涙と涕の違い ー五行で理解する
東洋医学講座 338
肺と涕(なみだ)
涙は木気、涕は金気の〝なみだ〟
涙(るい)と涕(てい)はどこが違うか
まず漢字から見ると、涙の旧字は「淚」で、〝さんずい〟をとると「戾(もどる)」という字になります。目から落ちそうになったナミダがくるんと丸まってとどまっているといった感じがあります。涕の方は〝さんずい〟をとると「弟」になり、兄に続いています。したがって、とめどもなく流れるナミダという感じがあります。
五行の観点から見ると、涙は木気のナミダで、感激や興奮して出る陽遁のナミダです。同情のナミダなども、慈しみの仁の心から出るナミダなので、木気のナミダといっても差し支えないでしょう。うれし泣きは喜びのナミダなので、木気と一緒に心火が働いて出ると考えます。
これに対し、涕は寂しくなったり悲しくなったりするときに、シクシク出る陰遁のナミダです。同じナミダでも、中で働いている要因が異なります。なお、涕は鼻水を伴ったナミダともいわれています。鼻孔は肺の外候であり、肺に冷えが入ったり、心が悲しくなったりして肺が虚すると、鼻水が出ます。
「金盃、冷気に遇って、一滴の水を生ず」という言葉がありますが、きれいに拭いて何もない金盃に陰遁の冷気を当てると、水滴を発生させます。すなわち金生水になります。金は冷気を呼びやすく、また、冷気を鼻水などに水化する作用があります。
余談ですが、冬の置鍼は冷えを体内に呼びやすいので、鍼を前もって温めるか、撚鍼を加えたり、抜鍼の後に知熱灸をしたりして、十分に冷えに対する注意をする必要があります。冬は当然皮膚も締まって堅くなっているので、冷たい鍼で打つと一層痛みを増し、瀉になります。鍼(金)、冷気(水)を呼んで、冷気、痛み(木)を生ずる、という関係であります。
さて、肺金は水を生じるとともに、水を外表に出す働きがあります。肺は皮膚を司り、皮膚の開閉を通して金や水の出入りを調整しています。したがって、涙液や鼻汁、汗、涎(よだれ)の原料である水分は腎が司り、その水分を涙や鼻汁、汗として形づくるのは肺金の凝結作用です。そして、ナミダならそれを感激の涙として出すか、悲しみの涕とするか、口腔液ならそれを涎とするか唾(つば)として出すかなどは、それぞれ他の五気が関与し、最後に皮膚や腺から出す働きを肺が司ります。
この記事を読めば、東洋医学について理解できるかと思います。分かりやすく、丁寧に解説するので、ぜひ一緒に学びましょう!
今回の講義の概要
・涙と涕の違い
・五行におけるナミダの分類
・肺金の役割