免疫 72 免疫学から考える自己免疫疾患

免疫 72 免疫学から考える自己免疫疾患

自己免疫疾患の正体は
「内部監視システム」の過剰作動
老化・がんとの意外な共通点

「なぜ、自分の免疫が自分を攻撃するのか?」その答えは、免疫システムの「選手交代」にありました。

ストレスなどで主要な免疫がダウン(抑制)した時、私たちの体は無防備になるのを防ぐため、進化的に古い「特殊部隊」を緊急動員します。このシステムが過剰に働いてしまった状態こそが、自己免疫疾患の正体なのです。老化、妊娠、がんとも共通する「免疫抑制下のサバイバル反応」について解説します。

この記事を読めば、免疫について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!

今回の講義の概要

自己免疫疾患は「免疫の暴走」ではなく「極限の免疫抑制」である
「自分を攻撃する細胞」はエラーではなく「内部監視のパトロール部隊」である
「老化」や「がん」と同じ、体を守るためのサバイバル反応である

1. 免疫抑制の裏で起こる
「内部監視システム」の過剰な活性化

自己免疫疾患と「がん・老化」の共通点:免疫抑制下で働く内部監視システムの正体

自己免疫疾患の患者さん(ヒトでも実験マウスでも同様)の体内では、胸腺や血液中の主要な免疫細胞(エリート部隊)は減少しており、全体としては「免疫抑制」の状態にあります。

しかしその一方で、胸腺外分化T細胞自己抗体産生B細胞といった、進化的に古い免疫細胞だけは逆に増加しています。

これはどういうことでしょうか?

主要な免疫が機能しなくなったため、代償として「内部監視システム(体の内側の異常を見張る古い免疫)」が過剰に活性化し、必死に穴埋めをしているのです。

  • 通常の免疫(新)
    外敵(ウイルスなど)を倒すのが得意。ストレスに弱い。
  • 内部監視の免疫(古)
    異常な自己細胞(がんや老化細胞)を処理するのが得意。ストレスに強い。

自己免疫疾患とは、この「内部監視の免疫」が過剰に拡大し、正常な組織まで処理しようとしている状態と言えます。

2. 「禁止クローン」は失敗作ではなく、
必要な「掃除屋」だった

これまで医学界では、「自己反応性T細胞(自分を攻撃する細胞)」のことを、あってはならない「禁止クローン」と呼び、胸腺での教育(負の選択)に失敗して生まれてしまった「エラー品」だと考えてきました。

しかし事実は違います。

自分に反応する細胞(禁止クローン)が出現するのは、あくまで「胸腺外分化T細胞(古い免疫)」に限られています。通常のT細胞がエラーを起こして出現するわけではありません。

つまり、彼らはエラーで生まれたのではなく、もともと「自分(の異常細胞)に反応して処理する」という役割を持って存在していたのです。

主要な免疫が弱ったことで、この「掃除屋」たちが過剰に増えすぎた結果、炎症が大きく見えているだけなのです。

「自分を攻撃する細胞」は、本来は異常な細胞を片付けるための正義の味方(掃除屋)です。彼らが暴れているのではなく、彼らを動員せざるを得ないほど本体の免疫が弱っていることが問題なのです。

3. 老化、妊娠、がん、
慢性GVH病との共通点

この「免疫抑制 + 古い免疫の活性化」というパターンは、自己免疫疾患だけの特異なものではありません。実は、以下の状態とも非常によく似ています。

  • 老化
  • 妊娠
  • がん
  • 慢性GVH病(移植片対宿主病)

これらに共通しているのは、「免疫抑制の極限状態」であるということです。

同時に、これらは「異常自己細胞(自分とは少し違う異物)」が生じる病態でもあります。

  • 老化
    古くなった細胞
  • がん
    変異した細胞
  • 妊娠
    半分は父親由来の遺伝子を持つ胎児(非自己)

4. なぜ「古い免疫」だけが
生き残るのか?

ストレスや薬物による免疫抑制は、まず進化レベルの高い「新しいT細胞・B細胞(エリート部隊)」を直撃し、機能を停止させます。彼らは精巧ですが、ストレスに対して非常に脆いのです。

しかし、「古い免疫システム(胸腺外分化T細胞など)」は、免疫抑制に対して非常に高い抵抗力(タフさ)を持っています。

主要な免疫が倒れても、タフな古い免疫は生き残り、むしろ活性化します。

老化やがん、そして自己免疫疾患において、彼らは免疫抑制という過酷な環境下で、発生した異常自己細胞を速やかに排除しようと、必死に働いているのです。

まとめ

自己免疫疾患は「免疫の反乱」ではありません。

ストレスで新しい免疫が機能不全に陥った緊急事態において、最後まで体を守ろうとする「古い免疫」の健気なサバイバル反応(過剰防衛)なのです。

治療の鍵は、古い免疫を薬で叩くことではなく、抑制されてしまった「新しい免疫」が再び働けるように、ストレスを取り除き環境を整えてあげることにあります。

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