むち打ち症(頚椎捻挫)

むち打ち症(頚椎捻挫)の原因 ーその症状と鍼灸治療によるアプローチ

むち打ち症(頚椎捻挫)

「交通事故の後から、首の痛みや頭痛、手のしびれが取れない…」
「スポーツで首を痛めて以来、調子が悪い…」
「むち打ち症と診断されたけれど、なかなかスッキリしない…」

むち打ち症頚椎捻挫)は、交通事故(特に追突事故)やコンタクト系のスポーツなどで首に強い衝撃が加わることで発症します。その影響は首の痛みだけでなく、頭痛、めまい、吐き気、手のしびれなど、様々なつらい症状を引き起こすことがあります。

この記事では、むち打ち症がなぜ起こるのか、その原因と症状、そして東洋医学に基づく鍼灸治療がどのように回復をサポートできるのかを詳しく解説します。

【目次】

  1. むち打ち症(頚椎捻挫)とは?~その原因と様々な症状~
    • むち打ち症が起こるメカニズム
    • むち打ち症に伴う主な症状
    • 心理的な影響と後遺症について
    • 【重要】 まずは専門医による正確な診断を
  2. むち打ち症に対する鍼灸治療
  3. 【関連情報】変形性頚椎症について

1.むち打ち症(頚椎捻挫)とは?~その原因と様々な症状~

むち打ち症が起こるメカニズム

むち打ち症の女性

むち打ち症は、その名の通り、交通事故などで追突された際に、身体は固定されたまま首が後ろに強く反り返り、その反動で今度は前に大きく曲がるという、首が「むち」のようにしなることで発症します。正式には「頚椎捻挫けいついねんざ」や「外傷性頸部症候群」などと称されます。

捻挫とは、関節が一時的に生理的な可動域を超えて強く動かされ、元に戻った状態を指します。むち打ち症は、7つある首の骨(頚椎)の関節が瞬間的に激しく動揺させられ、その衝撃で骨と骨を繋いでいる靭帯や、その周りの細かく小さい筋肉が一時的に過剰に引き伸ばされたり、微細な損傷を受けたりした状態です。 靭帯や筋肉が正常な状態に戻る過程で、熱感、腫れ、小さな内出血、むくみといった炎症反応が起こります。同時に、腕や頭へ向かう神経の通り道も影響を受けるため、様々な症状を伴うのです。

むち打ち症に伴う主な症状

  • 首の痛み、首が回らない、首や肩のこり
  • 頭痛、頭重感
  • めまい、ふらつき
  • 吐き気、食欲不振
  • 耳鳴り
  • 腕や手の痛み、しびれ、だるさ
  • 集中力の低下、記憶障害
  • 全身の倦怠感、疲労感
  • 不眠、不安感、抑うつ気分

心理的な影響と後遺症について

事故の後、いつまでも首が重たかったり、集中力に欠けたり、頭や目が痛むといった症状が続く場合、それは単なる身体的な損傷だけでなく、事故のショックや将来への不安といった心理的な要因からくる自律神経の失調心因性の痛みを起こしている可能性も少なくありません。 このような場合は、身体の治療と合わせて、心身のしこりをほぐすようなアプローチも大切になります。

【重要】まずは専門医による正確な診断を

交通事故やスポーツ外傷などで首に強い衝撃を受けた場合は、症状の有無にかかわらず、まずは速やかに整形外科などの専門医を受診し、レントゲンやMRIなどの検査を受けてください。 どこにどのような損傷を受けているのか、骨折や重篤な神経損傷がないかなどを正確に診断してもらい、今後の治療方針や回復期間の見通しを示してもらうことが非常に重要です。

その上で、鍼灸治療を併用することで、より効果的な回復を目指します。

2.むち打ち症に対する鍼灸治療

鍼灸がむち打ち症に効果的な理由

鍼灸治療は、むち打ち症によって引き起こされる様々な症状に対して、以下のような多角的なアプローチで効果を発揮します。

  • 痛みの緩和(鎮痛)
    鍼刺激により、痛みの伝達を抑制したり、脳内で痛みを和らげる物質の分泌を促したりします。
  • 筋緊張の緩和
    事故の衝撃で過剰に緊張し、硬直した首や肩、背中の筋肉を、鍼で深部から直接緩めます。
  • 血行促進と消炎
    患部や関連するツボの血流を改善し、炎症物質や発痛物質の排出を促し、損傷した組織の修復を助けます。
  • 自律神経の調整
    事故のショックや痛みによるストレスで乱れた自律神経のバランスを整え、めまい、吐き気、不眠といった不定愁訴を和らげます。
  • 後遺症の予防・軽減
    早期から適切な治療を行うことで、慢性的な痛みやこり、しびれといった後遺症のリスクを軽減することを目指します。

むち打ち症ケアに効果が期待できる主要なツボの例

むち打ち症の症状や状態に合わせて、以下のツボを中心に施術します。

後ろ首 「天柱てんちゅう」、「風池ふうち」、「完骨かんこつ
肩   「肩井けんせい」、「肩髃けんぐう
背中  「大椎だいつい
手   「曲池きょくち」、「尺沢しゃくたく」、「少海しょうかい
    「内関ないかん」、「神門しんもん」、「合谷ごうこく

具体的な鍼灸治療法

  1. まず、頭痛、首が回らない、肩がこる・痛い、などといった軟部組織(筋肉、靭帯など)の障害に対しては、蒸しタオルなどで首周りをよく温め、筋肉や靭帯を和らげてから施術に入ります。
  2. 頚椎の両側にある反応点(押して痛みを感じる場所など)や、「大椎」、「肩井」、「肩髃」といった背中や肩の主要なツボを刺激し、全体の緊張を緩めます。このアプローチは効果を倍増させることが期待できます。
  3. その後、首の前側にある胸鎖乳突筋がほぐれるようなツボを選んで刺激します。
  4. 症状が慢性化している場合には、お灸灸治療)が大変効果的です。
    • 特に、頑固な肩こりには「肩井」や「「曲垣きょくえん」に1カ所5壮ずつ、頭痛が続くときには「天柱」か「風池」に3壮ずつすえます。これらのツボは髪の生え際にあるため、髪の毛を丁寧によけて施術します。
  5. 手のしびれが頑固に続くようなら、腕から手にかけてのツボである「曲池」、「尺沢」、「少海」または、「内関」、「神門」、「合谷」などを組み合わせて用います。

治療を受ける上での注意点

  • 電気鍼(パルス療法)の併用
    頚椎の傍らの圧痛点と、痛む手指などに刺した鍼を電極として、微弱な電気を流す電気鍼パルス療法)も、筋肉の弛緩や鎮痛効果を高める上で有効な場合があります。
  • 継続的な治療
    むち打ち症の症状は、事故直後よりも数日経ってから強く現れることも多く、回復には時間がかかる場合があります。焦らず、専門家の指示に従い、継続的に治療を受けることが大切です。

3.【関連情報】変形性頚椎症について

むち打ち症とは異なりますが、首や肩、腕の痛みの原因として、加齢に伴う変形性頚椎症へんけいせいけいついしょうも挙げられます。

  • 原因と症状
    加齢現象によって頚椎(首の骨)や椎間板(骨と骨の間のクッション)が変化し、変形してしまう症状です。運動が激しい頚椎は、どうしても椎間板に負担がかかりやすく、老化とともに椎間板がクッションの役目を果たせなくなります。これにより、肩や腕へ向かう神経が圧迫されるため、肩のこりや痛み、さらに腕から手、指先にかけての痛みやしびれなどが現れます。
  • 鍼灸治療のアプローチ
    この症状に対して、鍼灸治療は最も適応する療法の一つです。治療の対象となる主なツボは、「百会ひゃくえ」、「風池」、「天柱」、「肩井」などを使います。指圧やマッサージでも効果が期待できる場合がありますが、鍼灸はより深部の原因にアプローチできます。
  • けん引療法との組み合わせ
    鍼灸治療と合わせて、専門家によるけん引も効果的な場合があります。例えば、患者様に仰向けになっていただき、施術者が顎と後頭部を支えながら、ゆっくりと頭を前方に引き上げ、数秒保持してゆっくり戻す、といった手技を繰り返します。これは必ず、事前に首周りを温湿布などで温めてから、安全に配慮して行います。

ひごころ治療院では、あなたのつらい症状の原因を丁寧に見極め、最適な治療法をご提案します。交通事故後のむち打ち症でお悩みの方も、長引く首の不調でお困りの方も、ぜひ一度ご相談ください。

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