腎のSOSは全身に現れる
「実」と「虚」で見分ける病理と症状
「腰が痛い」「耳鳴りがする」「なぜか不安で仕方がない」…。一見バラバラに見えるこれらの不調、実はすべて「腎」からのSOSかもしれません。東洋医学では、腎の不調をエネルギーが過剰な「実」と不足している「虚」に分けて考えます。本稿では、全身に現れる多彩な腎の病理サインと、それぞれの治療原則について詳しく解説します。
この記事を読めば、東洋医学について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!
腎系統の病理

東洋医学における腎の病理は、腎の気が過剰に滞る「実」の状態と、不足して衰える「虚」の状態、そして病邪が深く侵入した状態に分けられます。
腎気が実なるときの症状
腎の気が盛んになりすぎている、あるいは邪気が充満している状態です。
- 精神
志(意志)があり余り、強気になる。 - 腹部
腹が張る。 - 排泄
下痢をする。小便が黄色くなる。 - 呼吸・全身
体がむくみ、喘咳(ゼイゼイして咳が出る)する。 - 皮膚・体温
発汗しやすく、寒気がして少しの隙間風も敏感に感じる。顔色が黒ずむ。
治療の原則
これらは腎の「実邪」による症状であり、基本的には余分な邪気を取り除く「瀉す」治療が良いとされます。ただし、少しでも「虚(不足)」の兆候がある場合は、補う治療(補法)を優先すべきです。腎は生命力の源(命源)であるため、みだりに瀉すべきではありません。
腎気が虚なるときの症状
腎の気が不足し、機能が低下している状態です。
- 痛み・冷え
腰や背中に冷えを感じ、疼くような痛み(疼痛)がある。足が火照って痛む。 - 感覚器
耳鳴りがして聴力が低下する。 - 胸部
胸の中に痛みを感じる。 - その他
歯茎が浮いて出血しやすくなる。 - 精神
理由のない恐怖心がつのる。
治療の原則
これらは腎が虚した症状であり、気を補い温める「補法」を加えることが原則です。
腎臓そのものに病が入った症状
実邪や虚邪の症状がさらに進行・悪化し、臓器としての腎に影響が出ている状態です。
- 腹部が膨れる。
- 体にむくみ(浮腫)が生じる。
- ゼイゼイと咳が出る。
- 発汗して寒気を起こしやすく、隙間風を極端に嫌がる。
- 胸の中に痛みを発する。
腎系統(経絡や関連機能)に病邪が入った症状
腎は全身の多くの機能と関わっているため、病邪が侵入すると以下のような多岐にわたる症状が現れます。
精神・神経系
- 根気の減退、些細なことが気にかかる。
- 物に驚きやすい、胸騒ぎがする。
- 寝苦しい、安眠できない。
- めまい、のぼせ(上実下虚:頭に血が上り足元が冷える)。
【頭部・顔面・感覚器】
- 耳
耳鳴り、耳が暗くくすんだ色(暗蒙色)になる。 - 目
瞳に濁り(汚点)がある、凝視力がなくなる(テレビなどですぐ疲れる)、目の前がちらつく、瞳孔が開く(散大)。 - 口・喉
咽や唇が乾いて水を欲しがる、声がかすれる、咽に痰がからむ、舌が赤く滑らかで乾く。 - 顔色
顔色が黒く艶がなくなる、あるいは両頬が赤く火照って酒に酔ったようになる(虚熱)。 - 髪
抜け毛が増える。 - 鼻
鼻血が出る。
四肢・身体
- 手足が冷たいのに火照る(冷えのぼせ)。
- 四肢がだるく痛みがある、冷えやすい。
- 指先がしびれる。
- 首や肩背部に寒気を感じる、または強く痛む。
- 腰に力が入らない。
腹部・消化器
- 腹鳴がする。
- 下腹に力がなくダブついている、または硬く引きつって痛む。
- 脇腹(胸肋)が虚してむくむ。
- 水が胃に溜まって吸収されにくい(胃内停水)、しゃっくりが出る。
- 飲食の味がしない、食べてもすぐ飽きるが時間が経つとすぐ欲しくなる。
泌尿生殖器・その他
- 陰部が寒い。
- 小便が頻繁で出にくい、色が清白(薄い)または赤く濁る。
- 夢精、性欲はあるが精力がない。
- 夕方から夜にかけて寒気と熱っぽさが交互に来る(往来寒熱)。
- 自汗(じっとしていても汗が出る)、盗汗(寝汗)。
- 起立していると疲れやすく、すぐに寝たがる(横になりたがる)。
- 息切れしやすい(速く歩くとすぐ切れる)。










今回の講義の概要
腎気が過剰な「実」では腹張や喘咳、不足する「虚」では腰痛や耳鳴り、恐怖感などが現れます。
腎は生命力を司るため、基本的には補う治療(補法)が優先されます。みだりに瀉す(取り除く)ことは慎重であるべきとされています。
腎の不調は、排泄機能だけでなく、精神(不安・驚き)、感覚器(目・耳)、髪、呼吸器など、全身の多岐にわたる症状として現れます。