母乳の出が悪い 原因と改善法
症状
母乳栄養が人工栄養より優れているのは、今日では常識になっているかと思います。乳児にとっては、母乳が最も理想的な栄養の補給源なのであります。ところが、いくら栄養をとり、食べ物に気を付けても、乳の出がよくないときもあります。
一つの乳房には、乳汁を分泌する乳腺が集まっている15~20の乳腺葉があり、各腺葉から乳管が1本ずつ出て、乳頭に口を開いています、乳腺の房、つまり乳腺葉の間には、脂肪がいっぱい詰まっています。乳房をつかんだとき、こりこり硬いものに触れるのがこれであります。この乳腺葉の脂肪組織の発育によって、乳房の大きさや形が違ってきます。
乳の出の悪い原因の一つにあげられるものに、この乳腺葉の発育不十分があります。したがって、お乳が張ってこず、乳汁分泌不全になるのであります。
また、乳管に乳汁がたまりすぎて詰まってしまい、乳の出が悪くなったり、出なくなったりする乳汁うっ滞症というものもあります。ケースとしては後者が多いです。その場合は、始めは乳の出はよく出たが、乳児の吸い方が悪いため、つまり上手に吸わないために乳の出が不十分で、これがもとで乳管が詰まり、乳腺を圧迫して乳の出を悪くなり、また、授乳の時間が不規則で、1回ごとの分量が違うためにも起こります。これは初産婦にありがちなことであります。
乳はもともと出産後のホルモンの分泌の刺激を受けて、乳腺への機械的刺激やホルモン刺激が乳の出を持続させるのには大切な要素であります。これに対する治療は、マッサージが最適であります。
鍼灸治療・マッサージ
主要なツボ
鎖骨下 「中府」
乳頭 「乳中」
背中 「身柱」、「厥陰兪」、「心兪」、「膈兪」、「膏肓」、「天宗」
などを使います。
治療法
マッサージを行う前に、乳房全体を温めます。お湯で絞ったタオルを四つ折りにして乳房にかけ、10~15分温めます。
温め終えたら、乳房全体を輪状に左右両手のひらか、片手のひらでよくなで、軽く揉みます。次に乳房の周縁から乳頭まで、軽く左右の両手のひらか、片手のひらで揉みます。さらに、わきの下から乳房の外側、乳頭までよくなで、軽く揉みます。ここは特に入念に行います。最後に、「乳中」である乳首を親指と人差し指で揉み、少し引っ張るようにして乳房全体に振動させます。その後に、湯かホウ酸(2%)を含ませた脱脂綿でよく拭きます。時間は、温める時間を含めて20~30分くらいで十分です。
ただし、乳房に腫れや熱、痛みが強い場合や、小さなかたまり状のしこりがあるようなときは、専門の医師の診察を受けましょう。
もし、首や肩の凝り、背中の凝りが伴うときは、首や肩、背中を温めて、軽くマッサージを行います。さらに、首の前後左右への運動、肩の上げ下げ、腕の上げ下げ運動を行いますと効果的であります。
鍼灸治療は、肩や首、背中の凝りを緩和して、「中府」、「膻中」、「中脘」、「身柱」、「膏肓」、「天宗」、「厥陰兪」、「心兪」、「膈兪」などに治療を行いますと、乳の出がよくなります。
メモ
乳房のマッサージをしますと、乳汁が飛び散り、体やベッドに飛びますので、ビニールシートなどを敷いて、乳汁が飛び散るのを防ぐために、乳房を覆うガーゼを数枚用意します。
マッサージは、乳房に直接刺激を与え、乳房周辺の胸部、肩背部の血行を盛んにする効果大きいです。しかし、乳腺炎や乳がんが原因となっている場合は、かえって逆効果になるので,検査を行い、状況を把握してから行わなければいけません。
水分の多い汁ものをとる
乳の出の良し悪しは、母親の食事と体調に影響されるといっても過言ではありません。過労や寝不足、精神的なストレスは、てきめんに母乳の出を悪くします。したがって、努めて睡眠をとり、物事をくよくよ考えないようにします。また、食事は栄養のバランスを考え食べることも大事だが、水分の多い汁ものをとりますと、途端に乳房が張ることがありますので、みそ汁、スープ、シチュー、果汁などを豊富にとるようにするといいでしょう。
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