更年期障害 とは?男性と女性の理解
更年期障害 は、ホルモンバランスの変動を主な原因とし、自律神経の乱れや心理的な要因も複雑に絡み合って引き起こされると考えられています。その症状は多岐にわたり、個人差が大きいのが特徴です。
男性にも、加齢に伴い男性ホルモンであるテストステロンが徐々に低下することで、同様の症状が現れることがあり、「男性更年期障害(LOH症候群)」と呼ばれます。
【目次】
1.更年期障害の原因と症状
2.更年期障害の鍼灸治療
・主要なツボ
・治療法
・温冷交代浴
3.食べて改善
4.生活習慣と更年期障害の改善
5.更年期の心理的影響と対処法
6.医療機関とサポート体制
7.男女で違う更年期障害の体験
更年期障害の原因と症状
日本の女性の閉経年齢は平均50歳と言われ、その前後約10年間(40歳~55歳頃)を更年期と呼びます。この時期、卵巣機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲンなど)の分泌が減少することで、様々な心身の不調が現れることがあります。これが一般的に更年期障害と呼ばれる状態です。
主な症状としては、頭痛、頭重感、腰痛、肩こり、疲労感、動悸、息切れ、冷え、のぼせ、不眠などが挙げられます。更年期障害の主な原因は、加齢に伴うホルモン分泌の低下ですが、自律神経の乱れや心理的な要因も複雑に関与しています。特に、自律神経が不安定になりやすいタイプの女性は、更年期障害の症状が現れやすい傾向があります。
症状の現れ方や程度が人によって異なるのは、それぞれの女性が更年期を迎える際の精神状態や健康状態が深く影響するためです。そのため、更年期を心身ともに穏やかな状態で迎えることが、更年期障害の予防につながると言えるでしょう。
男性更年期障害の症状と特徴
男性更年期障害の主な症状としては、イライラしやすくなる、怒りっぽくなる(キレる)、疲労感が続く、性欲減退、勃起不全、集中力低下、不眠、憂うつ気分などが挙げられます。女性の更年期障害に比べ、精神的な症状が強く現れる傾向があると言われています。
女性と男性の更年期障害の違い
女性の更年期障害は、ホットフラッシュ(ほてり)、発汗、動悸、めまいなど血管運動神経系の症状が比較的多く見られるのに対し、男性の場合は性機能に関する症状や精神的な症状がより顕著に現れる傾向があります。また、女性は閉経という明確な節目があるのに対し、男性ホルモンの低下は緩やかに進行するため、症状が認識されにくいこともあります。
更年期障害の鍼灸治療
東洋医学では、女性の自律神経失調症に似た、月経やホルモンバランスの乱れに伴う様々な症状を「血の道症」と捉えます。これは、体内の気(エネルギー)と血(血液)の流れが滞ることで引き起こされると考えられています。また、脾(消化吸収に関わる)は血を調整し、肝(自律神経や感情に関わる)は血を貯蔵し、気の巡りをスムーズにする働きがあるとされています。
東洋医学の考えに基づき、更年期障害の治療では、全身のバランスを整えることを目的に、特に脾経や肝経のツボを中心に施術を行います。これらの経絡は、女性特有の体の変化に深く関わっていると考えられています。
主要なツボ
などが中心となります。
治療法
まず、うつ伏せの状態で、首の後ろの風池、天柱から、背中の「厥陰兪」、「心兪」、「肝兪」、「脾兪」、そして臀部の「次髎」、「胞肓」といったツボを刺激します。
次に、仰向けになり、肝経のラインにある「期門」、「章門」、腹部の「肓兪」、「気海」、「大巨」、「関元」などを刺激します。「期門」は第9肋骨の先端に位置して、ここから枝分かれして、12経脈の始まりである肺経に戻っていく道筋にあたる大切なツボであります。
足では、「血海」、「築賓」、「三陰交」、「復溜」、「太渓」などを刺激します。このうち「血海」と「三陰交」はともに脾経のツボで、婦人系疾患の名穴とされています。脾経は子宮や卵巣などの婦人科系統の臓器と関係の深い経路であります。したがって、「血海」を刺激しますと、子宮や卵巣に活力が与えられます。「三陰交」も昔から女三里といわれて、婦人病に特効のあるツボであります。しかも、脾経、肝経、腎経の三つの陰経が交わるところで、その価値は高いです。
その他の症状に合わせて、頭痛や頭重がひどい場合には頭頂部の「百会」、寝つきが悪い場合には背中の「膈兪」、足の冷えが気になる場合には足の「陰陵泉」といったツボを加えることもあります。
「肝兪」、「脾兪」、「腎兪」、「次髎」、「期門」、「章門」、「血海」、「三陰交」などを中心に、症状に合わせてツボを選び、気長に鍼灸治療を行うと非常に効果があります。灸治療を行う場合は、米粒大または半米粒大のもぐさを、1日に1回、1つのツボに3~5壮すえ、3週間継続した後、1週間休むサイクルを繰り返します。温熱感のある知熱灸も用いられます。
温冷交代浴
特に足の冷えが強く、のぼせの症状もある方には、温冷交代浴が有効です。40~42度の熱いお湯と、20度前後の冷たい水を入れた2つのバケツを用意し、ふくらはぎから下をまず熱いお湯に2分浸します。その後、冷水に20~30秒浸すのを3回繰り返し、最後は冷水で終えます。これを毎日続けることで、足の冷えが改善され、全身の体調が整うことが期待できます。入浴時には、足の裏にある「湧泉」というツボをよく揉むと良いでしょう。
食べて改善
更年期に伴うイライラやのぼせ、ホットフラッシュといった不快な症状は、女性ホルモンのバランスを整え、血や気の巡りを良くする食材を取り入れることで緩和が期待できます。
イライラを鎮める
玄米、小麦、アーモンド、セロリ、トマト、ピーマン、ユリネ、アサリ、牡蠣、シジミ、ウーロン茶、ジャスミン茶など
血液の循環を改善する
納豆、黒豆、栗、オクラ、タマネギ、ニラ、パセリ、ウナギ、サケ、サンマ、シシャモ、牛肉、酢、黒砂糖、紅花など
血を補う
黒ごま、黒豆、キクラゲ、ホウレンソウ、アワビ、イカ、タコ、ヒジキ、牛や鶏のレバー、鶏卵など
生活習慣と更年期障害の改善
食事と栄養:男性更年期に効く食べ物
バランスの取れた食事は、ホルモンバランスを整える上で非常に重要です。特に男性の場合、テストステロンの分泌を促す亜鉛を含む牡蠣や赤身の肉、抗酸化作用のある野菜や果物などを積極的に摂取することが推奨されます。
運動とストレス管理の重要性
適度な運動は、血行を促進し、ストレスを軽減する効果があります。ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動や、筋力トレーニングを取り入れることで、心身の健康維持に繋がります。また、自分に合ったストレス解消法を見つけることも重要です。
睡眠障害の対策と改善方法
更年期には睡眠障害に悩む方も多くいます。規則正しい睡眠習慣を心がけ、寝室の環境を整え、寝る前のカフェインやアルコールの摂取を控えるなどの対策が重要です。
更年期の心理的影響と対処法
うつや不安:心の問題に向き合う
更年期は、ホルモンバランスの変化だけでなく、環境の変化や将来への不安などから、うつや不安を感じやすくなる時期でもあります。
対処法:カウンセリングとサポート
精神的な辛さを感じた場合は、無理せず専門家(カウンセラーや精神科医)に相談することも有効な対処法の一つです。また、同じ悩みを抱える人たちのサポートグループに参加することも、心の支えになることがあります。
家族や友人の理解と支え
更年期を迎える本人だけでなく、家族や友人の理解と支えも非常に重要です。周囲の人が更年期について正しく理解し、寄り添う姿勢を持つことで、本人は安心して過ごすことができるでしょう。
医療機関とサポート体制
どの医療機関に相談する?
症状が辛い場合は、我慢せずに専門の医療機関に相談することが大切です。女性であれば婦人科、男性であれば泌尿器科や男性更年期外来などを受診しましょう。
専門家の助言と治療の流れ
医療機関では、症状や検査結果に基づいて、適切な治療法(薬物療法、ホルモン補充療法、漢方など)や生活指導が行われます。専門家の助言をしっかりと聞き、治療に取り組むことが大切です。
コミュニティやサポートグループの活用
地域には、更年期に関する情報交換や交流ができるコミュニティやサポートグループが存在する場合があります。同じ悩みを抱える仲間と話すことで、気持ちが楽になったり、新たな対処法が見つかったりすることもあります。
男女で違う更年期障害の体験
女性の声:体験談と悩み
女性の更年期障害の体験談を聞くと、ホットフラッシュの辛さ、気分の落ち込み、体調不良による日常生活への支障など、様々な悩みが語られます。
男性の声:体験談と挑戦
男性の更年期障害は、症状が曖昧で周囲に理解されにくいという悩みが多く聞かれます。性機能の低下や意欲の低下など、男性特有の悩みを抱えながらも、誰に相談して良いかわからないという声もあります。
お互いの理解を深めるために
男女ともに、更年期障害は誰にでも起こりうる自然な変化であることを理解し、お互いの体験や悩みに寄り添うことが大切です。正しい知識を持つことで、適切な対処法を見つけ、より快適な更年期を送ることができるでしょう。
後ろ首 「風池」、「天柱」
背中 「厥陰兪」、「心兪」、「肝兪」
「脾兪」
腰部 「腎兪」
臀部 「次髎」、「胞肓」
腹部 「肓兪」、「大巨」、「関元」
足部 「三陰交」、「太渓」、「血海」