五十肩(肩関節周囲炎)

五十肩の根本原因にアプローチ!鍼灸でつらい肩の痛みを改善

五十肩(肩関節周囲炎)

「腕が上がらない…」
「夜、肩がズキズキ痛んで眠れない…」
「着替えや髪を洗う動作がつらい…」

40代から60代の方に多く見られるそのつらい肩の痛み、もしかしたら五十肩かもしれません。 五十肩は、肩関節の痛みと動きの制限を主な症状とする疾患で、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれます。近年では30代や70代で発症するケースも増えています。

この記事では、五十肩の症状とその経過、原因、そして東洋医学に基づく鍼灸治療によるアプローチや、回復に不可欠なリハビリ、日常生活での予防策までを詳しく解説します。

【目次】

1.五十肩とは?~その症状と3つの時期~

五十肩肩関節周囲炎)は、単なる「肩こり」とは異なります。 関節を形作る靭帯や、関節を動かす筋肉・腱といった肩関節周囲の組織が、主に加齢とともに柔軟性を失い、炎症を起こすことで発症します。「肩の痛み」と「肩関節が十分に動かない可動域制限)」のが大きな特徴です。

五十肩の主な症状

  • 痛み
    • 安静時や、特に**夜間にズキズキとした痛み(夜間痛)**が生じることがあります。
    • 腕を上げたり、後ろに回したり、特定の方向に動かした際に、鋭い痛みを感じます。
  • 可動域制限
    • 腕が上がりにくい(挙上制限)
    • 腕を後ろに回しにくい(結帯動作困難)
    • 髪をとかす、服を着替える(特に袖に腕を通す動作)、物を持ち上げるといった日常生活の動作が困難になります。
  • 肩周辺の筋肉の凝りや圧痛
    肩の周りの筋肉が硬くなり、押すと痛みを感じるポイント(圧痛点)が現れます。

初期は肩に重だるい痛みを感じる程度ですが、次第に痛みが強くなり、特に肩関節を動かすと激しい痛みに襲われます。日が経つにつれて痛みは和らぐ一方で、動かさないために肩の筋肉が痩せ、関節の動きがさらに硬くなる(拘縮:こうしゅく)こともあります。

症状の経過 3つの時期

五十肩は、一般的に以下の3つの時期を経て回復に向かいます。この経過は、早い方で1~2ヶ月、通常は半年~1年、長い場合はそれ以上かかることもあり、適切な時期に適切な対処をすることが早期回復の鍵となります。

  1. 急性期(炎症期)
    • 期間
      発症から約2週間程度
    • 症状
      最も痛みが強い時期。安静にしていてもズキズキと痛み、夜間痛で眠れないことも。この時期は無理に動かさず、安静が第一です。
  2. 慢性期(拘縮期)
    • 期間
      発症後2週間~数ヶ月程度
    • 症状
      激しい痛みは和らぎますが、肩関節が固まって動きが悪くなる「拘縮」が主な症状となります。痛みのない範囲で、少しずつ動かし始めることが重要になる時期です。
  3. 回復期
    • 期間
      発症後数ヶ月~1年以上
    • 症状
      痛みはかなり軽減し、固まっていた肩の可動域が徐々に改善していく時期です。積極的なリハビリで、根気強く動きを取り戻していきます。

放置すると、肩関節の動きが元に戻らないまま固まってしまうこともあるため、早期からの適切なケアが大切です。

2.五十肩の主な原因

五十肩の明確な原因はまだ特定されていませんが、以下の要因が複合的に関与していると考えられています。

  • 加齢に伴う肩関節周辺の組織の変性
    加齢により、肩関節を構成する腱や滑液包などの組織が変性し、炎症を起こしやすくなります。
  • 肩関節の使い過ぎや運動不足
    長時間のデスクワークや同じ姿勢での作業など、肩関節に負担がかかる動作や、運動不足による肩関節周辺の筋肉の柔軟性低下が原因となることがあります。
  • ストレスや疲労
    ストレスや疲労が蓄積すると、自律神経のバランスが乱れ、血行不良や筋肉の緊張を引き起こし、五十肩の発症につながることがあります。
  • 姿勢の悪さ
    猫背などの悪い姿勢は、肩関節に負担をかけ、五十肩のリスクを高めます。
  • 糖尿病などの基礎疾患
    糖尿病や甲状腺疾患などの基礎疾患がある人は、五十肩を発症しやすい傾向があります。

3.五十肩に対する鍼灸治療

鍼灸は、五十肩の各時期において、つらい症状を緩和し、回復をサポートする効果が期待できる治療法です。

鍼灸が五十肩に働きかける仕組み

東洋医学には「寒熱かんねつ痛痺つうひ」という治療原則があり、「冷えれば温めよ」「熱があれば冷やせ」「痛みがあれば手指で押すか鍼を刺せ」「しびれはなでるか灸をせよ」と考えます。 五十肩になると肩が冷え、血行が悪くなることが多いため、鍼や灸で温め、巡りを改善することが治療の基本となります。

  • 痛みの緩和
    鍼刺激が神経に働きかけ、痛みを抑制します。
  • 血行促進と消炎作用
    鍼や灸で硬くなった筋肉や関節周囲の血流を改善し、炎症を鎮め、組織の修復を助けます。
  • 可動域の改善サポート
    筋肉の緊張を緩め、関節の動きをスムーズにする手助けをします。

五十肩ケアに効果が期待できる主要なツボ

症状や時期に合わせて、以下のツボを中心に施術します。

頸部  「天柱てんちゅう
肩部  「肩髃けんぐう
背中  「天宗てんそう
腰部  「腎兪じんゆ
胸部  「中府ちゅうふ
腕部  「臂臑ひじゅ」、「尺沢しゃくたく

具体的な鍼灸治療法

お灸をする女性
  1. まず、五十肩では肩が冷えていることが多いため、ホットパックなどで肩を温めることから始めます。
  2. 腕を上げた時に肩先にできるくぼみにある「肩髃」を中心に、肩を覆う三角筋や、後頸部の「天柱」、肩甲骨上の「天宗」、胸の「中府」などを刺激します。
  3. 腕を後ろに回す動作(結帯動作)には、背中を走る広背筋が関わります。腰にある「腎兪」は、この広背筋に関連するツボであり、五十肩の治療において重要なポイントとなります。
  4. 腕の外側にある「臂臑」も、肩から続く三角筋の付着部にあたり、腕の痛みに対して効果的なツボです。
  5. お灸灸治療)も積極的に用います。上記のツボから症状に合わせて選び、1カ所につき3壮程度、根気よく(最低3週間程度)続けることで、より高い効果が期待できます。

4.回復の鍵!五十肩のリハビリと運動療法

五十肩は、慢性期以降、痛みが許す範囲で少しずつ動かすことが、固まった肩をほぐし、回復を促すために不可欠です。

五十肩に効くストレッチ・体操

  • アイロン体操(振り子運動)
    1. 痛くない方の手で机の縁などにつかまり、身体を前に45度ほど傾けます。
    2. 痛みのある側の腕をだらりと下げ、手にアイロンや水の入ったペットボトルなど、1~2kg程度の重りを持ちます。
    3. 腕の力を抜き、身体の反動を利用して、重りを振り子のように前後、左右に小さく振ります。
    4. 慣れてきたら、円を描くように右回し、左回しと繰り返します。 (※肩の力を抜いて、腕の重みで関節が自然に伸びるのを感じるのがポイントです。)
  • はしご体操(壁の指歩き)
    1. 壁から30cmほど離れて、壁に向かって横向きに立ちます。
    2. 痛みのある側の手の指先を壁につけます。
    3. 指を「尺取虫」のように少しずつ動かし、できるだけ高い位置まで腕を上げていきます。
    4. 「これ以上は痛い」と感じる少し手前の高さまで頑張り、数秒キープしてからゆっくり下ろします。
  • 肩甲骨のストレッチ
    肩甲骨を意識して前後に動かすことで、肩周辺の筋肉の柔軟性を高めます。

行ってはいけない運動・注意点

良かれと思って行った運動が、症状を悪化させることもあります。

  • 痛みを我慢して無理に動かす
    特に急性期に痛みを我慢して動かすと、炎症が悪化し、回復を遅らせる原因になります。
  • 急激な動作や重いものを持つ運動
    肩関節に急な負担がかかり、新たな痛みを引き起こす可能性があります。
  • 痛みが強い時の運動
    急性期など、痛みが強い時には運動を控え、安静にすることが最も重要です。リハビリは、必ず痛みが落ち着いてから、専門家の指導のもとで行いましょう。

5.日常生活でできる予防とセルフケア

血行促進と温熱療法

痛みの緩和や筋肉の緊張緩和には、血行を促進する温熱療法が効果的です。

  • 温熱療法の実践方法:
    • 蒸しタオルやカイロで温める
      肩周辺を直接温めます。
    • 入浴や温泉
      全身の血行を促進し、リラックス効果も期待できます。
    • 冷温交互療法
      温かいタオルと冷たいタオルを交互に当てることで、血管を拡張・収縮させ、血行を効果的に促進します。
  • 血行を良くする食事と生活習慣
    • バランスの取れた食事
      ビタミンやミネラルを豊富に含む食品を摂取しましょう。
    • 十分な睡眠
      睡眠不足は血行不良や筋肉の緊張を引き起こします。
    • 適度な運動
      ウォーキングやストレッチなどを習慣にしましょう。
    • 禁煙、節酒
      喫煙や過度の飲酒は血行不良の原因となります。

日常生活での予防策

  • 正しい姿勢を保つ
    猫背は肩関節に負担をかけます。背筋を伸ばすことを意識しましょう。
  • 同じ姿勢を長時間続けない
    デスクワークなどでは、適度に休憩を取り、ストレッチを行いましょう。
  • 身体を冷やさない
    特に肩周りを冷やすと筋肉が硬くなります。

ひごころ治療院では、あなたのつらい症状の改善はもちろん、再発しないための身体づくりと生活習慣のアドバイスまで、トータルでサポートさせていただきます。

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