免疫 62

胃潰瘍治療の歴史 酸消化説とH₂ブロッカーの裏に隠された真実

胃潰瘍治療の歴史
酸消化説とH₂ブロッカーの裏に
隠された真実

胃潰瘍の治療は、迷走神経切除術からH₂ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬へと進化してきましたが、その歴史は「真の原因」に対する誤解と混乱の連続でした。かつて信じられていた酸消化説はなぜ失敗したのか、そして、H₂ブロッカーやPPI(プロトンポンプ阻害薬)が潰瘍を治す真のメカニズムは、酸抑制ではなく、免疫細胞の抑制にあったことを解き明かします。

ツボ丸くん

この記事を読めば、免疫について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!

今回の講義の概要

迷走神経切除術の失敗と酸消化説の限界
H₂ブロッカーの真の作用は顆粒球抑制 
制酸剤の長期使用リスクとピロリ菌感染の医原性

免疫学から考える胃潰瘍

胃潰瘍発症のメカニズム、混乱の歴史

1965年頃、胃潰瘍の治療として迷走神経切除術が外科で施行された時期がありました。これは、当時の酸消化説が信じられていたためです。しかし、結果は全くの期待外れで、むしろ逆の潰瘍悪化が起こりました。

マウスを用いた実験でも、迷走神経切除術は胃領域の副交感神経支配を破壊するため、相対的に交感神経優位の状態となり、胃粘膜に顆粒球増多が起きて、胃潰瘍形成が促進されることが確認されました。

このようにして、胃潰瘍の酸消化説は消滅しかけたのですが、再びその混乱の歴史がH₂ブロッカーによってもたらされます。1972年にヒスタミンH₂受容体拮抗薬であるシメチジンが開発されたからです。

ヒスタミンは胃の壁細胞にあるH₂受容体に結合して酸を分泌させます。シメチジンはH₂受容体に結合することで、ヒスタミンの酸分泌作用を抑制し、潰瘍を治すとされていました。

しかし、シメチジンは開発当初から顆粒球減少症を引き起こすことが知られていました。シメチジンの開発前の薬であるメチアミドは、さらにこの傾向が強かったのです。実際、シメチジンでさえ、ヒトに経口投与すると激しい顆粒球減少が誘導されます。

つまり、シメチジンの抗胃潰瘍作用は、酸分泌抑制を介してではなく、顆粒球減少を介して発揮されていたのです。酸を分泌する壁細胞だけでなく、顆粒球もヒスタミン受容体を持つ細胞だからです。

酸分泌に直接関わるプロトンポンプ阻害薬(PPI)も抗胃潰瘍薬として使われていますが、こちらも酸分泌抑制とともに顆粒球の活性酵素の放出を完全に抑制する作用があることが分かっています。

そもそも、胃酸の分泌は胃潰瘍患者のための保護反応として起こっています。いずれの制酸剤も、長期使用は危険をはらんでいます。胃の内部環境を壊し、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が定着し、本格的な難治性の胃潰瘍へと導くからです。

今日、ヘリコバクター・ピロリ菌の胃潰瘍原因説が盛んに言われていますが、そのほとんどが医原性のものでしょう。また、ストレスによる顆粒球の胃粘膜への集積がまずあって、それを活性化するヘリコバクター・ピロリ菌の存在も、二次的な重要性を持ってくるのです。

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