肩こり

肩こり の鍼灸治療ー原因から解消法まで

肩こり は、首から肩、背中にかけての筋肉が緊張し、痛みや不快感を引き起こす一般的な症状です。多くの人が日常的に経験する症状であり、その原因や症状は多岐にわたります。

【目次】

1.肩こりの原因と症状とは?
2.肩こりの鍼灸治療
 ・主要なツボ
 ・鍼灸治療法
3.自宅でできる肩こり改善法
4.肩こり改善に役立つ栄養

肩こりの原因と症状とは?

筋肉の緊張から起こる肩こり

ある調査では、サラリーマンの持病の中で、水虫に次いで多いのは肩こりだといわれています。
その昔、四つ足で野山をかけめぐっていた人類の祖先が、二本足で立つようになったときから、人間の体には様々な負担がかかってきました。

肩が凝っている女性

第一は、重さ4㎏もある頭を細い首で支えなければならなくなったことであります。直立位となってからの人類の首は、頭をのせたまま四つ足獣より自由に、しかも広い範囲に動かせるようになりました。だからとはいえ、後ろ首から肩にかけてに筋肉の構造は変わっていません。

第二は、前足、つまり腕の発達であります。人類が万物の霊長と呼ばれるのは、腕を巧みに使って道具を発明したからでしょう。ところが、肩はそのために左右に体重の約8%もある重い腕をぶら下げることになり、さらに肩の筋肉は腕のデリケートな運動に合わせて、こまめに収縮や弛緩を繰り返す必要が生じました。

第三は、肩甲骨の動きが複雑になったことであります。腕の発達によって、肩関節の動きを左右する肩甲骨も複雑に動き、その周囲の筋肉が頻繁に使われるようになりました。

第四は、背骨でバランスをとって直立位を保っていることであります。おかげで背骨の両側の筋肉は発達したものの、上体を起こしているという重労働に勝てず、疲れやすい状態になっていることです。

二本足で生活するヒトには、首や肩、背中に常に負担をかけ、何らかの要因で肩こりが生じる宿命を持っているといえます。

肩こりの原因

肩こりの原因は実に多くあります。腕や肩の使い過ぎをはじめ、根をつめ作業をした、不自然な姿勢を長時間続けた、眼を使い過ぎた、精神的なストレスなどであります。また、虫歯、風邪、高血圧症、冷え症、胃炎、肝臓障害などでも肩こりは起こります。

いずれにしても、肩こりの仕組みは一つで、筋肉が緊張して収縮し、その部分の新陳代謝が悪くなって、体内の老廃物が蓄積されることで、血液やリンパ液の循環も滞り、更に筋肉は緊張度が増すという悪循環が起こることです。

肩こりを治すには、根本の原因を取り除くことも必要ですが、どこの筋肉がこっているかを知り、その部分の血行をよくすることが先決です。

どこの筋肉が凝るかで選ぶツボ

背中の筋肉

頻繁に肩こりが起こる場所を挙げます。

後ろ首は、こりを自覚しやすい場所であります。首の付け根が硬いと感じたときは、たいてい皮膚の表面に最も近い僧帽筋そうぼうきんに緊張が出ています。この筋肉は、後ろ髪の生え際あたりから出て、頚椎の両側を通り、肩から肩峰まで達しています。これは顔を上げて、両肩を後ろにそらせると、大きく三角に浮き上がってくる筋肉です。

後ろ首から両肩にかけてこっているときには、肩甲挙筋けんこうきょきんが緊張しているはずであります。この筋肉は、僧帽筋の下を通って肩甲骨の内側に達しています。顔を斜め下に向けて首をねじるようにしますと、僧帽筋と交差する状態でこの筋肉が浮かび上がります。

前かがみの姿勢を続けたり、立ちっぱなしでいたりした後は、脊柱起立筋せきちゅうきりつきんが緊張します。この筋肉は僧帽筋の始まる場所から出て、その下を通り、背骨に沿って腰まで走っています。両手を高く上げ、反り返りますと背骨の両側に細長く浮き彫りになるのがこの筋肉です。

細かい作業をした場合は、肩甲骨下筋けんこうかきんが緊張します。この筋肉は肩甲骨の前側にある筋肉ですが、肩甲骨の内側のへりに沿って肩甲骨下端に達しています。両腕を肩の高さに上げて「前にならえ」をしますと、この筋肉がはっきり浮き出てきます。

以上のようにして、どの筋肉がこっているのかを調べる、治療のときのツボの選択に役立てます。

肩こりの鍼灸治療

鍼灸治療は、肩こりの根本的な原因にアプローチし、症状の改善だけでなく、再発予防にも効果が期待できます。

主要なツボ

肩こりに使われるツボは非常に多いですが、主なものは

肩   「肩井けんせい
背中  「曲垣きょくえん」、「大椎だいつい」、「厥陰兪けついんゆ
    「膈兪かくゆ」、「膏肓こうこう」、「膈関かくかん
首   「天柱てんちゅう」、「風池ふうち

などがあります。

鍼灸治療法

僧帽筋のコリには、「肩井」が特効穴であります。肩をすくめるとあらわれる太い筋の上で、押さえると後ろ首に響きますので割合簡単に探せます。

肩甲挙筋のコリには、「曲垣」を使います。きちんと正座をして肩の後ろに触れ、肩先から背骨に向かって斜め下に走る肩甲棘という骨を探します。その内側の先から指1本上がったところで、上下にもむと軽く響く場所が「曲垣」です。

脊柱起立筋のコリには、「大椎」、「厥陰兪」、「膈兪」を使います。「大椎」は督脈という流れに属するツボで、体の背面の症状は督脈のツボでとることが原則で、特に「大椎」は背筋のこわばる症状には欠かせません。「厥陰兪」は全身の血行をよくし、こった筋肉をほぐす効果があります。

肩甲下筋のこりには、「膏肓」と「膈関」を使います。「膏肓」は肩から背中、ひじにかけての痛みがあるときには不可欠なツボです。「膈関」はちょうど胸と腹を隔てたところにある関所という意味でこの辺りのこりや、胸のつっかえる症状には効果があるツボです。

上記の筋肉のコリにそれぞれのツボに対して、強めのマッサージ、指圧、あるいは鍼灸治療を加えますと、筋肉がほぐれて肩の周囲が楽になります。

そのあと、「天柱」と「風池」を処置します。「天柱」と「風池」は、首のコリと頭痛には必須のツボであります。

神経質でいつも体がだるくなっている人には

天柱」、「大序」、「肩井」、「曲垣」に灸をします。米粒大のもぐさに1カ所3壮ずつすえると効果的です。

無力体質で胃腸が悪く、気分がすぐれない肩こりには

天柱」、「大序」、「肩井」、「曲垣」に合わせて、背中の「肝兪」、「脾兪」、「胃兪」、お腹の「中脘」、「天枢」を刺激します。お腹のツボには薄切りのショウガをのせて、1ヶ所3壮ずつ温灸をするのも効果的です。家庭では、乾布摩擦や冷水摩擦をするとさらにいいでしょう。

冷湿布による治療

頑固な肩こりには、血管の二次反応を逆手にとって、冷湿布を使うと予想を超える効果があることもあります。小さな氷の塊をポリ袋に入れて何かで包み、こりの最もひどいところに押しつけるように冷やします。この場合は肩全体ではなく、ポイントとして狙って冷やします。

2~3分冷やしてから氷をはずすと、いったんは強く収縮した血管が、その二次反応として拡張し始め血行がよくなり、肩こりが楽になります。

自宅でできる肩こり改善法

鍼灸治療の効果を持続させ、日頃から肩こりを予防するためには、自宅でのケアも重要です。

ストレッチとエクササイズ

  • 首のストレッチ
    首を前後左右にゆっくり倒したり、回したりするストレッチは、首の筋肉の緊張を和らげます。
  • 肩甲骨のストレッチ
    肩甲骨を意識的に動かすストレッチは、肩周りの筋肉の血行を促進し、肩こりを改善します。
  • 腕回し
    腕を大きく回すことで、肩の関節の動きをスムーズにし、肩こりを予防します。

姿勢改善のためのポイント

  • 正しい姿勢を意識する
    立っている時も座っている時も、背筋を伸ばし、正しい姿勢を保つように心がけましょう。
  • 長時間同じ姿勢を避ける
    デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続ける場合は、こまめに休憩を取り、ストレッチなどを行いましょう。
  • 作業環境を見直す
    デスクや椅子の高さ、パソコンの画面の位置などを調整し、体に負担のかからない作業環境を整えましょう。

肩こり改善に役立つ栄養

栄養バランスの偏りは、肩こりを悪化させる原因となることがあります。肩こり改善に役立つ栄養素を積極的に摂取しましょう。

肩こり解消に必要な栄養素とは?

  • ビタミンB群
    筋肉の疲労回復を助け、神経機能を正常に保つ効果があります。
  • ビタミンE
    血行を促進し、抗酸化作用によって筋肉の老化を防ぐ効果があります。
  • マグネシウム
    筋肉の収縮を調整し、緊張を和らげる効果があります。
  • カルシウム
    神経の興奮を抑制し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。

食事改善で得られる効果

バランスの取れた食事を摂ることで、肩こりの改善だけでなく、全身の健康状態も向上します。

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