肩の腱炎の原因 ー対処法と鍼灸
症状
野球などをして、疲労が原因となって起こる肩の腱の炎症をいいます。
上腕には、前側にひじを曲げるのに働く上腕二頭筋という筋肉があり、後ろ側にはひじを伸ばす働きをする上腕三頭筋という筋肉があります。この上腕の前後にある筋肉の腱が、肩の部分で炎症を起こします。
ボールを投げる動作は、投げる前の腕の巻き上げ動作であるワインドアップ、腕を前方へ投げ出すフォワードモーション、投げ出された腕にブレーキをかけるフォロースルーの三つに分けられます。
このうちワインドモーションでは、上腕二頭筋が収縮しながら引っ張られるので、もしここで痛みが出るとしたら上腕二頭筋の腱炎でと考えられます。フォワードモーションでは、ひじを思いっきり伸ばすので上腕三頭筋が強く働き、フォロースルーでも上腕三頭筋が使われます。この二つの動作で痛みが起こるとすれば、上腕三頭筋の腱炎だと考えられます。
故障しやすい投手の肩を「ガラスの肩」と呼んだりするほど、肩ではトラブルが起こしやすい部位です。肩関節の、上腕骨、鎖骨、肩甲骨という三つの骨でできている構造は複雑で可動域が広いです。しかも、その動きはほとんど筋肉に支えられています。そのために肩にある筋肉の腱はトラブルを起こしやすく、また腱がトラブルを起こすと、肩関節の動きは非常に制限されます。
鍼灸治療
主要なツボ
肩の前外側では、手の陽明大腸経の「臂臑」、「肩髃」、「巨骨」
肩の後外側では、手の少陽三焦経の「臑会」、「肩髎」、「天髎」
手の太陽小腸経の「肩貞」、「臑兪」、「天宗」、「秉風」
を使用します。
その他、ツボではありませんが、上腕骨の関節間溝も使用します。
治療法
疲労が原因なので、野球肩の症状が出たらまずは肩を休めることが大切になります。炎症が完全に治らないうちに運動したときは、直後に30分ほど冷やすことで疲労回復をさせます。ひじの炎症は冷やすことはしませんが、肩は筋肉がたくさんついているので、冷やしても関節まで冷えることはありません。むしろ、筋肉を短時間で冷やしますと、いったん収縮した血管が拡張して、血液の循環はよくなります。このあとに鍼灸治療を行います。
肩の前外側では、「臂臑」と「肩髃」、あるいは「臂臑」と「巨骨」の間にパルス通電をします。または、結節間溝に行うこともあります。結節間溝とは、検査する人が親指の腹を患者の肩に当てて、患者にひじを曲げ伸ばしさせたときに、腱の動きが親指に触れるところであります。ここに痛みがあるときはこの部分と、上腕二頭筋の筋腹とにパルス通電をかけます。
肩の後外側では、「臑会」と「肩髎」が上腕三頭筋の近くにあるのでこの二つにパルス通電をします。あるいは、「臑会」と「天髎」の間でもいいでしょう。前外側と同様に結節間溝を親指で探り、そこに痛みがあるなら、痛みの場所と上腕三頭筋の筋腹を結んでパルス通電を行ってもいいでしょう。結節間溝と「臑会」でもいいでしょう。
そして、肩の前にも後ろにも共通するところとして、上腕骨の棘上筋と棘下筋に刺激を加えてもいいでしょう。
上腕骨はいくつかの筋肉によって肩のほうへ吊り下げられるようにして肩関節にくっついていますが、それらの筋肉の中で特に重要な働きをしているのが棘上筋と棘下筋であります。この二つの筋肉が正常に働いていれば肩関節にはすき間はできませんが、二つの筋肉が疲労して伸びきった状態になりますと、すき間ができます。そこで、上腕骨を肩関節にしっかりつけるために、この二つの筋肉を治療することも大切になります。
棘上筋は、「秉風」と「肩髃」か「巨骨」、棘下筋は「肩貞」と「臑会」か「天宗」にパルス通電をします。ここに痛みがない場合には、置鍼か単刺術で筋肉のゆるみを改善します。
メモ
頸頚腕症候群からきているものかどうかも確認します。
野球肩の家庭での養生
肩は冷やすのはいけませんが、冷刺激は刺激後に皮膚温が上がるので、温刺激と同じ効果があります。氷をガーゼなどで包み、氷の角をツボに当てて小さな円を描くように力を加えます。1ヵ所に3分以内を目安に行ってください。
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