三叉神経痛 ー 原因、症状からセルフケアまで
三叉神経痛 は、顔面の中でも特に激しい痛みを引き起こす神経の病気です。まるで稲妻が走るような、あるいはナイフで刺されるような痛みが、数秒から数分間、繰り返し起こることが特徴です。この辛い痛みから解放されるため、近年注目を集めているのが鍼灸治療です。
【目次】
1.三叉神経痛 とは何か
2.鍼灸による三叉神経痛治療
・主要なツボ
・治療法
・治療の注意点
3.三叉神経痛の改善に向けた生活習慣
4.後遺症と慢性痛の対処法
5.三叉神経痛の予防策
三叉神経痛 とは何か
中年の、それも女性に多く見られる症状に、俗に顔面神経痛といわれる三叉神経痛があります。
痛みは頭の下から3分の2、特に右側走ることが多く、ときには額や目の周囲にも起こります。痛みが激しいと、頬から上あごまで痛み、ときには、後頭部から肩にかけて痛みが広がります。
このような発作は繰り返し起こりますが、痛みは発作が止まれば去り、普段は健康そのものであります。
三叉神経痛の初期には、ただ顔の半分に何となく鈍痛を覚えるくらいですが、症状が進んでくると、体を動かすだけで、顔から後頭部、肩にかけて、電気をかけられたような、刺すような、切るような、焼けるような痛みが起こり、口もきけず、食事もとれないといった状態になります。

痛みの発作は数分から数十分でおさまりますが、一度起こると再発しやすく、悪化すると夜も寝られなくなるので、常に不安感に襲われ、神経過敏になり、疲れ果ててしまうのがこの病気の特徴です。
三叉神経は顔の左右にあって、それぞれが三つの枝に分かれています。この神経が侵されると、顔の各部分に激しい痛みを起こします。
第1枝は、額、眉間、目、鼻筋、第2枝は、頬から上あご、第3枝は、下あご、舌、耳、こめかみを中心に分布しています。したがって、どれが異常をきたしたかによって、痛む領域が違ってきますが、一番多いのは第3枝の痛みであります。
三叉神経痛の発症メカニズム
三叉神経痛の明確な発症メカニズムはまだ完全には解明されていませんが、多くの場合、血管が三叉神経の根元を圧迫することが原因と考えられています。加齢に伴う血管の変化や、まれに腫瘍などが神経を圧迫することもあります。また、ウイルス感染や多発性硬化症などの病気が原因となることもあります(症候性三叉神経痛)。
鍼灸による三叉神経痛治療
鍼灸治療は、三叉神経痛の痛みを緩和する有効な手段の一つとして注目されています。細い鍼を経穴(ツボ)に刺したり、艾を燃やして温熱刺激を与えたりすることで、神経の興奮を鎮め、筋肉の緊張を緩め、血流を改善する効果が期待できます。
鍼治療の効果と科学的根拠
鍼治療の効果については、近年科学的な研究も進められています。痛みを伝える神経経路を遮断したり、脳内で痛みを抑制する物質の分泌を促したりするメカニズムが示唆されています。また、筋肉の緊張緩和や血行促進作用により、神経への圧迫を軽減する可能性も考えられています。ただし、三叉神経痛に対する鍼治療の科学的根拠はまだ十分とは言えず、さらなる研究が期待されています。
主要なツボ
などを用います。
治療法
最初にどの枝の痛みかを調べます。
「睛明」または「攅竹」を軽く触れて激しい痛みであれば第1枝、「四白」に痛みがあれば第2枝、「下関」に痛みがあれば第3枝の神経痛です。
痛みで触れても激しい痛みを起こし、顔も洗えないといった症状のときには、まず後ろ首の治療を先に行ないます。
「天柱」、「風池」、「風門」、「肩井」などを刺激して、首や肩、背中の筋肉の緊張を緩めます。この刺激の効果で、顔に指が触れられるようになったら、次に顔の治療に移ります。
・第1枝に痛みがある場合
「睛明」、「攅竹」、「陽白」、「神庭」を刺激します。眉から髪の生え際、前頭筋のマッサージを行います。額の中心から耳の方向に、眉と並行に両手の親指を使って軽擦をして、そのあと同じ経路を親指で指圧します。これらは、前頭部、前額部、上まぶた、鼻などの痛みをとるのに有効です。
・第2枝に痛みがある場合
「四白」、「巨髎」、「地倉」を刺激します。「四白」は神経の枝が皮膚の下に出ていますのでよく刺激します。このあと、目頭から耳までと、目頭から唇の端まで、親指でくるくる回しながらマッサージをします。これらは、下まぶた、頬、上唇、上歯などに起こる痛みを緩和します。
・第3枝に痛みがある場合
「下関」、「顴髎」、「頬車」を刺激します。さらに、「大迎」、「翳風」、「天鼎」を合わせて刺激しますと効果があります。これらは、側頭部、耳の前、下唇、下歯の痛みに効果的です。
いずれの場合も、痛みを軽減する目的の「合谷」の処置をします。
三叉神経痛が重症である場合は、鍼治療が効果を示します。
治療の注意点
三叉神経痛の鍼灸治療は、神経の興奮を抑えることが目的です。マッサージをする場合は、強めに圧を加えます。また、治療期間中は、精神疲労を避け、規則正しい生活をするようにします。
三叉神経痛の改善に向けた生活習慣
日常生活で気をつけるべきこと
三叉神経痛の痛みを誘発する可能性のある日常生活の動作には注意が必要です。冷たい風に当たる、急な温度変化、硬いものを噛む、顔を強く洗う、髭剃り、歯磨きなどがきっかけになることがあります。これらの誘因をできるだけ避け、穏やかな生活を送ることが大切です。
運動とストレッチの重要性
適度な運動やストレッチは、全身の血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる効果があります。これにより、三叉神経周囲の血流が改善し、神経への圧迫を軽減する可能性があります。ただし、激しい運動は痛みを誘発する可能性もあるため、ウォーキングや軽いストレッチなど、無理のない範囲で行うようにしましょう。
ストレス管理とリラクゼーション
ストレスは、自律神経のバランスを乱し、痛みを増強させる可能性があります。十分な睡眠、趣味の時間を持つ、瞑想や深呼吸などのリラクゼーション法を取り入れるなど、日頃からストレスを溜め込まないように工夫することが大切です。
後遺症と慢性痛の対処法
三叉神経痛の後遺症とは
三叉神経痛の治療後にも、顔面の感覚異常(しびれ、麻痺など)や、慢性的な鈍痛が残ることがあります。これは、神経へのダメージや手術の影響などが考えられます。
後遺症を緩和するための治療法
後遺症に対する治療法は、症状によって異なります。鍼灸治療は、感覚異常の改善や慢性的な痛みの緩和に有効な場合があります。神経の回復を促したり、周囲の筋肉の緊張を和らげたりすることで、症状の軽減を目指します。
慢性痛との向き合い方
慢性的な痛みと向き合うためには、痛みをコントロールするための様々な方法を試みることが重要です。薬物療法、神経ブロック、リハビリテーション、心理療法、そして鍼灸治療など、多角的なアプローチが有効となることがあります。焦らず、自分に合った方法を見つけていくことが大切です。
三叉神経痛の予防策
早期発見と対処法
三叉神経痛の初期症状に気づいたら、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。早期に対処することで、症状の悪化を防ぎ、慢性化のリスクを減らすことができます。
生活習慣による予防法
日常生活で痛みを誘発する要因を避けることが、三叉神経痛の予防につながります。急な温度変化を避けたり、冷たい風に直接当たらないようにしたり、硬いものを避けたりするなど、日頃から注意を払いましょう。
食事と健康管理の重要性
バランスの取れた食事は、神経や血管の健康維持に繋がり、三叉神経痛の予防にも役立ちます。また、適度な運動や質の高い睡眠、ストレス管理なども、全身の健康状態を良好に保ち、三叉神経痛の発症リスクを低減する可能性があります。
顔面 「四白」、「巨髎」、「地倉」
「陽白」、「下関」、「頬車」
「睛明」、「攅竹」
横首 「翳風」、「大迎」、「天鼎」
手部 「合谷」