東洋医学講座 5 「全機性」とは?

東洋医学講座 5

東洋医学の基本概念「全機性」とは?人体を「小宇宙」と捉える全体観の医学

「同じ病名なのに、なぜ治り方が違うのだろう」。

そんな疑問を抱いたことはありませんか?現代医学が病気の「原因となる菌や局所」に注目するのに対し、東洋医学は病を抱える「人そのものの全体像」に注目します。

本稿では、東洋医学の根幹をなす全機性ぜんきせいという概念を紐解き、人体と自然界、そして宇宙とがどのようにつながっているのか、その壮大な生命観について解説します。

1. 東洋医学と現代(西洋)医学の診断の違い

東洋医学の診断においては、人間は一人ひとり、体力、体質、気質がすべて異なると考えます。病気とは、そのように異なる個々の身体(土壌)に、病邪が寄生した状態と捉えるのです。したがって、厳密に言えば、表面的な症状が同じであっても、体質が異なれば一人ひとり「病名(あるいは証)」も「治療法」も違うということになります。

これに対し、現代医学(西洋医学)では、例えば同一の病原菌が証明されたり、同じ数値の異常が出たりすれば、基本的には皆「同じ病名」がつき、標準化された治療が行われます。局所的・微細な部分については非常に詳細に調べられますが、その人の「全体としての関わりやつながり」は、東洋医学ほどは重視されない傾向にあります。

2. 「全機性」とは何か ~ 部分は全体のために

身体の各臓器や器官は、それぞれある程度の独立した働きを持ちながらも、その根底においては「全体」に結びつけられ、全体の統御(コントロール)の下に置かれています。このような関係性を全機性ぜんきせいと呼びます。 右手も左手も、右足も左足も、切り離された部品ではなく「すべて繋がった自分自身である」という、当たり前ですが非常に重要な全体観です。

この全機性は、人体だけでなく、世の中のすべての事象に当てはまります。 社会構造を例に考えてみましょう。国は県の集合体であり、県は市の、市は町や村の、そして町や村は各家庭の集まりから成り立っています。さらに各家庭は、一人ひとりの人間から構成されています。 このように、全体は各組織の協同体であり、同時に「各部分は、全体の中に存在してはじめて一定の役割を演じることができる」という関係で成り立っているのです。

3. 人体は精巧な「小宇宙」である

では、なぜすべてのものが「全機性」という仕組みを持っているのでしょうか。それは、私たちを取り巻く「宇宙の機構」自体が、そのようにできているからです。

東洋医学の土台となる陰陽五行説では、「陰陽の中にさらに陰陽があり、五行の中にもさらに五行がある」と考えます。宇宙は、このようなフラクタル(自己相似的)な多重層構造を成しながら、一つの巨大な「全機性を持った宇宙」を形作っています。

地球上のすべてのものは、この宇宙の働きによって作られています。したがって、万物は宇宙の法則を内包した、全機性を持つ「小宇宙」であると考えられます。 私たちの人体もまた、無数の細胞や臓器が絶妙なバランスで連携し合う、非常に精巧な「小宇宙」なのです。局所の症状だけを見るのではなく、この「小宇宙全体の調和」を取り戻すことこそが、東洋医学の治療の本来の目的なのです。

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