東洋医学講座 394

東洋医学講座 394 腎と骨

腎が骨と歯を支配する ー 骨粗しょう症・腰痛・虫歯の根本原因

骨や歯の健康というと、多くの方がカルシウム不足を思い浮かべるかもしれません。しかし東洋医学では、骨、関節、歯の強さや健康は、生命力の源である「腎」が深く関わっていると考えます。本稿では、なぜ腎機能の低下が骨をもろくし、虫歯や関節痛の原因となるのか、その深いつながりを紐解いていきます。


この記事を読めば、東洋医学について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!

今回の講義の概要

  • 骨・関節・歯は「腎」の一部
    東洋医学では、骨や歯は生命の源である「腎精」から作られるため、全て腎の系統に属し、その健康状態は腎の機能に左右されます。
  • 腎機能の低下が骨を弱くする
    甘いものの過食や加齢、生活習慣による腎機能の低下は、骨質を低下させ、骨折、関節痛、椎間板ヘルニアなどを引き起こす根本的な原因となります。
  • 歯は骨と腎を映す鏡
    歯は「骨の外候(外部の現れ)」であり、歯磨きをしていても虫歯になるのは、内的な原因=腎の弱りが考えられます。歯を見ることで骨や腎の状態を推測できます。

腎と骨

東洋医学において、骨は生命の源である「腎精じんせい」が生成の過程で凝縮し、固形化したものと考えられています。そのため、骨は腎から成り立ち、生まれてからも腎と一体の存在として捉えられます。

例えば、甘いものの過食によって腎機能が低下すると、骨質も低下し、もろく弱い骨になってしまいます。現代の子供たちの骨が弱いと言われるのも、お菓子やジュースなどの過剰摂取によって腎機能が低下した結果と考えることができます。

また、関節も骨格の一部であるため、腎と深い関連を持っています。関節炎といった症状も、腎機能の低下が根本的な原因となっている場合があるのです。

腎機能が低下すると現れやすい症状 

  • 骨がもろくなり、骨折しやすくなる
  • 背骨が曲がりやすくなる
  • 椎間板ヘルニアになりやすくなる
  • 関節が痛む(腰痛をはじめとする関節の不調)
  • 歯がもろくなる
  • 虫歯ができやすくなる
  • 歯茎が下がる、弱くなる
  • カルシウムなどのミネラルバランスが崩れ、疲れやすくなる

骨に及ぼす腎の作用

腎の生成のメカニズムにおいて、腎と骨はもともと一つのものです。人体を構成する際、まず脳から脊髄へといった中枢神経が形成され、その外側を保護するように骨が作られます。(図)

人体における腎の本体(腎体)は、固形化する側面と液体である側面を持っています。腎が持つ水のような性質が、冷えて凝固し「氷」となったものが骨であり、その他の部分は液体としての働きを担う、というように二つの働きに分かれるのです。このように、骨格を形成する部分と、液体として循環する部分という二つの働きに分かれているのです。骨に関連するものは全て腎と関係するため、骨をはじめ歯、関節などの部分は、みな腎の働きに属します。

ちなみに、爪は筋や腱が硬化したものと見るため、肝の系統として捉えます。

腎を植物に例えるなら、腎が「根」であり、骨格全体が「幹」や「枝」、そして歯は「葉」や「花」と言えます。

一般的に虫歯は、歯のエナメル質が酸によって溶かされ、腐食することで起こると考えられています。そのため歯磨きが重要視されますが、東洋医学ではこれを間違いとは言わないまでも、片手落ちの見方だと考えます。歯磨き不足などは外的な要因(外因)に過ぎず、必ず内的な要因(内因)が存在するのです。その内因とは、腎機能の低下です。根である腎が弱ると、そこから養われる骨の質も低下し、緻密さが失われます。その結果、見た目の形は同じでも、中身はもろく弱い骨質になってしまうのです。

歯は「骨の外候」(骨の状態が現れる場所)なので、歯を見れば骨の状態が分かり、ひいては腎の状態も分かるわけです。こう考えると、毎日歯を磨いていても虫歯になる人がいる理由が、ご納得いただけるのではないでしょうか。歯だけでなく、骨全体も同様です。根本は腎にあるため、腎機能が低下する原因を知ることが重要なのです。最近、虫歯が増えたり歯茎が浮いたりする人は、腎機能の低下を招くような生活を送ってきた結果と言えるかもしれません。

加齢による機能低下は自然なことですが、生活習慣によって人為的に老化を早めてしまう場合、その中心には腎機能の低下があります。現代の子供の骨質は、昔の50代、60代の老人のようにもろくなっているとも言われます。老人の骨は硬く見えても、無理をすると非常に折れやすいのは、加齢による腎機能の低下で骨質がもろくなっているからです。

例えば、関節が痛むときは、まず腎と肝の変動を疑います。五行思想において腎(水)は肝(木)を生む母子関係にあるため、母である腎が弱れば、子である肝に影響が及ぶのは当然です。母親が弱れば、一番影響を受けるのはその子供であるのと同じです。

また、人にはそれぞれ先天的に弱い部分があり、身体が弱るとまずその部分に不調が現れます。そのため、腎機能が低下したからといって、必ずしも歯や肝に症状が出るとは限りません。その人の最も弱い部分に不調が現れるからです。このように、人によって症状の現れ方が全く違うのは、先天的な力の違い、すなわち「体質」の違いが病の症状を形作っているからなのです。

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