ひざの痛み(変形性膝関節症)

膝の痛みと変形性膝関節症 ー 鍼灸とセルフケアで歩く喜びを

ひざの痛み(変形性膝関節症)

「階段の上り下り、特に下りる時に膝が痛む…」
「正座ができなくなった、立ち上がる時に膝がこわばる…」
「歩いていると、膝の内側がズキズキ痛む…」

中高年になると、このような膝の痛みに悩まされる方が多くなります。その代表的な原因が「変形性膝関節症へんけいせいひざかんせつしょう」です。 これは、加齢や体重の増加などにより膝関節の軟骨がすり減り、関節に変形や炎症が起こる疾患です。この記事では、変形性膝関節症がなぜ起こるのか、その原因と症状、そして東洋医学に基づく鍼灸治療によるアプローチや、ご家庭でできる運動療法・セルフケアについて詳しく解説します。

【目次】

  1. 変形性膝関節症とは?~その原因と症状の進行~
    • 膝の痛みを引き起こす主な原因とメカニズム
    • 症状の進行と日常生活への影響
  2. 膝の痛みに対する鍼灸治療
  3. 膝の痛みを和らげる!自宅でできる運動療法とセルフケア
    • 膝に負担の少ない運動習慣
    • 膝を支える筋力を強化するための簡単エクササイズ
    • 痛みを防ぎ、悪化させないための生活習慣

1.変形性膝関節症とは?~その原因と症状の進行~

膝の痛みを引き起こす主な原因とメカニズム

膝が痛い高齢男性

中高年期に起こりやすい膝関節の故障の代表が、変形性膝関節症です。 これは一種の老化現象であり、膝関節をつくっている大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の接触面で、クッションの役割を果たしている関節軟骨の一部がすり減ったり、剥がれたりすることで起こります。 軟骨がすり減ると、骨と骨が直接こすれ合って炎症が起きたり、関節の縁に「骨棘こつきょく」と呼ばれる骨のトゲが形成されたりして、痛みが生じるようになります。

それに加えて、関節を袋のように包み込んでいる関節包かんせつほうや、関節を補強している靭帯じんたいの弾力性や柔軟性も加齢とともに失われてくるため、膝の動きが悪くなります。

症状の進行と日常生活への影響

変形性膝関節症の症状は、時間をかけてゆっくりと進行していくのが特徴です。

  • 初期症状
    • 膝の重だるさ、こわばり感。
    • 立ち上がる時、座る時、歩き始めなど、動き始めに痛む(動作開始時痛)。
    • 階段の上り下り、特に下りる時に、膝の内側に痛みを訴えることが多くなります。
  • 進行期の症状
    • 膝の曲げ伸ばしの際に、より強い痛みや「ガリガリ」「ギシギシ」といった音(轢音れきおん)がするようになります。
    • 関節に水がたまり(関節水腫)、膝のお皿(膝蓋骨)の輪郭が分からなくなるほど腫れることがあります。
    • 正座をすることが困難になります。
    • 安静にしていても痛みが続くようになります。
  • 末期の状態
    • 膝を十分に動かせなくなるため、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)やふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)が衰えて痩せてしまいます。
    • その結果、腰がまっすぐに伸びなくなり、歩く姿は尻が落ち、膝が「くの字」のように折れ曲がった、ヨタヨタとした歩き方になることがあります。
    • このように、「動かせないから悪化し、悪化するからさらに動かせなくなる」という負のスパイラルに陥りやすくなります。

2.膝の痛みに対する鍼灸治療

ひごころ治療院では、変形性膝関節症によるつらい痛みを和らげ、残っている関節の機能を最大限に活かし、日常生活の質(QOL)を向上させることを目指して、鍼灸治療を行います。

鍼灸が変形性膝関節症に効果的な理由

全身のバランス調整
東洋医学では、加齢に伴う膝の痛みは、生命エネルギーの源である「じん」の機能低下とも深く関連すると考えます。腰部にある「腎兪」などのツボも用いて、全身のバランスを整えます。

  • 痛みの緩和(鎮痛)
    鍼刺激により、痛みの伝達を抑制したり、脳内で痛みを和らげる物質の分泌を促したりします。
  • 炎症の抑制(消炎)
    膝関節周囲のツボへの鍼や灸の刺激は、血行を促進し、炎症物質の排出を助け、炎症を鎮める効果が期待できます。
  • 筋緊張の緩和
    痛みによってこわばった膝周りや太もも、ふくらはぎの筋肉を緩め、関節の動きをスムーズにします。
  • 血行促進
    滞っている患部の血流を改善し、関節組織に栄養を供給し、修復を助けます。

症状緩和に効果が期待できる主要なツボの例

膝の痛みの場所や状態、体質に合わせて、以下のツボを中心に施術します。

足部  「委中いちゅう」、「承山しょうざん」、「足三里あしさんり
    「梁丘りょうもん」、「血海けっかい」、「湧泉ゆうせん
膝部  「膝眼しつがん
腰部  「腎兪じんゆ」、「志室ししつ」、「居髎きょりょう
    「大腸兪だいちょうゆ

具体的な鍼灸治療法

  • お灸(灸治療)の活用
    変形性膝関節症の治療では、膝を温め、血行を促進するお灸が非常に効果的です。
    • 膝のお皿のすぐ下にある「犢鼻とくび」や、膝の裏の中央にある「委中」は、治療の重要なポイントとなります。
    • 内膝眼(膝のお皿の内側下方のくぼみ)は、膝の痛み、特に水がたまっているような膝関節症によく用いられ、このツボを処置すると水がひいて非常に楽になることが多い特効穴です。
    • スポーツなどで膝を捻って痛めた際に現れやすい膝の外側の痛みには、外膝眼(膝のお皿の外側下方のくぼみ)を施術します。 老化現象によるものは膝の内側に痛みが出やすいため内膝眼を、捻った際の痛みには外膝眼を刺激すると、良い効果が期待できます。
  • 鍼治療によるアプローチ
    変形性膝関節症が少し長く経過し、太もも全体が重だるく、同時に腰にまで痛みが及ぶことがあります。その場合は、
    • 太ももの筋肉(大腿四頭筋)に沿って、「梁丘」、「伏兎」、「血海」などのツボにアプローチし、筋肉の緊張を和らげます。
    • 加えて、腰にある「志室」、「腎兪」、「大腸兪」なども施術し、腰痛を取り除き、身体の土台を整えます。
  • 総合的な視点
    膝関節の痛みは、筋力の低下と共に、多くの場合、体重の増加(太りすぎ)も大きく関わっています。そのため、ひごころ治療院では、痛みを和らげる治療と並行して、体重の減量や筋力の向上に向けたアドバイスも重要視しています。

3.膝の痛みを和らげる!自宅でできる運動療法とセルフケア

鍼灸治療と合わせて、ご家庭でのセルフケアや運動療法を継続することが、痛みの改善と進行予防には不可欠です。

膝に負担の少ない運動習慣

膝関節に大きな負担をかけずに筋力を維持し、柔軟性を高めるためには、以下のような運動がおすすめです。

  • 水中ウォーキング、水泳
  • サイクリング(エアロバイクなど)
  • 軽いストレッチ

膝を支える筋力を強化するための簡単エクササイズ

膝周りの筋肉、特に太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛えることは、膝関節を安定させ、負担を軽減する上で非常に重要です。

筋力を強化するための運動

足上げ運動(寝ながら)

  1. 仰向けに寝て、片方の膝を90度くらいに立てます。(持ち上げない方の足)
  2. もう片方の足は、膝を伸ばしたまま、足首を90度に曲げます(つま先を天井に向ける)。
  3. その状態のまま、床から10~20cmほどゆっくりと持ち上げ、5~10秒間保持します。
  4. ゆっくりと下ろします。
  5. これを左右の足で、それぞれ20回ずつ(1セット)行います。

膝伸ばし運動(座りながら)

  1. 椅子に深く腰かけます。
  2. 片方の足を、膝を伸ばして床と平行になるくらいまでゆっくりと持ち上げます。
  3. その位置で5~10秒間保持します。
  4. ゆっくりと下ろします。
  5. これを左右の足で、それぞれ20回ずつ(1セット)行います。

いずれの運動も、痛みを感じない範囲で、無理せず毎日続けることが大切です。

痛みを防ぎ、悪化させないための生活習慣

  • 適切な体重管理
    体重を1kg減らすと、膝への負担は歩行時で3~4kg、階段昇降時で6~7kgも軽減されると言われています。
  • バランスの取れた食事
    骨や軟骨の健康を保つために、カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、コラーゲンなどを意識して摂取しましょう。
  • 正しい姿勢
    O脚やX脚、猫背などは膝への負担を増やします。正しい姿勢を心がけましょう。
  • 保温
    膝を冷やすと血行が悪くなり、痛みが強まることがあります。サポーターやカイロ、入浴などで温めましょう。
  • 負荷を軽減する工夫
    • 長時間同じ姿勢(特に正座やあぐら)を避ける。
    • 重い荷物を持つことを避ける。
    • 階段や坂道はなるべく避け、手すりを利用する。
    • クッション性の高い靴を履く。
    • 必要に応じて膝サポーターや杖を使用する。

まとめ

変形性膝関節症の痛みを改善するためには、鍼灸治療、運動療法、生活習慣の改善などを根気よく組み合わせることが効果的です。

ひごころ治療院では、お一人おひとりの状態に合わせて、最適な治療とセルフケアプランをご提案し、あなたの「歩く喜び」を取り戻すサポートをさせていただきます。

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