肩こりや腰痛で来院される患者さんと、このような会話をすることがよくあります。
「朝起きると肩や腰が張って痛くなります。枕が合っていないと思うのですが、私にはどのような枕がふさわしいですか?」
その際、私はこうお答えしています。
「すべての人に合う枕はありません。ご自身の身体の状態を知り、いろいろ試して合うものを見つけてみてください。」
少し冷たい返答に聞こえるかもしれません。しかし、これには理由があります。 首の形状や高さを細かく計測し、高い費用をかけて購入した枕であっても、結局合わずに押し入れの肥やしになっているというお話を数多く耳にするからです。
では、何を基準に寝具を探せばよいのでしょうか。そのヒントは「子供の寝姿」にあります。
子供は、肩こりや腰痛を知りません。体が柔らかく活発であることも要因ですが、夜寝ている姿を観察すると、頻繁に「寝返り」をして、どこまでも転がっていることが確認できます。ここに重要な鍵があります。
私たちの寝ている時間は、一日の三分の一から四分の一を占めています。いくら行儀良く同じ姿勢を保っていても、長時間動かなければ筋肉は硬直します。この硬直を防ぎ、身体をリセットする行為こそが「寝返り」なのです。 しかし、大人になるにつれて体の柔軟性や筋力は低下し、寝返りの回数は減っていきます。長時間の固まった姿勢が筋肉の硬直を生じさせ、朝起きたときの腰痛や肩こりの原因になっていると考えられます。
つまり寝具選びの最大のポイントは、「筋肉の硬直を防ぐための、寝返りがしやすいものを選ぶこと」なのです。
寝返りに必要な筋力がない方は、寝返りを補助してくれるような「高反発」な素材を。 体温が低すぎて熟睡に十分な熱を溜められない方は、保温効果の高い包み込むような「低反発」の素材を。 そして体にかける布団は、寝返りを妨げないよう重過ぎず、かつ体温を一定に保てるものが良いでしょう。当然ながら、寝返りができる十分なスペースの確保も重要です。
また、もう一つ見落とせないのが「心地よさ」です。気持ちよく寝つけなければ元も子もありませんから、寝入る際に肌触りや形状が心地よいと感じるかどうかも考慮すべき点です。
ご自身の身体に「今、何が足りないのか」を把握して、それを補完する寝具を選ぶことが、筋肉の硬直防止、ひいては快適な朝に繋がります。
寝具のほかにも、室温などの環境因子も睡眠には大きく関わってきますが、それについてはまた別の機会にお話ししたいと思います。 毎日の睡眠に悩まれている方の、寝具探しのヒントとなれば幸いです。










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