揉んでも治らない肩こりの原因は内臓にあり?東洋医学で解き明かす「5つの肩こり」
「マッサージに行っても、すぐに肩が凝ってしまう」。
多くの人が抱えるこの悩みに対して、東洋医学には「肩こりを治せれば一人前」という格言があります。なぜなら、肩こりは単なる筋肉の疲労ではなく、五臓(肝・心・脾・肺・腎)の機能低下が複雑に絡み合った結果として現れる「全身のSOSサイン」だからです。
本稿では、東洋医学の五行理論に基づき、内臓の不調がどのように筋肉(肝)へ波及し、右肩・左肩・深部など、どのような違いとなって現れるのかを客観的に解説します。
1. 筋肉の凝りは「肝」の機能低下のサイン
東洋医学では、筋肉の引きつりや凝りは、筋肉を司る「肝」の機能低下によって起こると考えます。しかし、臨床において重要なのは「肝臓そのものが悪い」と決めつけることではなく、「他のどの臓器の不調が、肝に悪影響を及ぼしているのか」という波及のルートを見極めることです。
肝機能の低下が著しく、肝の働きが異常に亢進している場合は、特に「右肩や背中」が強くつるような凝りを発症しやすいという特徴があります。
2. 脾(胃腸)の酷使による肩こり ~ 「左肩」の凝りと逆剋
過食などにより脾系(胃腸)が過剰に働きすぎた場合、「左肩」の筋肉がつるような凝りが現れやすくなります。これは五行の「土(脾)」が「木(肝)」を反撃する「逆剋(土侮木)」という現象です。本来は木が土を抑制するルールですが、土の力が強大になりすぎると力関係が逆転するのです。
この現象には2つのルートがあります。
- 二重の剋制
脾(土)の過剰な力が、相生関係にある肺(金)を強め、強くなった肺が肝を激しく攻撃(金剋木)するルート。肺の力が元々強い場合に起こりやすい現象です。 - 直接の逆剋
肺の力が弱くても、脾の力が肝に対して圧倒的に強い(例:肝80に対し脾300など)場合、直接的に肝を攻撃してしまいます。
自然のルールに従った順剋はわずかな力の差でも起こりますが、ルールに逆らう「逆剋」は、よほど力の差(極度な過食など)がない限り起こりません。
3. 腎(生命力)の低下による肩こり ~ 「骨際」の深い凝り
腎(水)と肝(木)は「母と子」の関係(水生木)にあります。母である腎の機能が低下すると、子である肝に栄養(力)を送れなくなり、母子共に機能低下に陥ります。
腎機能の低下からくる肩こりの特徴は、頸椎や胸椎といった「背骨の周りや、骨際の深い部分の筋肉(深層筋)」が強く引きつることです。腎は身体の最も深い部分(骨や根本の生命力)を司るため、凝りも身体の奥深くで重苦しく感じられます。
また、腎が弱ると腹直筋が引きつりやすくなるため、無意識のうちに前かがみの姿勢になりやすいのも特徴です。
4. 心(循環)の低下による肩こり ~ 「胸から腕」への引きつり
心系(火)と腎系(水)は働きが連動しているため、心系の機能が落ちている時は腎系も弱っていることが多く、背骨周りの筋肉がつるなど似た症状が出ます。
しかし、心系由来の肩こり特有の症状として、心系の経絡が走っている「上腕から脇の下(腋窩)、肩背部、そして大胸筋(胸の筋肉)」にまで引きつりが及ぶ点が挙げられます。普通の肩こりで胸の筋肉までつることは少ないため、大胸筋の緊張や、進行して心臓を締め付けるような感覚がある場合は、心系の機能低下を疑います。
5. 肺(呼吸器)の低下による肩こり ~ 「肩先」の凝りと中府の痛み
肺系(金)の機能低下による肩こりは、身体の中心部ではなく「肩先(肺尖部)」に向かって筋肉が引きつるのが特徴です。
また、前胸部の胸骨周辺の中層の筋肉もつるのですが、深部ではないため自覚症状が出にくいことがあります。しかし、鎖骨の下あたりにある「中府」という肺のツボを指で押すと、明確な圧痛を感じることで判別できます。
6. まとめ ~ 「肩こりを治せれば一人前」の真意
このように、一口に「肩こり」と言っても、発症の原因となる臓器(脾・腎・心・肺)によって、凝る場所や引きつる筋肉の深さが全く異なります。
すべての肩こりを同じものと考え、ただ筋肉を揉みほぐすだけでは根本的な解決には至りません。「肩こりを治せれば一人前」と言われるのは、全身の五臓の機能バランスを読み解き、大元の原因から正常に戻さなければ、本当の意味で肩こりを治すことはできないからです。













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