東洋医学講座 404

東洋医学講座 404 腎と沈脈

手首でわかる身体の声 ー 脈診の基本と応用

手首にそっと指を当てるだけで、身体の深部からのメッセージを読み解く。それが東洋医学の診断法「脈診」です。しかし、脈は決して単純なものではなく、季節の移ろいや年齢、その人が生まれ持った体質によって様々に姿を変えます。本稿では、その奥深く、かつ論理的な脈診の世界の基本原理と、診断に至るまでの総合的な考え方をご紹介します。


この記事を読めば、東洋医学について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!

今回の講義の概要

  • 脈は常に変化する
    脈は一つではなく、季節(四季脈)、年齢(年齢脈)、体質(体質脈)、一時的な状態(生理脈)など、複数の要因が重なって現れる複合的な情報です。
  • 全体を反映する手首の脈
    身体は一つの統一体(全機性)であるため、一般的に診られる手首(寸口)の脈にも、全身の状態が反映されています。
  • 脈診は総合芸術
    正確な診断のためには、練習を積んで感覚を磨くと同時に、見た目や問診など他の情報(望・聞・問診)と組み合わせて、総合的に判断することが不可欠です。

腎と沈脈

脈診の仕方

脈診の基本原理

脈診における「九候きゅうこう」の「候」とは、様子をうかがう、診るという意味です。つまり、九つのポイントで身体の状態を診るのが九候の脈診です。

診る部位は、一般的に手首の「寸口すんこう」が用いられますが、全身の脈を診る方法として、顔や首、足の甲などを用いる「全身三部九候」も存在します。

  • 上部(寸)
    こめかみ、耳門じもん人迎じんげいなど
  • 中部(関)
    寸口、神門しんもん合谷ごうこくなど
  • 下部(尺)
    太衝たいしょう太谿たいけい衝陽しょうようなど

一見すると複雑で、ややこしく感じられるかもしれませんが、これらは全て「人体は一つの統一体である(全機性)」という共通の原理に基づいています。そのため、どの部位の脈を診ても、身体全体の状態を反映しているのです。

脈状から読み解く情報

脈を診る際には、位置だけでなく、その力強さ、速さ、圧をかけたときの強弱なども重要な情報となります。さらに、脈の状態を正しく判断するためには、以下のような様々な要因を総合的に考慮する必要があります。

  • 四季脈しきみゃく時脈じみゃく
    健康な人の脈は、季節や一日の時間帯によって自然に変化します。
  • 年齢脈ねんれいみゃく
    年齢によって基本的な脈は大きく異なります。例えば、子供の脈は力強い「弦脈げんみゃく」や「洪脈こうみゃく」に近く、ご年配の方の脈は「濇脈しょくみゃく」や「沈脈ちんみゃく」に近くなります。
  • 体質脈たいしつみゃく
    その人が生まれ持った体質を反映する脈です。これは非常に個人差が大きく、あらゆる方面から観察しないと把握が難しいため、脈診の中でも特に習得が難しい部分です。
  • 生理脈せいりみゃく
    入浴後、運動後、極度の緊張時などに見られる一時的な脈の変化です。少し落ち着けば正常な脈に戻るため、区別しやすいです。

これらの様々な脈の状態を、その人の基本的な「年齢脈」を土台としながら、総合的に判断していくのが脈診です。

寸口の脈診 ー 実践と応用

様々な脈診法の中でも、手首の「寸口」で診る方法は、最も診やすく、多くの先人たちによって研究が積み重ねられてきました。

例えば、妊娠の有無を診る場合、手首の一番奥(肘側)にあたる「尺脈しゃくみゃく」が最も活発に拍動します。これは、子宮が東洋医学では「腎」の系統に属するため、妊娠によって血液が子宮へと盛んに流れるようになるからです。このように、脈を診る位置、力強さなどを注意深く観察し、その微細な違いを感覚で掴めるようになるまで、練習を積む必要があります。

人間の感覚は、使えば使うほど敏感になるものです。できるだけ脈診の機会を逃さず、努力を重ねることが上達の鍵です。

また、実際に脈に触れる前に、まずその人の状態をよく観察し(望診)、声や音を聞き(聞診)、症状などを詳しく尋ねる(問診)ことが大切です。これらの情報からある程度の推察を立ててから脈に触れると、脈が示している意味をより深く理解でき、脈診が非常に楽しくなります。

手首の三つの部位(寸・関・尺)が、それぞれ全く違う脈を打つことはありません。一本の動脈の流れの中で、部位ごとに微妙な違いとして現れるのです。その一貫した流れの中にある差異を会得することが、脈診の神髄と言えるでしょう。皮膚の上から血管の中の様子を診るのですから、確かに難しいことですが、繰り返し実践するうちに、自然と分かるようになっていきます。

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