歯槽膿漏

歯槽膿漏の原因と鍼灸治療の効果 ー 歯ぐきの健康を取り戻す

歯槽膿漏

「最近、口臭や口の中のねばつきが気になる…」
「歯ぐきが赤く腫れて、ブヨブヨしている…」
「歯磨きの時に出血することがある…」

それはもしかしたら、歯槽膿漏しそうのうろうの初期症状かもしれません。 歯槽膿漏は、虫歯のように急激な痛みを起こさないため、つい放置しがちですが、進行すると歯がグラグラになり、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともある、注意が必要な病気です。この記事では、歯槽膿漏の原因と症状、そして東洋医学に基づく鍼灸治療がどのように歯ぐきの健康をサポートできるのか、ご家庭でできる予防法と合わせて詳しく解説します。

【目次】

  1. 歯槽膿漏とは?~その原因と進行~
    • 歯槽膿漏の初期症状と進行後の状態
    • 歯槽膿漏になりやすい年代と性別
    • 歯槽膿漏を引き起こす主な原因
    • 【重要】 まずは歯科医院の受診を
  2. 歯槽膿漏に対する鍼灸治療
  3. ご家庭でできる!歯槽膿漏の予防とセルフケア

1.歯槽膿漏とは?~その原因と進行~

歯槽膿漏の初期症状と進行後の状態

歯槽膿漏の人

歯槽膿漏しそうのうろうは、歯を顎の骨に固定している歯周組織(歯ぐき、歯根膜、歯槽骨など)が、慢性的に進行していく疾患です。一般的には歯周病と呼ばれています。

  • 初期症状
    • 口臭が気になるようになる
    • 口の中がねばつく
    • 歯ぐきが赤みを帯びて、ブヨブヨと腫れぼったくなる
  • 進行後の状態
    • 歯磨きや硬いものを食べた時に歯ぐきから出血しやすくなる
    • 歯ぐきが下がり、歯の根元が見えてくる
    • 歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)が深くなり、膿が出ることもある
    • 歯がグラグラと動揺し始める
    • 最終的には、歯を支える骨が溶けてしまい、歯が自然に抜け落ちてしまう

虫歯のように激しい痛みを伴わないことが多いため、つい放置されがちですが、手遅れにならないうちに適切なケアを始めることが非常に重要です。

歯槽膿漏になりやすい年代と性別

歯槽膿漏は、小さなお子様にはあまり見られません。14~15歳の思春期あたりから見られることもありますが、年齢を重ねるにつれて罹患率は高くなります。 男女を比べると、若い世代では女性の方が多い傾向がありますが、中年以降になると大きな差はなくなります。

歯槽膿漏を引き起こす主な原因

歯槽膿漏の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に関与していると考えられています。

  1. 歯周組織自体の要因
    • 遺伝的に歯周病にかかりやすい体質を持っている場合。
  2. 外部からの影響(局所的要因)
    • 歯石や歯垢(プラーク)の付着
      最大の原因です。歯垢の中にいる細菌(歯周病菌)が毒素を出し、歯ぐきに炎症を引き起こします。
    • 食べ物のカス
      磨き残しが細菌の温床となります。
    • 不適切な歯科処置
      合っていない被せ物や詰め物。
    • 温度的刺激
      極端に熱いものや冷たいものによる刺激。
  3. 内部からの影響(全身的要因)
    • 生活習慣病
      糖尿病は歯周病を悪化させる大きな要因として知られています。
    • 内分泌異常
      甲状腺疾患や女性ホルモンの変動など。
    • 栄養不足
      特にビタミンCなどの欠乏。
    • 自律神経の乱れ
      ストレスや疲労による免疫力の低下。
    • アレルギー体質
    • 喫煙

ただし、これらの内部的な影響に関しては、まだ不明な点も多いのが現状です。

【重要】まずは歯科医院の受診を

歯槽膿漏は自覚症状が軽いために見過ごされがちですが、歯ぐきの腫れや出血など、気になるサインがあれば、まずは歯科医院を受診し、専門医による正確な診断と適切な治療(歯石除去、クリーニングなど)を受けることが最も重要です。

ひごころ治療院の鍼灸治療は、これらの歯科治療と並行して行うことで、より効果的な改善をサポートするものです。

2.歯槽膿漏に対する鍼灸治療

鍼灸治療の役割 症状の悪化を防ぎ、体質からケア

鍼灸治療は、歯槽膿漏そのものを直接治すわけではありませんが、特に初期の段階で、歯ぐきのブヨブヨとした腫れや炎症といった症状の悪化を抑え、体質を改善することを目的とします。 ただし、歯周組織の改善には時間がかかるため、かなり根気よく治療を続ける必要があります。

  • 血行促進と消炎効果
    歯ぐきや顔面部の血行を促進し、炎症を抑え、腫れを和らげます。
  • 免疫機能の調整
    身体が本来持つ自然治癒力を高め、歯周病菌に対する抵抗力をサポートします。
  • 内臓機能の調整
    東洋医学では、歯や歯ぐきの状態は「腎」や「胃」「大腸」といった内臓の機能と深く関連すると考えます。これらの働きを整えることで、根本的な体質改善を目指します。
  • 自律神経の調整
    ストレスや疲労による自律神経の乱れを整え、免疫機能を安定させます。

歯槽膿漏ケアに効果が期待できる主要なツボの例

歯槽膿漏の症状や体質に合わせて、以下のツボを中心に施術します。

顔面部 「迎香げいこう」、「禾髎かりょう」、「承漿しょうしょう
    「大迎だいげい」、「下関げかん
後頚部 「天柱てんちゅう
背部  「肝兪かんゆ」、「腎兪じんゆ
腹部  「中脘ちゅうかん」、「肓兪こうゆ
手部  「手三里てさんり」、「曲池きょくち

具体的な鍼灸治療法

  1. まず、顔面部にある「迎香」、「禾髎」、「承漿」、「巨髎こりょう」、「大迎」、「下関」といったツボを刺激し、口周りの気血の巡りを直接的に改善します。
  2. 次に、後頸部の「天柱」、腹部の「中脘」、「肓兪」、さらに「天枢てんすう」などを丁寧に刺激し、全身のバランスと消化器系の機能を整えます。
  3. 背中では、「肝兪」と「腎兪」を選択し、しっかりと刺激します。東洋医学で「肝腎要(かんじんかなめ)」と言われるこれらのツボは、身体の根本的なエネルギーを補い、歯ぐきの炎症を防ぎ、元気づける働きがあります。
  4. 腕にある「曲池」と「手三里」も重要なツボです。
    • 曲池」は、人体の中の邪気(病気の原因)が池のように溜まる場所とされ、ここを刺激して溜まったゴミを掃除することで、エネルギーの流れが改善し、歯周組織の疾患への抵抗力を高めます。
    • 手三里」は、身体にできる腫れ物を取り除くツボとして知られています。
  5. 痛みが強い場合
    歯槽膿漏によって歯の痛みも強い時には、手の「合谷ごうこく」に鍼を刺入し、痛みを取り除くアプローチも加えます。

歯槽膿漏は頑固な症状ですので、繰り返し、根気よく治療を行うことが改善への鍵となります。

3.ご家庭でできる!歯槽膿漏の予防とセルフケア

歯科医院での専門的なケアと、鍼灸院での体質改善に加え、ご家庭での日々のセルフケアを習慣づけることが、歯槽膿漏の予防と改善には不可欠です。

歯ぐきを健康に保つマッサージ法

毎朝、歯を磨く際に、以下のマッサージを習慣にすると歯槽膿漏の予防に繋がります。

  1. まず、頬、特に小鼻の両脇あたりを、右手、左手と交互に、人差し指・中指・薬指の3本の指の腹を使って、少し圧を加えながらよく揉みます。これは上歯を通る神経の機能を整えるのに役立ちます。
  2. 次に、耳の下から下あごのラインに沿って、下唇のあたりまでを優しくマッサージします。
  3. 口を軽く開け、耳のすぐ前方にできるくぼみ(下関や聴宮のあたり)に両手の人差し指をあて、左右同時に心地よい程度に指圧します。

すでに歯槽膿漏になっている方向けの追加ケア

  • 小鼻の外側から上唇の上あたりまでを、人差し指と中指で少し強めにマッサージします。
  • 続けて、下あごの張っている角(エラの部分)から、下の歯ぐきのあたりを、人差し指と中指でマッサージします。

これらのマッサージは、歯ぐきの血行を改善し、膿がある場合はその排出を促し、症状の緩和を助ける効果が期待できます。

炎症が非常に強い時や、痛みがひどい時は無理に行わず、歯科医師や鍼灸師にご相談ください。

歯槽膿漏を予防するための生活習慣

  • 丁寧な歯磨き
    歯垢(プラーク)をしっかりと除去することが最も重要です。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスも活用しましょう。
  • バランスの取れた食事
    歯や歯ぐきの健康を保つために、ビタミンC、ビタミンE、カルシウム、タンパク質などをバランス良く摂取しましょう。
  • 禁煙
    喫煙は歯周病の最大のリスク因子の一つです。
  • ストレス管理と十分な睡眠
    免疫力を高く保つために、心身の休息を心がけましょう。
  • 定期的な歯科検診
    症状がなくても、定期的に歯科医院で検診とクリーニングを受けることが、早期発見・早期治療に繋がります。

ひごころ治療院では、あなたのつらい症状に真摯に向き合い、鍼灸治療を通じて、歯ぐきの健康と健やかな毎日を取り戻すためのお手伝いをさせていただきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です