テニスひじ(上腕骨外側上顆炎)

テニスひじ(上腕骨外側上顆炎)

テニスひじの原因
鍼灸で克服!
痛みを和らげ、快適な生活へ

「ドアノブを回すだけで、肘の外側が痛む…」
「重いフライパンを持つのがつらい…」
「テニスをしていないのに、

テニスひじと診断された…」

そのつらい肘の痛み、テニスひじ(上腕骨外側上顆炎)かもしれません。

テニスひじは、テニス愛好家だけでなく、家事や仕事で手首をよく使う方にも発症する、非常に身近な症状です。この記事では、テニスひじがなぜ起こるのか、その原因と症状、ご自身でできる簡単なセルフチェック法、そして東洋医学に基づく鍼灸治療によるアプローチについて詳しく解説します。

【目次】

  1. テニスひじとは?~その原因と主な症状~
    • 痛みのメカニズムと原因となる筋肉
    • テニスひじになりやすい日常動作
    • 【重要】 まずは専門医による診断を
    • ご自身でできるセルフチェックの目安
  2. テニスひじに対する鍼灸治療
  3. 治療を受ける上での注意点と関連症状

1.テニスひじとは?
~その原因と主な症状~

痛みのメカニズムと原因となる筋肉

肘を痛めた男性

テニスひじは、正式には「上腕骨外側上顆炎じょうわんこつがいそくじょうかえん」といい、主に手首を伸ばす(手の甲側に曲げる)働きをする筋肉の、肘への付着部で炎症が起こる状態を指します。

原因となるのは、主に「橈側手根伸筋とうそくしゅこんしんきん」という筋肉です。この筋肉は、上腕骨(腕の骨)の肘の外側から始まり、手首の関節を越えて、手の甲側の指の付け根あたりまで伸びています。 このように二つの関節をまたいでいるため、肘や手首を動かす様々な動作で酷使されやすく、特に筋肉が骨に付着する部分(筋と腱の移行部)で、微細な損傷や炎症といったトラブルが起こりやすいのです。

テニスひじになりやすい日常動作

肘や手首は日常の動作で非常によく使われるため、テニスに限らず、以下のような動作の繰り返しが原因で、しばしばテニスひじは起こります。

  • 家事
    水道の蛇口をひねる、ドアノブを回す、ぞうきんを絞る、重い鍋やフライパンを持つなど。
  • 仕事
    パソコンのキーボードやマウス操作、重い荷物を持つ、工具を使うなど。
  • その他
    子どもを抱っこする、スポーツ(テニス、バドミントン、ゴルフなど)。

一度悪化すると、日常生活の多くの動作で痛みが出るため、完全に休ませることが難しく、なかなか治りにくくなるのが特徴です。

【重要】まずは専門医による診断を

テニスひじが疑われる場合でも、まずは整形外科を受診し、レントゲン撮影などを受けることが重要です。レントゲン検査で、腱が部分的に切れていたり、炎症の痕が骨のよう(仮骨形成)になっていたりするなど、症状が進んでいる場合は、専門医による治療が必要となります。このような場合は、鍼灸治療の直接的な対象からは外れることがありますので、まずは医師の診断を仰ぎ、ご自身の状態を正確に把握しましょう。

ご自身でできるセルフチェックの目安

テニスひじかどうかを判断するための一つの目安として、アメリカのガーデン医師が提唱した観察方法があります。以下の3つのテストを試してみてください。 ※あくまで目安であり、自己診断は禁物です。

  1. トムゼンテスト(Thomsen test)
    手首の関節を、手の甲側に反らせます。その手首を、反対の手で上から押さえつけ、抵抗するように力を加えます。この時、肘の外側に痛みが出れば陽性です。
  2. 中指伸展テスト(Middle finger extension test)
    肘を伸ばしたまま、中指を手の甲側に反らせるように力を入れます。その中指を上から押さえ、抵抗を加えます。この時、肘の外側に痛みが出れば陽性です。
  3. チェアテスト(Chair test)
    椅子などを、手のひらを下に向けて持ち上げようとします。この時、肘の外側に痛みが出れば陽性です。
  4. 圧痛の確認
    肘の外側にある骨の出っ張り(上腕骨外側上顆)の周辺を押してみて、特に強く痛むポイント(圧痛点)があるか確認します。

これらのうち、一つでも当てはまればテニスひじの可能性があり、複数当てはまる場合はその可能性がより高いと考えられます。

2.テニスひじに対する鍼灸治療

鍼灸がテニスひじに効果的な理由

  • 鎮痛・消炎効果
    鍼や灸の刺激により、炎症を起こしている腱の付着部の痛みを和らげ、炎症を鎮めます。
  • 筋緊張の緩和
    過度に緊張し、硬直している橈側手根伸筋を深部から直接緩め、腱への負担を軽減します。
  • 血行促進と組織修復
    滞っている患部の血流を改善し、損傷した組織の修復に必要な酸素や栄養を供給します。
  • 根本原因へのアプローチ
    肘だけでなく、関連する首や肩、腕全体のバランスを整え、再発しにくい状態を目指します。

症状緩和に効果が期待できる主要なツボの例

肘と手首を動かす筋肉や、それを支配する神経は、東洋医学の「手の陽明大腸経ようめいだいちょうけい」という経絡の走行とほぼ一致しています。 したがって、治療には主に、手首から肘の間にある大腸経の以下のツボを使用します。

偏歴へんれき」、「温溜おんる」、「手三里てさんり
曲池きょくち」、「肘髎ちゅうりょう

具体的な鍼灸治療法

橈側手根伸筋が弾力性を取り戻し、十分に伸び縮みできるようになれば、腱が無理に引っ張られることがなくなります。そこで、痛みを取ると同時に橈側手根伸筋の緊張を緩めるために、鍼灸治療を行います。

  1. 痛みの部位に合わせたアプローチ
    • 痛みが肘に近い場合は、「曲池」と「手三里」というように、痛みのある場所に近いツボと、筋肉が最も盛り上がっている部分(筋腹)とを結ぶように刺激します。
    • 痛みが手首に近い場合は、「偏歴」と「温溜」を中心にアプローチします。
  2. 電気鍼(パルス療法)の活用
    上記のツボに鍼を刺し、微弱な電気を流すパルス通電療法を行うこともあります。特に痛みが強い時には、パルス通電をしながら、特に痛むポイントに鍼をしばらく置いておく置鍼ちしんを行うと効果的です。
  3. しこり(硬結)へのアプローチ
    橈側手根伸筋を、肘から前腕、指の方まで親指の腹で丁寧に触診し、硬いしこり(硬結)がある場合は、そこにも置鍼を行います。
  4. 症状の程度に合わせた刺激
    症状が軽ければ置鍼のみ、さらに軽くなったら刺してすぐに抜く単刺術たんしじゅつでも良いでしょう。
  5. 阿是穴(あぜけつ)の活用
    痛みやしこりのある場所が、決まったツボの位置から離れているときは、ツボの名前にこだわらずに、反応が出ている悪いところそのもの(阿是穴あぜけつ)を選んで鍼治療を行います。

肉離れとの鑑別

普段運動をしていない人がテニスなどをして、ボールを打った瞬間に「ビーン」と腕に痛みが走った場合は、肉離れを起こしていることが多いです。この場合は、まず肉離れのしこりを処置し、痛みが取れた後にテニスひじと同様の治療を行います。

3.治療を受ける上での注意点と関連症状

  • 首や肩の治療の重要性
    肘を痛めていると、その痛みのために腕や手が十分に使えず、無意識のうちに首や肩の筋肉が緊張して、二次的な痛みが出ることがあります。肘の治療と同時に、首や肩の治療も行うと、一層効果的です。
  • 関連する疾患の可能性
    頚腕症候群のために肘に痛みが出ていることもありますし、首の骨(頚椎)や関節の障害が、腕や肘の痛みの根本原因となっていることもあります。
頚腕症候群

ひごころ治療院では、肘だけの問題と捉えず、全身のバランスを診ながら、あなたの症状の根本原因にアプローチいたします。つらい痛み、我慢せずにぜひ一度ご相談ください。

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