高血圧のサイン と対策:皮膚の変化に気をつけよう
症状
血圧が高いと首の皮膚がざらつく
原因となる病気は何もないのに、中年にさしかかるところ徐々に血圧があがってくるものを本態性高血圧といいます。高血圧にはこのほかに、腎臓病や心臓病などが原因で起こる二次性高血圧もあります。
しかし、高血圧の8割以上は本態性高血圧であります。ふつう、本態性高血圧は老化によって動脈が硬化し、血管に弾力がなくなるために起こるといわれていますが、それだけではなく、精神的な面からの影響も少なくありません。仕事に焦りや不安を覚えたり、人間関係に気を使ってストレスがたまったりすると、交感神経が反応して心臓の拍動が速くなり、全身に血管が緊張・収縮して血管の内腔が狭くなり、血圧が上がります。
ところで、人体は血圧計がなければ血圧が高いのを知ることができないのかというとそうではなく、首の皮膚の状態から、血圧上昇を発見することができます。人体は不思議なもので、内臓やそのほかの器官に異常があると、体表反射といって、皮膚の表面に何らかの反応があらわれます。本来、皮膚の持つ生き生きとした艶や、しっとりとした感触がなくなり、しこりやしみができ、周囲の筋肉がコってきます。同じような状態が、高血圧症の場合は、首の両側の皮膚に表れます。
顔を横に回すと、耳の下に太い筋肉が鎖骨にかけて走っているのが分かります。これを胸鎖乳突筋といいますが、この筋肉の奥に総頚動脈と総頚静脈が通っています。2本の血管は、脳をめぐる血液の通路になるばかりではなく、脳とそれ以外の体の血液循環をコントロールする大切な役割を担っています。
血圧が上昇すると、胸鎖乳突筋に沿った皮膚の表面に、ざらつきが生じます。ざらつき具合は、日頃から患者の肌の状態を熟知しているとすぐに分かりますが、分かりにくい場合は、体中で最もすべすべしている両脇腹の皮膚とと比較するといいでしょう。
血圧を下げる治療も、この胸鎖乳突筋に沿って行います。
高血圧では、後頭部のむくみや首の凝り、足の冷えも目安になります。親指を耳の後ろに当てて、残りの4本の指で後頭部の隆起を包むようにして、指先で強めに押して、頭蓋骨の硬さが直に感じられれば健康、ブヨブヨしていれば高血圧の注意信号であります。第二は、首の凝りで、頭のブヨブヨと同時に首に凝りが出ているときは要注意です。第三は、手先、足先の冷えであります。
これら三つのサインのどれか一つでも出ているときは、血圧が上がっている証拠なので、ツボ刺激のよって血圧をコントロールしておけば安心であります。
ただし、めまい、手足のしびれ、激しい頭痛、吐き気、胸の痛み、眼底出血などの症状があらわれている場合は、必ず専門医の診断を受けてください。
鍼灸治療
主要なツボ
症状によってツボは使い分ける必要がありますが、代表的なものは、
頭部 「百会」
首部 「天柱」
背部 「肩井」、「厥陰兪」、「肝兪」、「腎兪」
喉部 「人迎」
胸部 「膻中」
腹部 「中脘」、「大巨」
手部 「内関」
足部 「足三里」、「三陰交」、「湧泉」
などであります。
治療法
首周囲のしこりをほぐすことが先決
まず、胸鎖乳突筋をほぐす目的で、選穴し刺激することで、脳へ行き帰りする血のめぐりを改善します。特に、胸鎖乳突筋の真ん中にある「天鼎」とその周囲の筋肉は凝りやすいです。「天鼎」のすぐそばの「人迎」は、降圧の特効穴です。頭重があるようなら「百会」も刺激します。
また、頚椎の両側には、首から後頭部をめぐる動脈が通っているいるので、後ろ首のツボを選び、血流を改善します。
肩は「肩井」、肩甲骨の内側は「厥陰兪」、「心兪」、「膈兪」などを刺激します。中高年になりますと、脊椎全体でバランスをとりながら、これをしっかりと支えている脊柱起立筋が衰えて、背骨の両側が凝って、血液のめぐりが悪くなります。心臓や血管系を支配している交感神経は、この筋肉群の過緊張に影響され、その圧迫によって機能の異常が起こり、血圧が上がります。したがって、背中の筋肉を仙骨付近までのツボを選んでほぐすします。
胸部、腹部の緊張も上記のツボを刺激します。高血圧の人にはイライラは禁物なので、イライラを鎮める「中脘」を刺激します。
足の裏の「内湧泉」は血圧を確実に下げる
手では「曲池」、「手三里」、「合谷」を刺激して、高血圧によるだるさ、無気力を除きます。「内関」は動悸をおさめる特効穴として知られています。
足では「足三里」、「三陰交」、「太渓」などを刺激します。足裏の「湧泉」は血圧を確実に下げるツボとして知られています。一般に「湧泉」といった場合、足の裏の指の付け根にある二つの大きなふくらみの間にあるツボを指すのが普通であります。しかし、古来から伝えられている位置よりもやや親指寄り、親指の付け根のふくらみのかかと側にあるツボ「内湧泉」の方が血圧を下げるのに効果があります。ここは、こぶしで左右交互に軽く100回ずつ叩きますと、確実に血圧が下がります。
鍼灸治療は、血圧を正常にするのに効果があります。灸の場合は、上記のツボから症状に合わせて、米粒大のもぐさで1カ所3~5壮すえます。
メモ
東洋医学は、血圧というものが全く知られていない昔に、すでに完成の域に達していました。したがって、鍼灸治療するという場合にも、血圧を下げることよりも高血圧に随伴する症状を取り除き、また体調を整えて高血圧が起こりやすい心身の状態を改善するということに目標を置き、その結果として血圧が自然に下がってくるという考え方で治療します。
また、血圧を正常に保つためには次の生活を守ることも大切であります。
- 朝、昼、晩、3食きちんととること
- 日本の伝統食を重んじること
- ゆったりとした気持ちで適度な運動を行うこと。
自宅でできる高血圧治療
イライラを解消するみぞおち指圧
高血圧気味の人は、イライラが禁物です。そんな場合は、背もたれのある椅子にゆったりと腰かけて、目を閉じます。そして、息を大きく吐きながら、親指以外の四指でみぞおちをゆっくりと一押し5~8秒押します。
さらに、わき腹のあばら骨に沿って、指が骨の内側に入るように押します。これを3~5回繰り返して、最後にみぞおちとへその真ん中あたりをグッと押します。
しばらくしますとイライラした気持ちが落ち着きます。
手の指1本1本を10秒ずつもむ
高血圧で問題になるのは大きな動脈ではなく、抹消の細小動脈です。この細い動脈が収縮して血液が通りにくくなるため、血圧を高くする原因になります。したがって、血圧が高い人には、背先や足先のような末端に血行不良がみられて、手足が冷えていることが多いです。
そのため、末端の血行不良を手っ取り早く解消する方法として、自分の手指を1本ずつ丹念にもんでいくといいでしょう。もむ場合は、指の側面をもう一方の手の親指と人差し指ではさんでグリグリともみます。1本10秒ずつ行えば十分です。足の指も同様にもんでください。
血圧を下げる導引体操
東洋医学では自然界の天の気を十分に体内に取り入れる操身術として、「導引の法」というものがあります。これは五禽(ごきん)の術といって、動物が飛んだり走ったりするさまを運動法として取り入れた、古くからある中国の操身法です。
この東洋方式の導引体操はテンポがゆっくりで、動作がゆるやかで大きいことが特色であります。呼吸に合わせて、のびのびとリズムにのって、腕、体、足を伸ばし、開き、ひねりと、自由に体を動かします。この点は筋肉の鍛錬を目的とした西洋方式の体操法と異なります。自然の中でのびのびと呼吸を整えることもねらいであります。
そのため、血圧が高い人にも無理なく行えるメリットがあります。思い出したようにときどき行うのではなく、毎日行えば体がすっきりして、血圧は自然に下がります。
体操の一例
腰幅に立って、全身の力をできるだけ抜いて力を抜いて、体操を始める前に深呼吸をします。(椅子に座りながらもできます)
- ひじをまげのばしする
- 手足をの先をブラブラします
- 両手の甲や手のひらをもみ合わせます
- 上体を前後にそったり、曲げたり、左右にひねります
- 膝の屈伸を10回行います
- 床に座って、足を開脚、できるだけ真横に開き、開いたら足首を動かします
- 床に座って、足の裏をもみます
注意点
- 無理はしない
- ゆっくりと行います
- 呼吸は止めない、浅くならない
- ルールはないので、のびのびと行いましょう
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