痔の種類と治療法 ー東洋医学と鍼灸のアプローチ
症状
痔には、いぼ痔(痔核)、切れ痔(裂肛)、あな痔(痔瘻)、脱肛というように、いくつかの種類があります。
そのうち最も多いのがいぼ痔で、普段、痔といえばこれを指すくらいであります。
肛門の周りには、直腸静脈叢といって、草のひげ根のように細い血管が集まっている部分があります。その部分は体の血管の末端の部分なので、どうしても血液の流れが滞りがちになりやすいのと、便秘、妊娠、日常の生活の姿勢などの要因が加わりますと、細くて薄い静脈の壁が伸ばされて、肛門の内側や外側にえんどう豆くらいのこぶ状の形成物ができます。これが痔核であります。
このこぶ状の痔核が肛門付近の神経を刺激して、痛みを引き起こしたり、排便時の出血の原因になったりします。
痔核が肛門の外側にできるのを外痔核、内側にできるのを内痔核といいますが、内痔核が肛門の外に飛び出すのが脱肛であります。
痔核は肛門周囲の静脈のうっ血、つまり血液循環の障害によって起こるものでありますから、治療を行うには、肛門周囲の血行をスムースにして、うっ血をなくせばよいのであります。
鍼灸治療
主要なツボ
臀部 「長強」、「会陽」
頭部 「百会」
腰部 「腎兪」
手部 「孔最」
が痔の特効穴です。
その他に、症状によって、
背中 「大椎」
腰部 「三焦兪」
腹部 「天枢」
腕部 「曲池」
足部 「足三里」、「三陰交」、「太渓」
などを加えます。
治療法
痔には灸治療が一番効きます。灸をすえる場所は「百会」、「長強」、「会陽」、「腎兪」、「三焦兪」、「孔最」、「足三里」などです。各々米粒大のもぐさを1ヶ所3~5壮すえます。「長強」と「会陽」には30壮くらいすえるのが効果があります。
軽い痛み程度の痔核なら、「孔最」に20壮ほど灸をすえるだけで痛みはひきます。
痔の名穴が「百会」と「長強」であるのは、西洋医学では理屈のつかないことかもしれませんが、東洋医学は、人間の生命の営みを自然現象になぞらえ、どのツボでどの病気に効くかを長い経験で考えた結果、進歩されてきました。そして、病気をうまく自然現象にあてはめ、ツボを組み合わせます。天と地の間で人間が生活をしていることから、人体も首から上を天の部、のど元からお腹までを人の部、お腹から足元まで地の部と考えます。「百会」と「長強」を痔の重要なツボとするのは、前者が天の部、後者が地の部にあたるので、天地相和すれば自然界はよく晴れるという原理を活用したためなのです。
腰と臀部のツボ刺激で、肛門周囲の筋肉の収縮が改善され、諸症状が徐々に軽快します。さらに、「天枢」を刺激して大腸の機能を整え、「孔最」や「曲池」で痛みを除き、「足三里」、「三陰交」、「太渓」で痛みの軽減と大腸の動きをよくします。
メモ
痔対策には、日常の生活管理がしっかりしていないと再発を繰り返すことになります。第一に、便秘をしないこと、第二に足腰を冷やさないことが大切になります。足腰の冷えは痔の大敵なので、薄着や冷房の効いた冷えた環境などには注意します。そして、できるのであれば毎日入浴をして、熱めのシャワーを「長強」、「会陽」あたりにかけるとよいです。
痔の家庭療法
肛門の筋肉をリズミカルに、キュッ、キュッと引き締める運動を行います。キュッとすぼめたら10秒くらいそのままにしてから力を抜きます。こうして肛門の括約筋を収縮することにより、肛門の周囲の血行がよくなり、括約筋の筋力も回復し、痔が改善されることがあります。
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