鼻血

鼻血の原因と鍼灸治療 ー 繰り返す鼻血への東洋医学的アプローチ

鼻血

「よく鼻血が出る…」
「一度鼻血が出ると、なかなか止まらない…」
「高血圧と診断されてから、鼻血が気になるようになった…」

鼻血鼻出血)は、多くの方が一度は経験する身近な症状ですが、頻繁に繰り返す場合や、背景に他の病気が隠れている可能性もあり、注意が必要です。 この記事では、鼻血が起こる様々な原因、ご家庭でできる正しい応急処置、そして東洋医学に基づく鍼灸治療による体質改善のアプローチについて詳しく解説します。

【目次】

  1. 鼻血の原因と症状~子どもと大人、それぞれの注意点~
    • 鼻血が起こる主な原因
    • 【重要】 専門医の受診が必要な危険な鼻血のサイン
    • 鍼灸治療が特に効果を発揮しやすいケース
  2. 鼻血に対する鍼灸治療
  3. ご家庭でできる鼻血予防とセルフケア
    • 日頃からできるツボ指圧
    • お灸や粒鍼によるケア
    • 日常生活での注意点

1.鼻血の原因と症状~子どもと大人、それぞれの注意点~

鼻血が起こる主な原因

鼻血が出ている女性

鼻血が出る原因、または誘因として最も多いのは、鼻そのものの病気というよりも、外部からの物理的な刺激によるものです。

  • 子どもに多い原因
    • 最も多いのは、指で鼻をほじって鼻の中の粘膜を傷つけてしまうことです。
    • 特に、お子様の鼻の入り口からすぐ近くの鼻中隔(左右の鼻を仕切る壁)の部分には、「キーゼルバッハ部位」と呼ばれる毛細血管が非常に多く集まっている場所があり、少しの刺激でも簡単に出血します。
    • このような場合は、慌てずに適切な止血処置をすれば、間もなく止まるのが普通です。
    • その他、鼻を強く打ったり、鼻の中に異物が入ったりして出血することもあります。
  • 大人に多い原因
    • 子どもの場合とは少し事情が異なり、全身的な疾患の一症状として鼻血が現れることがあるため、注意が必要です。
    • 高血圧症や動脈硬化など、循環器系の障害によって血管がもろくなり、出血しやすくなることがあります。
    • アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿症)などで鼻の粘膜が荒れている場合。
    • 肝臓疾患や血液疾患(血友病、血小板減少症など)が原因となることもあります。
    • 鼻の中にできた腫瘍が原因の場合もあります。
    • ストレスや過労、睡眠不足などによる自律神経の乱れから、鼻の粘膜の血管が拡張し、出血しやすくなる「突発性鼻出血」もあります。

【重要】専門医の受診が必要な危険な鼻血のサイン

一度や二度の軽い鼻血であれば心配ないことが多いですが、頻繁に出血を繰り返す場合や、以下のような症状が見られる場合は、必ず耳鼻咽喉科や内科などの専門医を受診してください。

  • なかなか血が止まらない(15~20分以上圧迫しても止まらない)
  • 出血量が多い
  • 頭を上げていても、鼻の前の方から血が流れ落ちてきたり、喉の方にも多量の血が回ったりする場合 (これは、血圧が高くて比較的太い血管が切れた場合や、血液疾患、腫瘍などが原因の可能性があります。)
  • 鼻血以外の症状(めまい、ふらつき、動悸、息切れ、顔面蒼白など)を伴う

大出血がある場合は、まず安静にし、血が喉に流れ込んで呼吸困難にならないよう注意しながら止血処置を行い、出血が落ち着いてから速やかに医療機関を受診しましょう。

鍼灸治療が特に効果を発揮しやすいケース

鍼灸治療は、特に以下のような鼻血に対して、体質改善や症状緩和のサポートとして効果を発揮しやすいと考えられます。

  • 原因がはっきりしない突発性鼻出血
  • ストレスや疲労、自律神経の乱れが関与している鼻血
  • アレルギー性鼻炎などに伴う、鼻の粘膜が弱くなっている状態
  • 高血圧に伴う鼻出血(医師の治療と並行して、血圧安定のサポートとして)

いずれの場合も、まず専門医による診断を受け、重篤な疾患がないことを確認した上で、鍼灸治療を検討することが大切です。

2.鼻血に対する鍼灸治療

鍼灸が鼻血の体質改善に役立つ理由

  • 自律神経の調整
    ストレスや疲労による自律神経の乱れを整え、血管の過度な拡張や収縮を正常化するのを助けます。
  • 血行促進と血管強化
    鼻周辺や関連するツボへの刺激により、局所の血行を改善し、粘膜を滋養し、血管を強くするサポートをします。
  • 「熱」を冷ます効果
    東洋医学では、鼻血は体内にこもった「熱」が原因で起こることがあると考えます。鍼灸治療は、この余分な熱を冷まし、身体のバランスを整える効果が期待できます。
  • 全身調整
    鼻だけの問題と捉えず、関連する内臓(特に「肺」「肝」「腎」など)の働きを整えることで、鼻血が出にくい体質へと導きます。

鼻血ケアに効果が期待できる主要なツボの例

鼻血の止血や、鼻血が出やすい体質の改善には、以下のツボがよく用いられます。

後頭部  「天柱てんちゅう」、「風池ふうち
前髪際  「上星じょうせい
鼻    「迎香げいこう
前腕   「温溜おんる」、「合谷ごうこく
背中   「大椎だいつい」、「身柱しんちゅう

具体的な鍼灸治療法と応急処置

応急処置としての正しい止血法

まず、鼻血が出たときは、原因が何であれ、慌てずに落ち着いて正しい止血処置を行うことが最も重要です。

  1. 座る
    椅子などに座り、顔を少し前に傾け(うつむき加減に)ます。
    • 【重要】仰向けに寝かせると、血液が喉に流れ込み、気分が悪くなったり、呼吸の妨げになったりする危険があるため、絶対にしないでください。
  2. 鼻をつまむ(圧迫止血)
    親指と人差し指で、小鼻(鼻のふくらんだ部分)をしっかりとつまみ、圧迫します。
  3. じっと待つ
    そのまま4~5分じっと動かずに圧迫を続けます。大抵の鼻血はこれで止まります。

鍼灸治療のアプローチ

上記の応急処置の後、鍼灸治療では以下のツボを中心にアプローチします。

  1. まず、後頭部の「天柱」、「風池」を刺激します。これらのツボは、頭部への血流を調整し、のぼせや興奮を鎮める効果があります。
  2. さらに、前髪の生え際にある「上星」を刺激すると、鼻血に対して一層効果的とされています。
  3. 次に、小鼻の横にある「迎香」を刺激し、鼻周辺の血行を整えます。
  4. 腕にある「温溜」(止血の要穴)、手の甲の「合谷」(顔面部の症状に効果的)、背中の「大椎」、「身柱」(身体の熱を冷ます、体質改善)などを、症状や体質に合わせて治療に加えます。

高血圧に伴う鼻出血へのアプローチ

血圧が高いと、鼻の血管がもろくなり出血しやすい傾向があります。この場合、鼻血の処置と同時に、血圧そのものと、それに伴う全身症状(頭痛、のぼせ、肩こりなど)を和らげることが大切です。

  • 用いる主なツボ
    • 頭頂部の「百会ひゃくえ
    • ぼんのくぼの「風府ふうふ」とその近くの「天柱」、「風池
    • 目窓もくそう
    • のど仏の近くにある「人迎じんげい」(血圧を下げる効果が期待できるツボ) などを刺激し、血圧の安定化をサポートします。

3.ご家庭でできる鼻血予防とセルフケア

日頃からできるツボ指圧

鼻血が出やすい体質の方は、日頃から以下のツボを指圧しておくと、体質の改善に繋がることがあります。

  • 対象のツボ
    天柱」、「風池」、「上星」、「迎香
  • 指圧の方法
    親指か人差し指の腹を使い、各ツボを心地よい程度の力(3kg程度の圧が目安)で5~6秒かけてゆっくりと押します。これを3回ほど繰り返します。

お灸や粒鍼によるケア

  • お灸(灸治療)
    鼻血が出やすい体質の方には、お灸も効果的です。手の「合谷」、足の「足三里あしさんり」などに、米粒の半分程度の大きさのもぐさを3~5壮、毎日すえるのがおすすめです。
  • 粒鍼法りゅうしんほう
    誰でもご家庭ででき、安全で効果が期待できる方法として、市販の粒鍼(円皮鍼や置き鍼)の活用があります。「天柱」、「風池」、「上星」、「合谷」といったツボに粒鍼を貼り、3~4日そのままにします。その後、同じ期間は貼らずに皮膚を休ませます。一度に全てのツボに貼らず、交代で場所を変えながら貼ると、継続的な効果が期待できます。

日常生活での注意点

  • 鼻をいじらない
    特に指で鼻の中を触る癖はやめましょう。
  • 鼻のかみ方
    片方ずつ、優しくかむようにしましょう。
  • 環境の湿度を保つ
    空気が乾燥すると鼻の粘膜も乾燥し、傷つきやすくなります。加湿器などで室内の湿度を適切に保ちましょう。
  • 食事
    刺激物(香辛料など)やアルコールの摂りすぎは、血管を拡張させ出血を誘発することがあります。控えめにしましょう。
  • 体調管理
    風邪をひかない、十分な睡眠をとる、ストレスを溜めないなど、日頃からの体調管理が大切です。

ひごころ治療院では、あなたの体質に合わせたセルフケアについても、丁寧にアドバイスさせていただきます。繰り返す鼻血でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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