過敏性大腸症候群(IBS)

過敏性大腸症候群(IBS)

過敏性大腸症候群(IBS)の
原因と効果的な治療法
ストレスによる
お腹の不調を鍼灸でケア

「電車に乗ると、急にお腹が痛くなる…」
「ストレスを感じると、
下痢や便秘を繰り返してしまう…」
「病院で検査しても『異常なし』と

言われるのに、
なぜお腹の調子が悪いの?」

そのつらい症状、もしかしたら過敏性大腸症候群IBS)かもしれません。 IBSは、大腸に明らかな病気がないにも関わらず、腹痛や腹部の不快感、そして下痢や便秘などの便通異常が長く続く、非常にデリケートな問題です。この記事では、IBSがなぜ起こるのか、その原因と症状、そして心身両面からアプローチする東洋医学の鍼灸治療が、どのようにしてあなたのつらい症状を改善に導くのかを詳しく解説します。

【目次】

  1. 過敏性大腸症候群(IBS)とは?~その原因と主な症状~
    • IBSが起こるメカニズム 「脳」と「腸」の深い関係
    • IBSの主な症状
    • 【重要】 まずは専門医による正確な診断を
  2. IBSに対する鍼灸治療
  3. ご家庭でできる!IBSと上手に付き合うためのセルフケア

1.過敏性大腸症候群(IBS)とは?
~その原因と主な症状~

IBSが起こるメカニズム
「脳」と「腸」の深い関係

便秘の男性

私たちの腸は、食べ物を消化・吸収し、不要なものを便として排泄するために、収縮運動(ぜん動運動)を行っています。この運動や、腸の変化を感じ取る知覚機能は、「の間の情報交換脳腸相関)によって、自律神経を介して精密にコントロールされています。

しかし、精神的なストレスなどによって脳が不安状態になると、この情報交換に乱れが生じ、腸の収縮運動が過剰に激しくなったり、逆に鈍くなったりします。また、腸が通常では感じないようなわずかな刺激に対しても、痛みとして感じやすい「知覚過敏」状態になります。 この状態が過敏性大腸症候群Irritable Bowel Syndrome: IBS)です。 実際に、大腸に風船を入れて膨らませる実験では、健康な人は強く刺激しないと腹痛を感じないのに対し、IBSの患者さんでは弱い刺激でも腹痛が起こってしまうことが分かっています。

IBSの発症原因はまだ完全にはわかっていませんが、上記のストレス要因のほか、細菌やウイルスによる感染性腸炎にかかった後、IBSになりやすいことも知られています。

IBSの主な症状

主要な症状は、慢性の腹痛をはじめとする様々な腹部症状や、下痢、便秘などの便通異常です。

  • 腹部の不快感
    いつもお腹が張る(腹部膨満感)、ゴロゴロとお腹が鳴る(腹鳴)、腹痛
  • 便通の異常
    • 下痢型
      突然の激しい便意と、水のような下痢を繰り返す。
    • 便秘型
      ウサギのフンのようなコロコロとした硬い便が出る。
    • 混合型
      下痢と便秘を交互に繰り返す。
  • 全身の症状
    何となく身体がだるい、疲れやすい、頭痛、不眠、不安感など

【重要】まずは専門医による正確な診断を

腹痛や便通異常は、他の様々な消化器疾患でも見られる症状です。自己判断せずに、まずは医療機関(内科、胃腸科、心療内科など)を受診し、大腸内視鏡検査などを受けて、潰瘍性大腸炎やクローン病、大腸がんといった器質的な病気がないことを確認することが非常に重要です。

IBSは、このような器質的な病気がないにも関わらず、つらい症状が続く「機能性」の疾患です。そのため、単なる薬物療法だけでなく、ストレスケアなどを含めた心身両面からの治療が必要になります。 このような機能性の疾患は、東洋医学が最も得意とする分野の一つであり、鍼灸などのツボ療法が非常に適していると考えられます。

2.IBSに対する鍼灸治療

なぜ鍼灸治療がIBSに適しているのか?

鍼灸治療は、IBSの根本原因である「脳と腸のアンバランス」にアプローチします。

  • 自律神経の調整
    鍼や灸の心地よい刺激は、乱れた自律神経のバランスを整え、ストレスによって過敏になっている腸の働きを正常化するのを助けます。
  • 腸のぜん動運動の正常化
    過剰な腸の動きは鎮め、逆に動きが悪い場合は活発にするよう、身体が本来持つ調整機能を促します。
  • 知覚過敏の緩和
    痛みを感じやすくなっている腸の知覚過敏を和らげる効果が期待できます。
  • 心身のリラックス効果
    施術による深いリラックス効果は、不安感やストレスを軽減し、心身ともに穏やかな状態へと導きます。

IBSは機能的な疾患なので、小さなきっかけで改善することも多くあります。症状に応じて適切なツボを選択することで、症状の改善はもちろん、心身も爽快になります。

症状緩和に効果が期待できる主要なツボの例

IBSの症状や体質に合わせて、以下のツボを中心に施術します。

背中 「厥陰兪けついんゆ」、「心兪しんゆ」、「膈兪かくゆ
   「脾兪ひゆ
腰部 「腎兪じんゆ」、「志室ししつ」、「大腸兪だいちょうゆ
頸部 「天柱てんちゅう」、「大椎だいつい
腹部 「巨闕こけつ」、「中脘ちゅうかん」、「腹結ふくけつ
   「期門きもん」、「大巨だいこ」、「関元かんげん
足部 「足三里あしさんり」、「三陰交さんいんこう」、「復溜ふくりゅう
   「太渓たいけい
手部 「合谷ごうこく

具体的な鍼灸治療法(鍼・灸・按腹)

  1. まず、うつ伏せの状態で、背中と腰の治療を行います。特に、大腸の機能を整える「大腸兪」は大切なツボなので、念入りに治療を行います。
    • 加えて、肩こりがあれば「厥陰兪」を、胃の痛みがあれば「胃兪」を、体力を増強するために「志室」を治療に加えます。
    • IBSのようなストレス関連の症状には、頭痛や頭重感が伴うことも多いため、「天柱」と「大椎」でそれらを抑えます。
  2. 次に、仰向けで腹部の施術に移ります。
    • おへその下3寸(指幅4本分)にある「関元」は、人間が生まれつき持つ生命エネルギー(先天の元気)を司るツボとして、また小腸の募穴(ぼけつ:反応が出やすい重要なツボ)としても非常に重要です。全身の循環状態を改善するとともに、活力をつける効果が期待できます。
    • 一通り腹部のツボへの施術が終わったら、按腹あんぷくというお腹のマッサージを行います。お腹の中央に手のひらを横向きに置き、こねるような感じで舟をこぐように揉み、お腹を大きく波打たせます。
  3. 最後に、手足のツボで仕上げます。
    • 大腸の機能を整える手の「合谷」と足の「足三里」、身体の冷えをとる「三陰交」、お腹の張りをとる「復溜」、体力を増強する「太渓」などを処置します。

お灸の活用

IBSの治療には、鍼だけでなくお灸も効果的です。特に、熱さがマイルドな知熱灸ちねつきゅうで、腹部の「天枢」、「大巨」、腰部の「腎兪」、「大腸兪」、手の「合谷」といったツボを、1カ所につき5~7壮すえる治療を、毎日または定期的に(例:3週間程度)続けると、気分がすっきりし、お腹の張り、下痢や便秘などの不快症状がとれてくることが期待できます。

3.ご家庭でできる!
IBSと上手に付き合うためのセルフケア

鍼灸治療と合わせて、ご家庭でのセルフケアを取り入れることで、IBSの症状をコントロールしやすくなります。

  • ストレスマネジメント
    ご自身に合ったリラックス法(深呼吸、瞑想、ヨガ、趣味の時間など)を見つけ、日常生活に意識的に取り入れましょう。
  • 食事の記録(フードダイアリー)
    食べたものと、その後の症状を記録することで、ご自身の症状を悪化させる可能性のある食べ物(トリガーフード)を見つけやすくなります。一般的に、高脂肪食、香辛料の多い食事、冷たい飲食物、アルコール、カフェイン、人工甘味料などが症状を誘発しやすいと言われています。
  • 適度な運動
    ウォーキングなどの軽い有酸素運動は、ストレス解消に繋がり、腸の働きを安定させる効果も期待できます。
  • 腹部を温める
    腹巻やカイロなどで、お腹周りを冷やさないようにしましょう。血行が良くなり、腸の過敏な動きを和らげるのに役立ちます。
  • 十分な睡眠と規則正しい生活
    生活リズムを整えることは、自律神経の安定に不可欠です。

ひごころ治療院では、あなたのつらい症状と体質に真摯に向き合い、鍼灸治療を通じて、心身両面からの改善をサポートいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です