胃弱(胃のもたれ・胸やけ)

胃弱とは何か ー 原因と東洋医学による治療法

胃弱(胃のもたれ・胸やけ)

「少し食べただけですぐにお腹がいっぱいになる…」
「食後にいつも胃がもたれたり、胸やけがしたりする…」
「みぞおちのあたりが、いつも重苦しく不快…」

このような胃弱いじゃくの症状、あなたも経験していませんか? 胃弱は正式な病名ではありませんが、胃の神経症や、胃の緊張が低下する胃アトニー(無力症)、胃が正常な位置より垂れ下がる胃下垂症いかすいしょうなどをひっくるめた、つらい消化器症状の総称です。

この記事では、胃弱の様々な原因とその症状、そして東洋医学に基づく鍼灸治療がどのように根本的な体質改善を目指すのか、詳しく解説していきます。

【目次】

  1. あなたの胃弱はどのタイプ?~原因と主な症状~
    • タイプ1:ストレスが原因の「胃の神経症」
    • タイプ2:体質が原因の「胃アトニー」「胃下垂症」
    • なぜ市販薬では根本改善が難しいのか?
  2. 胃弱に対する鍼灸治療
  3. ご家庭でできる!胃弱改善のためのリハビリとセルフケア

1.あなたの胃弱はどのタイプ?~その原因と主な症状~

タイプ1:ストレスが原因の「胃の神経症」

胃の調子が悪い男性

胃は非常にストレスの影響を受けやすい臓器です。 仕事のプレッシャーや人間関係の悩み、環境の変化といった精神的な要因によって自律神経が乱れ、胃の働きが過敏になったり、逆に鈍くなったりする状態が「胃の神経症」です。ストレスの多い現代社会では、このタイプの胃弱に悩まされる方が非常に多くなっています。

タイプ2:体質が原因の「胃アトニー」「胃下垂症」

こちらは、生まれつきの体質が大きく関わっています。

  • 胃アトニー(無力症)
    • 胃の筋肉に力がなく、ぜん動運動(食べ物を腸へ送り出す動き)が弱い状態です。
    • 症状
      少し食べただけでも満腹感があり、食べ物がいつまでも胃に溜まっているような胃もたれ胸やけげっぷなどが起こりやすくなります。
    • なりやすい方
      生まれつき筋肉の発育が比較的弱く、痩せていて華奢な体型(アトニー体質)の方に多く見られます。
  • 胃下垂症いかすいしょう
    • 胃アトニーがさらに進行した状態とも考えられます。胃を支える筋肉や脂肪が少ないため、胃が正常な位置よりも垂れ下がってしまいます。
    • 症状
      胃アトニーの症状に加え、みぞおちからおへそにかけての何とも言えない重苦しさや、押されるような不快感食欲不振などが特徴です。
    • 胃下垂は、腸や腎臓など、他の内臓の下垂を伴うことも少なくありません。
    • なりやすい方
      痩せ型の方のほか、病気などで全身が衰弱している方や、妊娠・分娩を繰り返して腹壁の筋肉が緩んだ女性にも見られます。

なぜ市販薬では根本改善が難しいのか?

これらの胃弱の症状は、その多くが慢性的かつ体質的なものです。 そのため、一時的に消化を助ける薬や、痛みを抑える薬などでは、その場は楽になっても、根本的な解決には至らないケースが少なくありません。

身体全体の調子を整え、胃が本来持つ機能を活発化させるには、東洋医学の視点に基づいた体質改善のアプローチが非常に有効です。

2.胃弱に対する鍼灸治療

鍼灸が胃弱に効果的な理由

東洋医学では、口から入った飲食物を消化し、エネルギーに変える「脾胃ひい」の働きを非常に重視します。鍼灸治療は、この脾胃の機能を高め、胃弱の根本改善を目指します。

  • 消化器機能の調整
    胃のぜん動運動を正常化し、胃液の分泌を促すことで、胃もたれや胸やけを改善します。
  • 自律神経のバランス調整
    ストレスによる胃の不調(胃の神経症)に対し、自律神経のバランスを整え、胃の過剰な緊張や機能低下を和らげます。
  • 血行促進
    腹部や背中のツボを刺激することで、胃腸への血流を改善し、働きを活発にします。
  • 体力・気力の向上
    消化吸収機能が高まることで、全身に栄養が行き渡り、疲れやすさや倦怠感の改善にも繋がります。

症状緩和に効果が期待できる主要なツボの例

胃弱の症状や体質に合わせて、以下のツボを中心に施術します。

腹部 「巨闕こけつ」、「期門きもん」、「中脘ちゅうかん
   「天枢てんすう」、「肓兪こうゆ
背部 「胆兪たんゆ」、「脾兪ひゆ」、「胃兪いゆ
手部 「手三里てさんり
足部 「足三里あしさんり」、「梁丘りょうきゅう

具体的な鍼灸治療法(お灸を中心とした施術)

胃弱の治療には、身体を芯から温め、内臓の働きを高めるお灸(灸治療)が非常に効果的です。

  1. まず、上記で挙げた背中やお腹、手足のツボの中から、患者様の状態に最も合ったポイントを選びます。
  2. 選んだツボに、1カ所につき3~5壮程度、心地よい温熱刺激を与えます。
  3. この治療を、例えば3~5週間ほど継続することで、胃の機能が徐々に活発になり、胸やけや胃もたれといった不快な症状の解消が期待できます。
  4. 特に胸やけに悩まされる場合は、腰にある「三焦兪さんしょうゆ」、「大腸兪だいちょうゆ」を中心に5~7壮のお灸をすると、さらに効果的な場合があります。腹部では「巨闕」、「中脘」にもお灸をします。
  5. 消化不良を取り除きたい場合は、足の「梁丘」、「足三里」を刺激します。また、胃の不快症状全般には、腕にある「手三里」の刺激が効果的です。「手三里」は、あらゆる胃の病気によく効く名穴として知られています。

3.ご家庭でできる!胃弱改善のためのリハビリとセルフケア

鍼灸治療と合わせて、ご家庭でもできるケアや生活習慣の見直しを行うことが、胃弱体質の根本改善には不可欠です。

  • 体幹トレーニングでインナーマッスルを鍛える
    胃下垂などは、内臓を支える腹部の筋肉(インナーマッスル)の弱さも一因です。無理のない範囲での体幹トレーニングなどで、内臓を正しい位置に保つ力をつけましょう。
  • 食事の摂り方の工夫(特に胃アトニーの方)
    一度にたくさん食べると胃に負担がかかります。食事を一度に大量に摂らず、数回に分けて少しずつ食べるようにしましょう。
  • 食後の休息姿勢
    食後は、身体の右半身を下にして横になって休むのが良いとされています。胃の出口(幽門)が十二指腸に繋がりやすくなり、食べ物の排出を助けると考えられています。
  • 腹部マッサージ
    みぞおちとおへその中間にある「中脘」というツボを優しく指圧した後、おへそを中心に時計回りに円を描くようにマッサージするのも、胃腸の働きを助けるのに効果的です。毎日3分程度、続けてみましょう。

ひごころ治療院では、あなたの症状と体質に合わせた鍼灸治療はもちろん、このような日常生活でのアドバイスも丁寧に行い、つらい胃弱からの解放をサポートいたします。

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