東洋医学の叡智
「腎」と数字の「一・六」が
示す生命の始まり
なぜ東洋医学では「腎」が生命の源と言われるのでしょうか?その答えは、宇宙の成り立ちを示す神秘的な数字「一」と「六」に隠されています。
本稿では、「天は一なる水を生ず」という古典の言葉を紐解きながら、なぜ「水」を司る腎が全ての始まりなのか、そして五臓が生まれる順番の秘密に、その深遠な理由から迫ります。
この記事を読めば、東洋医学について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!
腎と一・六
東洋医学において、生命力の源である「腎」は五行の「水」に属します。そして、この「水」の性質は、宇宙の法則を示す数字、「生数の一」と「成数の六」によって象徴されます。
古典には「天は一なる水をを生ず」という言葉があります。これは、天が万物を創造する際に、一番はじめに「水」を生み出したことを意味し、ゆえに水には「一」という符号が与えられています。
この宇宙の法則は、人体の生成過程にもそのまま当てはまります。父母が交わることで、まず最初に水のような性質を持つ「腎精」が生じ、生命の源である「腎」の働きが始まります。このように、天(大宇宙)も人(小宇宙)も同じ仕組みで成り立っており、「腎」と、その象徴である数字の「一」と「六」は、本質的に同じものなのです。
〝天一水を生ず〟
東洋思想の根幹には、万物の生成原理を示す「生数」と「成数」という考え方があります。
生数: 万物を生み出す根源的な五つの数
- 一:水
- 二:火
- 三:木
- 四:金
- 五:土
成数: 生数が発展し、形を成した後の数
- 六:水
- 七:火
- 八:木
- 九:金
- 十:土
「一」から「五」は、万物を構成する基礎となる数です。全ての物質は、この一から五の働きを持つ原子が形を変えたものに過ぎません。
「六」という数字は、「五」という一つのサイクルを終え、次の段階の「一」に戻ることを意味します(五+一=六)。したがって、「六」は「成数」における「一」であり、これによって「一」と「六」は、共に「水」の働きを象徴するのです。両者の違いは、最初のサイクルで生まれた「一」と、二巡目のサイクルで形を成した「一」である、と理解することができます。
では、なぜ「水」が全ての始まりである「一」とされるのでしょうか。それは、古典が示す通り、自然界で生命を生み出す根源が「水」だからです。水があるからこそ、全ての生命は生まれることができます。生命が生まれる働きの第一歩が水であるため、その順番は「一」なのです。現代科学においても、他の惑星に生命が存在しないのは水がないからである、ということは広く知られています。
この原理は、人体における五臓の生成順序にも現れています。
- 腎
まず、父母から生命の源である「腎精体」を受け取ります。 - 心
次に、腎精体に鼓動が生じ、「心臓」ができます。 - 肝
そして、「肝臓」を中心とする筋肉や神経系が形成されます。 - 肺
次に、酸素を取り込むための「肺」の器官ができ、母体を通して呼吸を始めます。 - 脾
最後に、消化吸収を司り、身体の土台となる「脾」を中心とした肉体が完成します。
このように、五臓の生成も「腎(水)」から始まるのです。













今回の講義の概要
東洋医学では、生命力の源である腎は五行の「水」に属し、万物の始まりを示す「生数の一」と、それが形を成した「成数の六」によって象徴されます。
「天は一なる水を生ず」という言葉の通り、水は宇宙と生命を創造する全ての根源であり、生命が生まれる働きの第一歩であると考えられています。
人体の五臓が生成される順序もこの宇宙法則に則っており、まず生命の源である「腎(水)」が生まれ、そこから心、肝、肺、脾へと発展していきます。