東洋医学講座 422

「水気」が繋ぐ腎と心 – 寒さが生命力を育てる理由

「水気」が繋ぐ腎と心
寒さが生命力を育てる理由

なぜ寒いと身が縮こまるのか」「なぜ腎が弱ると恐れやすくなるのか」。一見関係なさそうなこれらの現象は、東洋医学ではすべて「水気すいき」という一つのことわりで繋がっています。本稿では、天の寒さ、地の水、人の腎を貫く法則と、生命力を内側に蓄える「陰遁いんとん」という守りのメカニズムについて、深く解説します。

この記事を読めば、東洋医学について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!

今回の講義の概要

  • 水気は万物を繋ぐ
    天の「寒」、地の「水」、人の「腎」、音の「羽」、感情の「恐れ」。これらはバラバラなものではなく、「水気」という一つの働きが形を変えて現れたものです。
  • 水と冷えの真実
    水は本質的に「冷気」を持ち、外部から冷えを引き寄せる性質があります。たとえ温かいお茶でも、過剰摂取は身体を冷やし、腎の負担となる可能性があります。
  • 寒さが腎を育てる「陰遁」
    寒さに対して身を引き締め、エネルギーを中心(腎)に集めて守る働きを「陰遁」と言います。この収縮と休息があるからこそ、生命の源である腎は養われます。

水気の生成

水気の成り立ちと働き

水気の働き

まず、宇宙の真理である「一理」の働きとして、「水気すいき」は、天においては「かん」として働き、地においては「」として働いています。

人体における水性の働きを見ると、組織では「」、臓器では「」、体色は「」に現れます。音は「」、声は「しん」(うなるような低音)です。そして「きょう」(体表の穴)においては、腎と関連するのは「」となります。

自然界の五季が生み出す食物の中で、水気の働きを中心として作られている味は「塩味鹹味)」です。塩気のあるものは腎と深い関連を持っています。適量であれば腎臓を養い(栄養し)、過剰であれば腎を傷つけます。腎臓病の際に塩分制限が行われるのはこのためですが、生命維持には微量の塩分は不可欠です。このことは臨床の現場からもすぐに理解できる事実です。

「志」としての恐れと収縮

次に五志(感情)の「」ですが、ここでは「きょう」、つまり心の状態を指します。「恐れる」や「恐縮する」という言葉があるように、恐れは身を引き締める作用があります。震えも同様です。

腎機能が100の状態から80、60、50と低下していくと、恐れの感情が激しくなります。心身の緊張が強まり、些細なことでもビクビクするようになります。これは要するに、自分の身を守る力(腎気)が低下したため、守るべき陣地をどんどん縮小せざるを得ない状態なのです。防衛範囲が狭まる不安から、恐怖心が高まるわけです。

北方と寒・水の関係

五行説では「北方はかんを生ず」とされます。北方の自然の働きは寒冷であるため、「」を生じます。そして「寒は水を生じ」、水はまた寒さと呼応します。

水という物質は、本質的に冷気を伴います。水の生命は冷気であり、水そのものが冷えを持っているだけでなく、周囲の冷えを自分の方へ引き寄せる(求引する)性質があります。

したがって、たとえ温かいお茶であっても、水分を過剰に摂取して適量を超えると、一時的には体温(36.5度)になじんだとしても、やがて「冷え」の要因へと転じます。例えば、60度のお茶を飲んだとして、胃の中で体温と同じになりますが、身体が必要とする量が100のところを200飲んでしまえば、余分な100の水はマイナスに働き、外部から冷気を引き込む結果となります。

発散の時期である「陽遁ようとん」期(春夏)であれば多少の過剰水分も発散されますが、収斂の時期である「陰遁いんとん」期(秋冬)に過剰摂取すると、冷えとして体に残るため良くありません。水は冷えを生じ、寒さを招く性質があることを知っておく必要があります。

寒さと腎の「陰遁」作用

寒は腎を生ず」と言われますが、これは寒さが「身を引き締めて守備態勢を整える」働きを促すからです。寒さに対して身を縮め、引き締めることは、自分の力で守りきれる陣地を確保し、余力を持って外敵に備える態勢を作ることです。

この「引き締めて守る」働きこそが「陰遁」であり、「求心性」の作用です

草木の場合、冬の寒さに耐えるために生気を根の方へ内蔵します(陰遁)。そして春夏の陽遁期になると、外に向かって発散・成長します。陰遁は反対に、外から内へと帰る働きです。これは外の寒さから身を守ると同時に、寒さが身体を収縮させ、生命力を内側に固めてくれる働きでもあります。

地球上の温度には限界があり、上がれば必ず下がるようにできています。この「寒さ」があるからこそ、生命の源である腎が養われ、力が蓄えられるのです。だからこそ「寒さが腎を生じる」のです。

陰陽の繰り返しと五臓の生成

人間の働きも同様です。働きっぱなしでは疲弊して倒れてしまいます。「休む(陰)」からこそ、また「働く(陽)」ことができます。私たちの身体も、森羅万象すべてがこの陰と陽の繰り返しで成り立っています。

生成の順序としては、寒さが腎(水)をつくり、腎は骨髄をつくります。腎は身体の中心的な源であるため「髄」を生じます。そして「髄は肝を生ず」と続きます。

これは少し専門的ですが、髄は神経分布に関わり、神経が筋肉を支配しています。筋肉は「肝」に関連する組織です。五行の「水生木(水は木を生む)」の理により、「腎(水)は肝(木)を生む」という関係になっています。

これらは五臓すべての関係性を学べば全体像が見えてきますが、理路整然と言葉だけで説明しきれない奥深い問題も多くあります。まずは「腎は耳を司り、液(唾液を含む全液)を司る」「腎気は黒色を生じる」「冬に旺盛になり、脈は沈となる」といった基本を押さえておきましょう。経絡については、また改めて解説します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です