腕のしびれ

腕のしびれ(神経麻痺) ー その原因と鍼灸による対策

腕のしびれ

「腕や指先に、ピリピリとしたしびれが走る…」
「原因不明の腕のだるさや感覚の鈍さが取れない…」
「スマホを長時間使うと、腕がしびれてくる…」

そのつらい腕のしびれ、もしかしたら首や肩、あるいは日常生活の癖が原因かもしれません。

腕のしびれは、首や肩、肘、手首などでの神経圧迫(頸椎椎間板ヘルニア、胸郭出口症候群、手根管症候群など)、長時間の同一姿勢や冷えによる血行不良、そして筋肉疲労の蓄積など、様々な要因によって生じます。

この記事では、腕のしびれがなぜ起こるのか、その原因と症状、そして東洋医学に基づく鍼灸治療によるアプローチや、ご自身でできるセルフケアについて詳しく解説します。

【目次】

  1. 腕のしびれとは?~その原因と様々な症状~
    • 腕のしびれを引き起こす主な原因
    • 注意すべき症状と鑑別(痛みを伴うケース・麻痺を感じるケース)
  2. 現代病?スマホ使用と腕のしびれの関係
  3. 腕のしびれに対する鍼灸治療
  4. 回復をサポートするリハビリと予防法
    • 自宅でできるリハビリ運動
    • 予防のための生活習慣と血行改善

1.腕のしびれとは?~その原因と様々な症状~

腕のしびれを引き起こす主な原因

手の痺れる女性

登山などで重い荷物を長時間背負い続けたり、過度な肉体労働をしたりした後に、腕がしびれて動かせなくなることがあります。 これは、首の付け根から腕の付け根、わきの下、さらに腕へ向かう神経の束(腕神経叢わんしんけいそう)が、通り道の途中で強く圧迫されたために起こる神経麻痺の一種です。

  • 上位型麻痺
    腕の付け根や肩、肩甲帯、上腕の筋肉が麻痺し、肩や腕を上げたり曲げたりできなくなる場合があります。
  • 下位型麻痺
    肘から手にかけての筋肉が麻痺し、手首や指が動かしにくくなる場合があります。

注意すべき症状と鑑別(痛みを伴うケース・麻痺を感じるケース)

多くの場合、腕のしびれは神経が変性するほどの重症ではないため、適切な対処で改善が期待できます。しかし、しびれの背景には注意すべき病気が隠れている可能性もあります。

  • 腕や手全体に及ぶしびれ
    脊髄の病気(頚椎症性脊髄症など)の可能性があります。
  • 腕や手の内側、または外側だけにしびれがある
    糖尿病や動脈硬化、高血圧症など、全身性の疾患が影響していることがあります。
  • 片足全体までしびれが及ぶ場合
    脳の障害(脳梗塞など)によるしびれの可能性も考えられます。
  • 痛みを伴うしびれのケース
    神経の圧迫や炎症が強い場合、しびれと共に痛みを感じることがあります。頸椎症性神経根症などが考えられます。
  • 麻痺を感じる時の注意点
    急に腕や手に力が入らなくなったり、感覚がなくなったりする麻痺を感じる場合は、脳梗塞などの重篤な疾患の可能性もあるため、すぐに医療機関を受診してください。
  • その他の異常感覚について
    しびれの他に、冷たい感じ(冷感)、焼けるような感じ(灼熱感)、針で刺すような痛み(チクチク感)などを感じることもあります。

上記のような症状が見られる場合は、自己判断せず、まずは整形外科神経内科といった専門の医療機関で検査を受け、正確な診断を得ることを強くお勧めします。

2.現代病?スマホ使用と腕のしびれの関係

近年、特に増えているのが、スマートフォンの長時間使用による腕のしびれです。

  • 長時間の使用による影響
    長時間同じ姿勢でスマホを操作し続けると、首や肩、腕の筋肉が常に緊張し、血行が悪くなります。これが神経を圧迫し、しびれを引き起こす原因となります。
  • 正しい姿勢でのスマホ操作
    スマホを使用する際は、背筋を伸ばし、画面をできるだけ目の高さに保つようにしましょう。肘を軽く曲げ、脇を締めすぎず、腕への負担を減らすことも大切です。
  • 疲労を避けるための工夫
    30分に1回程度は休憩を挟み、腕や肩を回すなどの軽いストレッチで筋肉をほぐしましょう。スマホの持ち方を変えたり、両手で操作したりするのも効果的です。

3.腕のしびれに対する鍼灸治療

鍼灸が腕のしびれに効果的な理由

東洋医学に基づく鍼灸治療は、筋肉の緊張をほぐし、血行を改善することで、腕のしびれの根本原因にアプローチします。

  • 筋緊張の緩和
    しびれの原因となっている首や肩、腕の凝り固まった筋肉に、鍼で直接刺激を与え、深部から緩めます。
  • 血行促進
    圧迫されていた神経や血管の周囲、血流が悪くなっている部位の循環を改善し、神経や組織に十分な酸素と栄養を供給します。
  • 神経機能の調整
    圧迫や炎症によって過敏になっている神経の興奮を鎮め、正常な感覚を取り戻すよう働きかけます。
  • 鎮痛効果
    しびれに伴う痛みを和らげる効果も期待できます。

症状緩和に効果が期待できる主要なツボの例

後ろ首 「大椎だいつい
肩部  「肩井けんせい」、「肩髎けんりょう
胸部  「雲門うんもん」、「中府ちゅうふ
背部  「天宗てんそう」、「腎兪じんゆ
腕部  「臂臑ひじゅ」、「少海しょうかい」、「尺沢しゃくたく
    「神門しんもん」、「太淵たいえん」、「曲池きょくち
    「陽池ようち

具体的な鍼灸治療の流れ

  1. 前処置(温熱療法)
    治療効果を高めるため、まず蒸しタオルか肩用のホットパックで、肩から腕全体を包み込み、15~20分くらいよく温めます。
  2. 局所へのアプローチ
    身体が温まったところで、まず後ろ首から肩先の経路、次に肩甲骨の内側の縁、さらに肩甲骨の上下の経路を刺激します。
  3. 腕へのアプローチ
    続いて、腕の付け根、力こぶの筋肉(二頭筋)、腕の背側の筋肉(三頭筋)、肘から親指側手首までの経路、前腕の親指側の柔らかい筋群の経路、前腕の手の甲側の筋群の経路、といったように、症状が出ているラインに沿って、上記のツボを中心に丁寧に刺激していきます。
  4. 仕上げの調整
    最後に、施術者が患者様の腕を軽く引きながら、軽く振るわせるような手技で、関節や筋肉の最終調整を行います。

【ポイント】 腕のしびれ、麻痺には低周波電気治療(パルス療法)温泉浴超短波などの物理療法を併用すると、効果が倍増することがあります。

4.回復をサポートするリハビリと予防法

自宅でできるリハビリ運動

腕のしびれや麻痺が長い間続くと、関節が硬くなって変形してしまうことがあります。それを防ぐため、痛みのない範囲で以下のようなリハビリ運動を行いましょう。

  • 肘の曲げ伸ばし運動
    各10回
  • 前腕を内側・外側にひねる運動
    各10回
  • 手首を手のひら側・手の甲側に曲げる運動
    各10回
  • 手首を親指側・小指側に曲げる運動
    各10回

予防のための生活習慣と血行改善

  • 運動習慣の重要性
    適度な運動は、全身の血行を促進し、筋肉の柔軟性を保つ効果があります。ウォーキングや水泳などの有酸素運動がおすすめです。
  • 姿勢の見直しについて
    正しい姿勢を心がけることで、首や肩への余計な負担を軽減し、神経圧迫や血行不良の予防につながります。
  • ストレス管理の方法
    ストレスは筋肉の緊張を引き起こし、しびれの原因となることがあります。リラックスできる時間を作ったり、趣味に没頭したりするなど、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。
  • 血流改善のための工夫
    • 適度な運動や入浴、マッサージなどで血流を改善しましょう。
    • 身体を締め付けすぎない服装を心がけることも大切です。
    • 深呼吸(特に腹式呼吸)は、自律神経を整え、血流を改善する効果が期待できます。
    • 栄養バランスのとり方
      バランスの取れた食事は、血管を健康に保ち、血流改善に繋がります。ビタミンB群やビタミンEなど、血行促進に役立つ栄養素を積極的に摂取しましょう。

ひごころ治療院では、あなたのつらい症状の原因を丁寧に見極め、最適な治療法とセルフケアをご提案します。長引く腕のしびれでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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