悪く、血液中の水分が増えるためであります。足の裏のかかと中央を親指で押しもみ、あるいは、金づち化握りこぶしでリズミカルにたたくと、むくみが改善できます。片足に3~5分間行うといいでしょう。
コメントを残す