経絡・経穴(ツボ)とは?
東洋医学の基本と
セルフケアへの活用法
「なんだか体の調子が悪いけど、
原因がよくわからない…」
「肩こりや腰痛に、
自分でできるケアはないかな?」
そんな時、東洋医学の知恵である経絡と経穴(ツボ)の知識が、あなたの不調の原因を探り、セルフケアを行う上で大きな助けとなるかもしれません。
東洋医学では、私たちの身体の不調は、生命エネルギーである「気」や「血」の流れが滞ることによって起こると考えます。鍼灸治療は、これらの「ツボ」を刺激することで気の流れを整え、身体が本来持つ自然治癒力を高めることを目指します。
人体には、主要なエネルギーラインである「十四経脈」に属するツボや、その他にも効果が認められているツボ(経外奇穴など)が多数存在し、WHO(世界保健機関)によって標準化された経穴だけでも361穴あります。これらのツボは、体の様々な不調に対して効果を発揮します。
このページでは、東洋医学の根幹をなす経絡・経穴の基本的な考え方と、代表的なツボの位置や効能、そしてご自身でできる簡単なツボの探し方や押し方について分かりやすく解説します。ぜひ、日々の健康管理やセルフケアにお役立てください。
【目次】
1.東洋医学の基本
経絡と経穴(ツボ)とは?
経絡とは?~気血の通り道~
経絡とは、古代中国の医学において、人体の中を流れる生命エネルギーである「気」や、身体に栄養を与える「血」、そして身体を潤す水分である「津液」など(これらを合わせて「気血栄衛」と呼ぶこともあります)の通り道として考え出された概念です。
「経」は主要な縦の流れである経脈を、「絡」は経脈から枝分かれして全身に網の目のように広がる横の流れである絡脈を表します。
これらの経絡は、身体の各臓腑や組織、器官を繋ぎ、生命活動を維持するための情報を伝達し、栄養を供給する重要なネットワークシステムと考えられています。
経穴(ツボ)とは?
~気血が滞りやすいポイント~
経穴とは、この経絡上にあり、特に「気」や「血」の流れが滞りやすかったり、あるいは外部からの影響を受けやすかったりする特定のポイントのことを指します。一般的に「ツボ」と呼ばれているものがこれにあたります。
経穴は、身体の不調が現れやすい反応点であると同時に、鍼や灸、指圧などで刺激を与えることで、経絡の気血の流れを整え、関連する臓腑や組織の機能を調整し、様々な症状を改善するための重要な治療点となります。
2.正穴とは?
~主要な経絡と経穴の数~
鍼灸治療で用いられる経穴(ツボ)の中でも、特に重要とされるのが正穴です。
十二経脈
身体の左右を対称に流れる12本の主要な経絡
- 手の太陰肺経(11穴)
- 手の陽明大腸経(20穴)
- 足の陽明胃経(45穴)
- 足の太陰脾経(21穴)
- 手の少陰心経(9穴)
- 手の太陽小腸経(19穴)
- 足の太陽膀胱経(67穴)
- 足の少陰腎経(27穴)
- 手の厥陰心包経(9穴)
- 手の少陽三焦経(23穴)
- 足の少陽胆経(44穴)
- 足の厥陰肝経(14穴)
奇経八脈のうち、
独自の経穴を持つ2つの経絡
これらの十四経脈上の正穴は、WHO(世界保健機関)によって標準化され、国際的にも認められているもので、その数は361穴あります。
経外奇穴
その他にも、十四経脈には属さないものの、特定の症状に対して高い治療効果が経験的に認められてきた経外奇穴と呼ばれるツボも多数存在します。
3.もっと詳しく!
経穴(ツボ)について
腧穴という呼び方
経穴は、腧穴や輸穴、あるいは正穴とも呼ばれます。
「腧」や「輸」という字には「運ぶ」「注ぐ」といった意味があり、気血が体表に注ぎ出て、経絡を通じて内臓へと運ばれる重要なポイントであることを示唆しています。
広義には、経脈上にない反応点や治療点(阿是穴など)も腧穴に含めることがあります。
腧穴とは、十二経脈に奇経八脈の内の督脈と任脈を加えた十四経脈に属するツボを指します。また、十四経脈上の正規の位置にある正穴(経穴)とも呼ばれます。
腧穴(または輸穴)という言葉は、経穴と同様に経脈上の特定の刺激点を意味し、広義では経脈上にない刺激点も含まれます。
経穴の数と阿是穴
古代の医学書である『霊枢1』の「九鍼十二原」という篇には、「節の交わり三百六十五会」と記されており、身体には多くのツボが存在することが古くから認識されていました。
現在では、前述の通りWHO2(世界保健機関)によって361穴の経穴が国際的に標準化され、承認されています。
鍼灸治療で用いられる刺激点は、これらの決められた位置にある経穴(正穴や経外奇穴)だけでなく、患者様が押された時に「ああ、そこそこ!そこが痛い(気持ちいい)!」と反応する場所、いわゆる「阿是穴」も重要な治療点となります。阿是穴は、症状や身体の状態によって現れる場所が変動する、まさにオーダーメイドの治療点と言えます。

4.自分でできる!
ツボの探り方・押し方のコツ
ツボを刺激する方法は専門家が行う場合は非常に複雑ですが、一般の方がご自身やご家族のケアとして行える簡単なツボの探し方と押し方をご紹介します。
症状のある場所からツボをとる方法
(局所治療の考え方)
肩こりなら肩、腰痛なら腰というように、症状が出ている場所やその周辺を軽く押してみて、以下のような反応がある場所を探します。
「そこだ!」と思えるポイントが見つかったら、そこがあなたにとってのツボ(阿是穴など)である可能性があります。
- 筋肉が凝っている場合
親指や中指の腹で、気持ちの良い程度の強さで押したり、指で筋肉をつかむように揉んだりします。 - 関節などのデリケートな部位
優しくなでる程度でも効果がある場合があります。
刺激の目安
気持ちが良いと感じる程度の強さで、1ヶ所につき5分くらいを目安に刺激します。
ただし、刺激に敏感な方や体調が優れない場合は、押す力を弱くしたり、時間を短くしたり調整してください。
ツボを刺激して血行が良くなると、症状が改善することが期待できます。
注意点
以下の場合は、刺激を与えることはやめましょう。症状が悪化する可能性があります。
- 患部に赤みや熱感、強い腫れがある場合
- じっとしていても激しい痛みがある場合
- 押すと非常に強く痛みを感じる場合
- 皮膚に湿疹や傷などの異常がある場合
症状から離れた場所にツボをとる方法
(経絡・遠隔治療の考え方)
これは、東洋医学の経絡理論を利用する方法で、少し専門的になりますが、効果的な場合があります。
手足の特定のツボを刺激することで、離れた場所にある症状(例えば、頭痛や内臓の不調など)を改善しようとするアプローチです。
痛みなどの症状が、主要な十二経脈のうち、どの経絡上に現れているか、あるいはどの経絡と関連が深いかを判断できれば対処が可能です。(例:腕の外側の痛みなら手の陽明大腸経や手の少陽三焦経上のツボ、など)
その経絡上の手足にあるツボ(特に肘や膝から先にある主要なツボ)をいくつか押してみて、症状のある場所の痛みが和らいだり、動きがスムーズになったりする側のツボを選んで刺激します。
この方法は専門的な知識が必要なため、正確な判断は鍼灸師にご相談いただくのが最善です。
ツボの押し方の一例
(セルフケアの基本)

- 指の腹で優しく押す
爪を立てず、親指や人差し指、中指の腹を使って、垂直にゆっくりと圧を加えます。 - 円を描くようにマッサージする
押した状態で、小さな円を描くように優しく揉むのも効果的です。 - 心地よい刺激で
「痛気持ち良い」と感じる程度の強さが目安です。我慢するほどの強い刺激は必要ありません。 - 一回の刺激は数秒~1分程度
1ヶ所につき、5~10秒押してゆっくり離す、を数回繰り返すか、30秒~1分程度持続的に圧を加えます。 - 呼吸に合わせて
息をゆっくり吐きながら押し、吸いながら緩めるとリラックス効果も高まります。
5.【専門編】五行穴(ごぎょうけつ)とは?
~ツボの性質と治療への応用~
(※このセクションは東洋医学の専門的な内容を含みます。ご興味のある方向けにご紹介します。)
五行穴は、東洋医学における経穴(ツボ)の重要な分類の一つで、主要な十二経脈のそれぞれの手足の末端(指先)から肘や膝の関節周辺までに存在する特定の5つの経穴を、古代中国の自然哲学である五行説(木・火・土・金・水)に対応させて名付けたものです。
「五輸穴」または「五兪穴」とも呼ばれます。
五行穴(五輸穴)の特徴
五つの状態を表す
- 気の流れの段階を表す
各経脈を流れる「気」の状態を、水の流れに例えて、源泉から始まり、徐々に流れが太く深くなり、やがて大きな流れに合流する様子を、井、滎、輸または兪、経、合の五つの段階で表現します。これらの各段階に五行が配当されます。 - 経脈の陰陽と五行の順序
五行の配当順序は、陰性の経脈(例:肺経、心経、肝経など)と陽性の経脈(例:大腸経、小腸経、胆経など)で異なります。これは、経脈を流れる気の性質や方向性を示唆しています。 - 特有の治療効果を持つ
それぞれの五行穴は、対応する五行の特性や、気の流れの段階に応じた特有の治療効果を持つとされ、様々な症状や病態の治療に用いられます。
五行の配当
陰経 井(木)→ 滎(火)→ 輸(土)→ 経(金)→ 合(水)
(手の太陰肺経など)
陽経 井(金)→ 滎(水)→ 輸(木)→ 経(火)→ 合(土)
(手の陽明大腸経など)
五輸穴(井・滎・輸・経・合)の主な意味とイメージ
- 井穴
「井」は泉が湧き出る場所のイメージ。経脈の気が最初に現れ、湧き出すポイント。手足の指先に多くあります。 - 滎穴
「滎」は水がサラサラと流れる浅い小川のイメージ。気が少し勢いを増して流れるポイント。 - 輸穴/兪穴
「輸」や「兪」は水が注ぎ込み、やや深く溜まる場所のイメージ。気が経絡を巡り、体表に現れ、他の臓腑と連絡するポイント。関節の近くに多いです。 - 経穴
「経」は水が大きな川のように勢いよく流れるイメージ。経脈を気が本格的に巡り、その経絡の気が最も盛んに通過するポイント。 - 合穴
「合」は多くの流れが合流して大きな河となり、やがて海に注ぎ込むイメージ。経脈の気が最も深く、内臓(六腑)に合流するポイント。肘や膝の関節周辺に多くあります。
五行穴(五輸穴)の治療への応用例
それぞれの五行穴(五輸穴)は、その特性に応じて様々な症状の治療に用いられます。
- 井穴
急性の痛み、熱症状、炎症性の疾患、意識障害(救急穴として)、胸苦しさなどに効果があるとされます。 - 滎穴
発熱、身体の熱感、炎症性の痛み、出血などに効果があるとされます。 - 輸穴/兪穴
身体の重だるさ、関節の痛み、湿気による不調、咳や喘息など呼吸器系の症状、消化器系の症状などに効果があるとされます。背部にある各臓腑に対応する兪穴(肺兪、心兪など)とは区別されます。 - 経穴
その経絡が主に関連する病気(本経病)の治療に用いられます。咳や喘息、喉の痛み、関節痛などに効果があるとされます。 - 合穴
体表から入ってきた邪気(病気の原因)を追い出したり、内臓(特に六腑:胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦)の慢性的な不調、逆流性の症状(吐き気、げっぷなど)、下痢などに効果があるとされます。
五行穴の選定や組み合わせは、東洋医学の診断(四診合参)に基づいて行われる専門的な知識と技術を要します。
- 『霊枢(れいすう)』は、中国最古の医学書である『黄帝内経(こうていだいけい)』を構成する2つの書物の1つで、実践的な記述が特徴です。 ↩︎
- WHO(World Health Organization)とは、国連の専門機関である世界保健機関を指します。グローバルな保健問題に取り組み、加盟国への技術支援や健康志向の監視・評価などを行っています。https://www.who.int/ ↩︎

