腎と膀胱の「兄妹」関係 ー 水液代謝と全身の活力を生む連携
東洋医学では、腎と膀胱は単なる泌尿器系の臓器というだけでなく、体内の水液代謝を司る上で緊密な連携を持つ「兄妹」のような関係にあると考えられています。本稿では、この二つの臓腑がどのように協調し、また拮抗しながら、私たちの健康を支えているのか、その奥深い関係性と働きについて解説していきます。
この記事を読めば、東洋医学について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!
今回の講義の概要
・腎と膀胱の連携と五行思想
・膀胱の機能と熱源としての腸の重要性
・気の生成と全身への影響、心臓との関係
腎と膀胱の関係の働き
腎と膀胱の拮抗
東洋医学において、腎と膀胱は兄妹拮抗とも形容される密接な関係にあり、連携して体内の水液代謝を調整します。五行思想では、これらは共に「水」に属し、陰陽の水の性質、すなわち陽水である壬と陰水である癸の働きに対応します。このように、腎と膀胱は互いに協調しながら、尿の生成と排泄をコントロールすると捉えられています。
腎の働きは、一日の中で特定の時間帯、例えば夕方の申の刻(午後3時~5時頃)から活発になり始め、夜にかけてその活動が盛んになると考えられています。一方、膀胱の活動はこれとは異なる時間帯に見られ、心臓などの他の臓腑の活動リズムとも関連しながら機能します。
膀胱は、体内の不要な水分が集まる場所です。腎の陽気による温める力(気化作用)を受け、また、腸における水分の吸収・分離のプロセスとも関連しながら、尿として貯蔵し、体外へ排泄するという重要な役割を担っています。
膀胱の付近には腸があり、その蠕動運動は非常に活発で、発熱作用があります。つまり腸は熱源です。したがって、腸の働きが弱い人は冷え症になりやすいのは、この熱源としての力が低いからです。腸は、副心臓ともいわれるように、心臓と兄妹関係にあると考えられます。
腎と膀胱の関係性と同様に、心臓にも特徴的な働きがあります。心臓は自ら発熱し、その熱をエネルギーとして全身に送り出す力を持っています。そして、小腸もまた活発な活動によって熱を生み出すため、いわば発熱源として、心臓が持つ熱を生み出す働きの一部を担っていると言えるでしょう。小腸における熱産生は、他の臓器と比べても活発であると考えられています。
この小腸の近くにある膀胱は、小腸から伝わる熱の影響を受けて、内部の液体に対して気化作用が促されます。この気化作用によって生じた気は全身を巡り、身体を温める助けとなります。
したがって、冷え性の人の場合、この気化作用が十分でない傾向があります。すると、体を温める気が不足する一方で、気化されずに残る水分の量が多くなります。これが、冷え性の人に小便が近くなる現象が見られる理由の一つとして考えられます。このように、日常の身体の生理現象を注意深く観察してみると、理解できることが多いと言えるでしょう。
そして、その気は、下焦における活力を生み出す源となります。ここでいう三焦とは、東洋医学において身体の部位と機能を区分する考え方で、一般に横隔膜より上を上焦、臍を中心とした腹部を中焦、そして臍から下の部分を下焦と呼びます。
つまり、この下焦に生じた活力は、全身の活動を支える基盤となり、体表を保護し温める衛気や、脈管中を流れ栄養を運ぶ栄気といった営衛の気の巡りを促進する力となるのです。
このように気は全身に活気を与えて心臓の循環を助ける働きをしているわけであり、これが膀胱と心臓は夫婦協力(または夫婦拮抗)の関係にあるといわれる所以です。活気がなくなると、体は収縮するように活動が鈍り、体も気も沈んでしまいます。だからこそ心臓の気は、発熱の気と動こうとする気によって、心臓や血管が動きやすいように活気を与え、循環を支えているのです。
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