のどの痛み を緩和する鍼灸の効果ー原因と症状
のどの痛みは、日常生活でよくある不快な症状で、主な原因は風邪やインフルエンザなどのウイルス感染です。これらはのどの粘膜を炎症させ、痛みや咳を引き起こします。しかし、ストレスによる首や肩の筋肉の緊張も、のど周辺を圧迫して痛みを招くことがあります。加えて、乾燥した空気や大気汚染物質、タバコの煙といった環境要因も、のどの粘膜を刺激し、痛みの原因となることがあります。
【目次】
1.のどの痛み の原因と症状
2.のどの痛み の鍼灸治療
・主要なツボ
・治療法
・治療中の注意点
・声がかれる場合に
のどの痛み の原因と症状
のどの痛み はいろいろな原因で起こります。いわゆる〝のど風邪〟の状態になるのが急性咽頭炎であります。
風邪の症状の一つで、咽頭の乾燥感、異常感、空咳などがあり、ものを飲み込むときに痛みを覚えることもあります。乾燥した空気を吸う、強い酒の飲みすぎ、タバコの吸い過ぎでも起こります。
咽頭炎の場合は、喉頭炎も引き続き起こるか、もしくは同時に起こります。この場合は声がかすれたり、出なくなったりするような症状も加わります。慢性になりますと、喉頭部に異物感、かゆい感じがします。
一方、のどの痛みが特に強くなるのは急性扁桃炎であります。高熱が出て、寒気がして、ふるえがきて、頭痛、関節痛も強く、全身の倦怠感はあります。
つばを飲み込むときにのどが痛くなるのも特徴であります。急性扁桃炎をしばしば繰り返していると、慢性扁桃炎に移行する度合いも高くなります。しかも腎炎やリウマチ熱、関節リウマチ、心臓疾患も併発しやすいので、注意する必要があります。
このほか、のどが痛くなる病気には、喉頭結核、ジフテリア、喉頭がんなどもあります。なかには、むち打ち症など首の異常が原因のものや、三叉神経痛、自律神経失調症によるものもあります。
のどの痛み の鍼灸治療
鍼灸治療によって効果を示すのどの痛みは、自律神経失調が原因である場合、とくに心身症や神経症などからくるものに効果があります。また、扁桃炎などの炎症性のものは、治療でのどの痛みが軽減し、全身症状もよくなります。
主要なツボ
などがポイントとなります。
治療法
治療はまず首の緊張をとるために、あおむけに寝た状態で行います。このとき、高い枕は外して、十分に首をリラックスさせることがポイントであります。
「天突」、「気舎」、「水突」、「人迎」などのツボを刺激します。特に「天突」は、扁桃炎でのどの腫れが悪化し、のどがふさがるような場合によく効くツボで、昔はのどが痛いというと、この「天突」と「合谷」に鍼を刺して痛みをとりました。とりわけ、三稜鍼という先が三角形に尖った鍼で少し瀉血しますと、非常によく効きます。
のどのツボを治療したら、「天宗」、「天鼎」、「翳風」を刺激します。
さらに、「風池」、「天柱」、背中の「天髎」、「肩井」、「身柱」、最後に手の「合谷」、「曲池」、「孔最」を刺激します。
慢性の扁桃炎に悩んでいる人には、「合谷」と「孔最」に鍼灸治療を行いますと、非常に有効であります。
ところで、更年期前後の女性に多いですが、「のどに異物感がある」、「ものが飲みにくい」という症状を訴えることがあります。これは神経症によるものであります。
この場合は、「百会」、「天柱」、「風池」をしっかり刺激し、「天突」を刺激します。次に「膻中」、「合谷」、「尺沢」、「三陰交」を刺激します。いずれのツボも神経症状をやわらげる働きがあります。
治療中の注意点
鍼灸治療に加えて、自宅で行える養生法も、のどの痛みの緩和や予防に役立ちます。
のどの痛みを和らげる食事
消化の良い温かいものを中心に摂り、香辛料などの刺激物は控えましょう。のどを潤す効果のあるはちみつや大根、免疫力向上に役立つビタミンCを豊富に含む果物や野菜などを積極的に摂るのも良いでしょう。
ストレス緩和のための生活習慣
免疫力を低下させるため、ストレス緩和のための生活習慣を心がけることが大切です。適度な運動を取り入れたり、リラックスできる時間を作ったり、質の高い睡眠を確保したりすることが重要です。
簡単なセルフケア法
こまめなうがいが効果的です。うがい薬だけでなく、生理食塩水や緑茶なども利用できます。室内の乾燥を防ぐために加湿をしたり、首を温めたりすることも、のどの痛みを和らげるのに役立ちます。
また、手の甲の「合谷」、肘の内側の「尺沢」、首の正面の「天突」といったツボを優しく指圧したり、温めたりするのも良いでしょう。
声がかれる場合に
声がれは、風邪の炎症によって出た分泌物や、声帯の腫れなどで起こることが多いかと思います。
声がれの時は、のどぼとけの外側の「水突」が特効穴です。このツボを指ではさむようにして指圧します。軽く刺激することがコツです。家庭療法では、楊枝を20本ほど束ねて、軽くポンポンと叩くように刺激します。
また、声は肺と深い関係のあることから、背中の「肺兪」、胸の「中府」、腕の「孔最」を指圧して、肺の機能を整えます。最後に、お腹の「肓兪」を刺激して、体の活力を高めます。
声がれの場合、治療とあわせて声を使わないで沈黙、うがいを行うことも重要であります。
のど 「天突」、「気舎」、「水突」
「人迎」
くび 「天窓」、「天鼎」、「風池」
耳 「翳風」
背中 「天髎」、「肩井」、「身柱」
手 「合谷」、「曲池」、「孔最」