東洋医学講座 397

東洋医学講座 397 腎と塩

腎と塩 ー 薬にも毒にもなる「適塩」の知恵

減塩が健康の常識とされる現代ですが、東洋医学では塩は生命活動の根源である「腎」を養う不可欠な要素と考えます。しかし、それは同時に「過ぎれば毒」となる諸刃の剣でもあります。本稿では、身体を引き締め、生命の原動力となる塩の働きと、私たちの健康を左右する「適塩」の重要性について探っていきます。


この記事を読めば、東洋医学について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!

今回の講義の概要

  • 塩は腎の原動力
    東洋医学では、塩味は身体を引き締める「凝集作用」を持ち、生命力を司る「腎」の働きを養う重要な動力源とされています。
  • 不足と過剰のリスク
    塩分が不足すると無気力や身体の緩みを招き、逆に過剰摂取は腎を傷つけ、筋肉のこわばりや高血圧などの原因となります。
  • 体質に合わせた「適塩」が鍵
    必要な塩分の量は、その人の体質(特に腎や心の強弱)によって異なります。自分の身体の状態を知り、適量を見極めることが健康維持に不可欠です。

腎と塩

東洋医学において、塩味えんみの体内作用は、細胞や組織を凝集させ、全身を引き締める働きがあるとされています。もし体内の塩分が不足すると、身体は締まりを失い、むくんだように緩んでしまいます。逆に塩分が過剰になると、身体は必要以上に固く引き締まってしまいます。

漬物を見ても分かる通り、塩分が強いほど野菜は堅く引き締まり、塩分が弱ければその堅さも和らぎます。これは塩味に凝集作用があるためで、表面は固くても中が柔らかい酢漬けなどとは、その作用が多少異なります。

人体には適度な引き締まり(凝結性)が必要であり、この身体の硬さ・柔らかさの主なコントロールを担っているのが塩味です。特に、体内の水分を適切に保持する凝集作用が重要となります。東洋医学では「腎は水を司る」とされ、腎と水は一体と考えますが、この「腎水(じんすい)」を働かせる動力源こそが塩味なのです。

この働きについて、古人は「塩味は腎を養い、心を鼓舞し、肝の働きを助け、血を生成し、血液循環を盛んにする。さらには体温を保ち、生命活動に必要な物質(ホルモンなど)の分泌を促し、生命の原動力となる」と述べています。

そのため、適度な塩分は不可欠ですが、不足すると無気力になり、心身の機能が全般的に減退します。

一方で、塩分の過剰摂取は腎を傷つけます。その結果、筋肉は硬くこわばり、関節は痛み、皮膚は乾燥して引きつり、毛穴が目立つ肌荒れなどを引き起こします。また、血管を収縮させ、心の働きを抑制することで、血圧が高くなる要因ともなります。

特に、もともと腎が弱い方が塩分を摂り過ぎると、全身の凝集作用が過剰となり、正常な生理機能を妨げます。また、心の働きが弱い方が塩分を摂り過ぎると、血圧の変動が大きくなり、循環器系に悪影響を与えやすくなります。

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