斜頸

斜頸の原因と症状 ー 早期診断と鍼灸治療によるアプローチ

斜頸

「なんだか、うちの子の首がいつも同じ方向に傾いている気がする…」
「反対側を向かせようとしても、嫌がったり、すぐ元に戻ってしまったりする…」

大切なお子様の斜頸しゃけいは、保護者の方にとって大きな心配事の一つです。

斜頸とは、様々な原因によって、首が片側に斜めに傾いたり、ねじれたりした状態を指します。放置するとお顔の形の歪みに繋がることもあるため、早期の発見と適切な対応が非常に大切です。

この記事では、斜頸の主な種類とその原因、そして東洋医学に基づく鍼灸治療がどのように回復をサポートできるのかを分かりやすく解説します。

【目次】

  1. 斜頸とは?~その原因と主な症状~
    • 斜頸の主な種類(筋性・骨性・神経性・習慣性)
    • 特に注意したい乳児の斜頸
    • 【重要】 まずは専門医による正確な診断を
  2. 斜頸に対する鍼灸治療
  3. ご家庭でできる予防と対策

1.斜頸とは?~その原因と主な症状~

斜頸の女性

現在でも、小児の斜頸で整形外科を訪れるお子様の数は決して少なくありません。斜頸には、その原因によっていくつかの種類があります。

斜頸の主な種類(筋性・骨性・神経性・習慣性)

  • 筋性斜頸きんせいしゃけい
    • 最も多いタイプです。分娩時の影響などにより、首の横にある胸鎖乳突筋きょうさにゅうとつきんという太い筋肉が部分的に損傷・出血し、その治癒過程で硬く短縮してしまうことが主な原因と考えられています。一般的には原因不明の先天性疾患として扱われることも多いですが、これを放置すると顔の形まで歪んでしまう可能性があるため、早期の治療が非常に重要です。
  • 骨性斜頸こっせいしゃけい
    • 生まれつき首の骨(頚椎)の形に異常があったり、複数の骨がくっついていたり(癒合)することが原因です。この場合は、まず整形外科など専門医による正確な診断が不可欠です。
  • 神経性斜頸しんけいせいしゃけい
    • 胸鎖乳突筋を支配する神経の麻痺やけいれんによって起こります。また、視力や聴力に左右差があるため、それを補おうとして無意識に首を傾ける(眼性斜頸・耳性斜頸)こともあります。年長児に多く、俗にいう「寝違え」もこの一種に含まれることがありますが、なかなか頑固な場合もあります。
  • 習慣性斜頸しゅうかんせいしゃけい
    • 特に乳児期において、いつも同じ向きで寝かせつける癖があると、まだ柔らかい頭蓋骨の形が歪み、赤ちゃんが向きやすい方向ばかりを向くようになることで起こります。一度頭蓋骨の歪みが固定されてしまうと、反対側を向かせてもすぐに元の位置に戻ってしまい、なかなか矯正が難しくなります。

【重要】まずは専門医による正確な診断を

お子様の首の傾きに気づいたら、自己判断せずに、まずは小児科整形外科を受診し、斜頸の原因が何であるかを正確に診断してもらうことが最も重要です。 骨性のものや、他の疾患が関わっている場合は、専門医による治療が必要となります。 その上で、特に筋性斜頸や習慣性斜頸、あるいは寝違えのような神経性斜頸の回復においては、鍼灸治療徒手矯正としゅきょうせいといったアプローチが大きな役割を担います。

2.斜頸に対する鍼灸治療

鍼灸治療・徒手矯正の役割

ひごころ治療院では、斜頸と診断されたお子様に対し、主に以下の目的でアプローチします。

  • 筋緊張の緩和
    硬くなった首の筋肉(特に胸鎖乳突筋)を、刺さない鍼(小児はり)や優しいお灸、マッサージで丁寧に緩めます。
  • 血行促進
    首周りの血流を改善し、筋肉や組織の回復をサポートします。
  • 神経機能の調整
    神経の過敏な状態を和らげ、身体のバランスを整えます。
  • 可動域の改善
    専門家による安全な徒手矯正を組み合わせることで、首の動きをスムーズにします。

斜頸ケアに効果が期待できる主要なツボの例

斜頸の治療では、以下のツボを中心に、お子様の状態に合わせて優しく刺激します。

首   「天柱てんちゅう」、「風池ふうち」、「翳風えいふう
のど  「天鼎てんてい」、「気舎きしゃ
背中  「大椎だいつい」、「肩井けんせい

具体的な治療の流れ

  1. 筋緊張の緩和(鍼灸・マッサージ)
    まず、短縮して硬くなっている胸鎖乳突筋の緊張をとるため、「天柱」、「風池」、「翳風」といった後ろ首のツボや、「天鼎」、「気舎」、「天突てんとつ」といった首の前側のツボに、小児はり(刺さない鍼)や優しいお灸、マッサージでアプローチします。
    • 横首の真ん中のコリについて
      後ろ首の僧帽筋と横首の胸鎖乳突筋の間には、斜角筋や頭板状筋といった筋肉があり、姿勢によってはここに特に強いこりが現れることがあります。このような場合は、ぼんのくぼから耳の後ろを丁寧に触診し、硬直している部分を見つけ、「天柱」、「風池」などを中心に処置することで血行を促進し、筋肉内の老廃物の除去を促します。施術前に蒸しタオルで温めると一層効果的です。
  2. 徒手矯正(専門家による)
    筋肉の緊張が和らいだ後、必要に応じて、専門家による安全な徒手矯正を行います。例えば、施術者が赤ちゃんの頭を優しく支え、可動域を確認しながら、ゆっくりとストレッチを加えるなど、決して無理のない範囲で行います。
  3. 再調整とセルフケア指導
    徒手矯正が終わったら、再び上記のツボ周辺を軽くマッサージして状態を整えます。ご家庭でできるケア方法や注意点(寝かせ方、授乳の向きなど)もアドバイスいたします。

【その他のアプローチ】
上記のツボ以外にも、お子様の体質や全身の状態を考慮し、腹部の「中脘ちゅうかん」、「天枢てんすう」や、背部の「肺兪はいゆ」、「至陽しよう」、「腎兪じんゆ」といったツボを用いることで、より根本的な体質改善を目指すこともあります。

治療を受ける上での注意点

  • 治療期間の目安
    症状の程度や原因によりますが、継続的な治療が必要です。もし、3ヶ月以上治療を続けても改善が見られない場合は、再度医師と相談し、外科的な処置なども含めて治療方針を再検討する必要があります。
  • ご家庭でのサポート(カラー固定など)
    治療効果を高め、首を正しい位置に保つために、ご家庭でボール紙を綿とガーゼで包んだような簡易的なカラー(カラー型副子包帯)を作成し、患側(傾いている側と反対側)が高くなるように首に巻いていただくよう、指導することもあります。

3.ご家庭でできる予防と対策

特に、特定の病気がない習慣性の斜頸の予防や、治療効果を高めるためには、ご家庭での日々のケアが非常に重要です。

  • 寝かせ方の工夫
    いつも同じ向きで寝かせていると、頭の形が歪み、向き癖がついてしまいます。赤ちゃんが寝ている間に、時々頭の向きを優しく変えてあげましょう。背中に丸めたタオルなどを挟んで、向きを調整するのも良い方法です。
  • 授乳や話しかけの向きを変える
    授乳の際に、左右交互の向きで行うことを心がけましょう。また、赤ちゃんに話しかけたり、おもちゃを見せたりする際に、赤ちゃんが向きにくい方向からアプローチすることで、自然に首を動かす練習になります。
  • 早期に専門家へ相談
    「おかしいな?」と思ったら、自己判断せずに、まずは小児科や小児整形外科を受診しましょう。その上で、当院のような鍼灸治療を検討される場合は、医師の診断内容などもお聞かせいただけると、より的確なアプローチが可能になります。

ひごころ治療院では、大切なお子様の斜頸のお悩みに真摯に向き合い、保護者の方と協力しながら、健やかな成長をサポートさせていただきます。

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