免疫 57

免疫 57 免疫学から考える感染症

風邪が重症化するメカニズム
免疫「正常領域」の重要性

感染症の病態を理解するには、病原体だけでなく、私たち自身の免疫状態を知ることが不可欠です。細菌とウイルスでは、それらを処理する白血球の種類が異なり、この免疫細胞の「分業」こそが、炎症の種類や治療法の選択に大きな影響を与えます。宿主側の免疫状態に目を向けることで、抗生物質の不適切な使用を防ぐことにも繋がります。

この記事を読めば、免疫について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!

今回の講義の概要

・風邪は免疫維持に不可欠な普遍的感染症
・重症化の鍵はリンパ球比率の逸脱
・免疫過剰・抑制それぞれの重症化リスク
・最適な免疫バランスの重要性

免疫学から考える感染症

日常経験する風邪は、アデノウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザウイルスなどのウイルス群の感染によって引き起こされる現象で、ある意味ではウイルス感染は細菌感染に負けないくらいの普遍的な病気です。そして、この風邪ウイルスの刺激によって、ヒトの免疫能が正常に保たれている可能性が高いのです。つまり、刺激があってこその免疫能維持だと言えます。

麻疹(はしか)ウイルス、水痘ウイルス、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)ウイルスなどは、一度感染すると強い免疫を残すウイルスです。これはむしろウイルス全般の性質ですが、風邪ウイルスの多くは抗原変異を起こすため、この法則から逃れているものが多いと言えます。

風邪はどんな場合に重症化するのか

風邪が重症化するメカニズムは、現代医学においては混乱して理解されているように思われます。それは、免疫系、特にリンパ球系の比率において、大人では30~40%という正常領域があり、これよりも過剰でも低下でも、それぞれに特有なウイルス感染症状を強く出すからです。

免疫過剰域では、ウイルスとリンパ球の戦いで過剰な免疫反応が起こり、発熱、炎症、消耗などが強く引き起こされます。「いつも風邪をひく」「風邪をひきやすい」と言われるパターンの人たちで、子ども時代に多く見られます。

反対に、免疫抑制状態で風邪を引いた場合です。炎症が遷延(長引くこと)することが多く、脳炎や骨髄炎などの神経障害に移行する場合もあります。また、免疫が顆粒球優位の炎症に移行したときに肺炎などを合併します。このように、免疫系は正常領域で最も効率よくウイルスを排除できるのです。免疫能は、高すぎても低すぎても良くありません。

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