東洋医学講座 425

腎のSOSは全身に現れる – 「実」と「虚」で見分ける病理と症状

腎のSOSは全身に現れる
「実」と「虚」で見分ける病理と症状

「腰が痛い」「耳鳴りがする」「なぜか不安で仕方がない」…。一見バラバラに見えるこれらの不調、実はすべて「腎」からのSOSかもしれません。東洋医学では、腎の不調をエネルギーが過剰な「じつ」と不足している「きょ」に分けて考えます。本稿では、全身に現れる多彩な腎の病理サインと、それぞれの治療原則について詳しく解説します。

この記事を読めば、東洋医学について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!

今回の講義の概要

  • 「実」と「虚」で見分ける
    腎気が過剰な「実」では腹張や喘咳、不足する「虚」では腰痛や耳鳴り、恐怖感などが現れます。
  • 腎は「命の源」
    腎は生命力を司るため、基本的には補う治療(補法)が優先されます。みだりに瀉す(取り除く)ことは慎重であるべきとされています。
  • 症状は全身に及ぶ
    腎の不調は、排泄機能だけでなく、精神(不安・驚き)、感覚器(目・耳)、髪、呼吸器など、全身の多岐にわたる症状として現れます。

腎系統の病理

腎のSOSは全身に現れる

東洋医学における腎の病理は、腎の気が過剰に滞る「じつ」の状態と、不足して衰える「きょ」の状態、そして病邪が深く侵入した状態に分けられます。

腎気がじつなるときの症状

腎の気が盛んになりすぎている、あるいは邪気が充満している状態です。

  • 精神
    志(意志)があり余り、強気になる。
  • 腹部
    腹が張る。
  • 排泄
    下痢をする。小便が黄色くなる。
  • 呼吸・全身
    体がむくみ、喘咳ぜんがい(ゼイゼイして咳が出る)する。
  • 皮膚・体温
    発汗しやすく、寒気がして少しの隙間風も敏感に感じる。顔色が黒ずむ。

治療の原則

これらは腎の「実邪じつじゃ」による症状であり、基本的には余分な邪気を取り除く「しゃ」治療が良いとされます。ただし、少しでも「(不足)」の兆候がある場合は、補う治療(補法)を優先すべきです。腎は生命力の源(命源)であるため、みだりに瀉すべきではありません。

腎気がきょなるときの症状

腎の気が不足し、機能が低下している状態です。

  • 痛み・冷え
    腰や背中に冷えを感じ、疼くような痛み(疼痛)がある。足が火照って痛む。
  • 感覚器
    耳鳴りがして聴力が低下する。
  • 胸部
    胸の中に痛みを感じる。
  • その他
    歯茎が浮いて出血しやすくなる。
  • 精神
    理由のない恐怖心がつのる。

治療の原則

これらは腎が虚した症状であり、気を補い温める「補法ほほう」を加えることが原則です。

腎臓そのものに病が入った症状

実邪や虚邪の症状がさらに進行・悪化し、臓器としての腎に影響が出ている状態です。

  • 腹部が膨れる。
  • 体にむくみ(浮腫)が生じる。
  • ゼイゼイと咳が出る。
  • 発汗して寒気を起こしやすく、隙間風を極端に嫌がる。
  • 胸の中に痛みを発する。

腎系統(経絡や関連機能)に病邪が入った症状

腎は全身の多くの機能と関わっているため、病邪が侵入すると以下のような多岐にわたる症状が現れます。

精神・神経系

  • 根気の減退、些細なことが気にかかる。
  • 物に驚きやすい、胸騒ぎがする。
  • 寝苦しい、安眠できない。
  • めまい、のぼせ(上実下虚:頭に血が上り足元が冷える)。

【頭部・顔面・感覚器】


  • 耳鳴り、耳が暗くくすんだ色(暗蒙色)になる。

  • 瞳に濁り(汚点)がある、凝視力がなくなる(テレビなどですぐ疲れる)、目の前がちらつく、瞳孔が開く(散大)。
  • 口・喉
    のどや唇が乾いて水を欲しがる、声がかすれる、咽に痰がからむ、舌が赤く滑らかで乾く。
  • 顔色
    顔色が黒く艶がなくなる、あるいは両頬が赤く火照って酒に酔ったようになる(虚熱)。

  • 抜け毛が増える。

  • 鼻血が出る。

四肢・身体

  • 手足が冷たいのに火照る(冷えのぼせ)。
  • 四肢がだるく痛みがある、冷えやすい。
  • 指先がしびれる。
  • 首や肩背部に寒気を感じる、または強く痛む。
  • 腰に力が入らない。

腹部・消化器

  • 腹鳴がする。
  • 下腹に力がなくダブついている、または硬く引きつって痛む。
  • 脇腹(胸肋)が虚してむくむ。
  • 水が胃に溜まって吸収されにくい(胃内停水)、しゃっくりが出る。
  • 飲食の味がしない、食べてもすぐ飽きるが時間が経つとすぐ欲しくなる。

泌尿生殖器・その他

  • 陰部が寒い。
  • 小便が頻繁で出にくい、色が清白(薄い)または赤く濁る。
  • 夢精、性欲はあるが精力がない。
  • 夕方から夜にかけて寒気と熱っぽさが交互に来る(往来寒熱)。
  • 自汗じかん(じっとしていても汗が出る)、盗汗とうかん(寝汗)。
  • 起立していると疲れやすく、すぐに寝たがる(横になりたがる)。
  • 息切れしやすい(速く歩くとすぐ切れる)。

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