眼精疲労

眼精疲労の改善可能性を探る ー 東洋医学・鍼灸治療の視点から

眼精疲労

「休んでも目の疲れが取れない…」
「目の奥が痛くて、頭痛や肩こりもひどい…」
「パソコンやスマホを見ると、目がかすんだり、乾いたりする…」

それは単なる「目の疲れ」ではなく、休息をとっても回復しない慢性的な「眼精疲労」かもしれません。現代社会では、デジタルデバイスの普及により眼精疲労に悩む方が急増しており、目の症状だけでなく、頭痛、肩こり、吐き気、集中力低下など、全身の不調に繋がることもあります。この記事では、眼精疲労の根本原因、特に現代生活との関わり、そして東洋医学に基づく鍼灸治療によるアプローチやご家庭でできるセルフケアについて詳しく解説します。

【目次】

  1. 眼精疲労とは?~その原因と様々な症状~
  2. 眼精疲労の大きな要因 現代生活との関係
    • パソコンやスマホによる影響(VDT症候群)
    • 「疲れ目」と「眼球運動」の重要性
    • 「首こり・肩こり」が眼精疲労を引き起こすメカニズム
  3. 眼精疲労に対する鍼灸治療
  4. ご家庭でできる!眼精疲労のセルフケア
    • 疲れ目を解消する眼球運動
    • 眼精疲労の家庭療法(温冷ケア・指圧)
    • 画面作業時の注意点

1.眼精疲労とは?~その原因と様々な症状~

眼精疲労の女性

眼精疲労は、単に「目が疲れた」という状態ではなく、全身疲労の一症状ともいえます。目の症状と、それに伴う全身の不調が現れるのが特徴です。

  • 目の症状
    • 目がしょぼしょぼする(渋い)、光がまぶしい
    • 物が二重に見える、ピントが合いにくい、目がかすむ
    • 目の奥が痛む、目の乾燥(ドライアイ)
  • 全身の症状
    • 頭痛、頭重感、めまい
    • 頑固な肩こり
    • 吐き気、胃のもたれ
    • 集中力の低下、イライラ

主な原因

原因としては、肉体的・精神的な疲労、睡眠不足などが挙げられます。また、眼鏡やコンタクトの度が合っていない、遠視・乱視・老眼の初期段階といった屈折調整の異常も大きな原因となります。

まずは専門医の診断を 目の疲労が頑固に続く場合は、自己判断は禁物です。 放置すると失明の恐れがある緑内障の初期症状や、脳腫瘍高血圧・低血圧症貧血など、他の病気が隠れている可能性もあります。まずは眼科などの専門医を受診し、原因をよく確かめることが非常に重要です。

これらの原因が認められない場合には、神経性眼精疲労(神経衰弱や心身のストレスによるもの)などが考えられ、このような健康な方が多く経験する目の疲れには、鍼灸治療が大変役立ちます。 東洋医学では、「目を司るのは肝であり、五臓六腑の精気は全て目に注ぐ」といわれ、目の症状を全身の問題と捉え、根本からの改善を目指します。

2.眼精疲労の大きな要因 現代生活との関係

パソコンやスマホによる影響(VDT症候群)

現代社会において、PCやスマホの長時間利用は眼精疲労の最大の原因です。ディスプレイを長時間見続けることで起こる心身の不調はVDT症候群とも呼ばれます。

  • ドライアイの悪化
    画面に集中すると、まばたきの回数が通常の3分の1程度に減少し、目が乾燥しやすくなります。
  • ピント調節機能の低下
    近い距離を見続けることで、目のピント調節筋(毛様体筋)が常に緊張し、疲労してピントが合いにくくなります。
  • ブルーライトの影響
    画面から発せられるブルーライトは、網膜に負担をかけるだけでなく、睡眠ホルモンの分泌を抑制し、睡眠の質の低下にも繋がる可能性があります。

「疲れ目」と「眼球運動」の重要性

「疲れ目」は一時的な目の疲労で、休息で回復しますが、放置すると慢性的な「眼精疲労」に移行します。 その原因の一つが、眼球運動の減少です。私たちは目を上下左右に動かすことで物を見ていますが、PCやスマホの使用中は、目の動きが固定されがちです。これにより、目の周りの筋肉の柔軟性が失われ、血行不良を引き起こし、疲れ目の直接的な原因となります。

「首こり・肩こり」が眼精疲労を引き起こすメカニズム

首や肩の筋肉の緊張は、眼精疲労と密接に関連しています。 長時間のデスクワークやスマホ操作による前かがみの姿勢は、首や肩の筋肉を持続的に緊張させます。硬くなった筋肉は血管を圧迫し、目への血流を悪化させます。 目が必要とする酸素や栄養が不足すると、目の疲れやすさ、かすみ、ドライアイといった症状が現れやすくなります。さらに、首周りの神経が圧迫されることで、目の奥の痛みや頭痛を引き起こすこともあります。

3.眼精疲労に対する鍼灸治療

鍼灸が眼精疲労に効果的な理由

  • 血行促進
    目や首、肩周りのツボを直接刺激し、滞っていた血流を改善します。
  • 筋緊張の緩和
    凝り固まった目の周りや首、肩の深層筋を鍼で効果的に緩めます。
  • 神経機能の調整
    過敏になっている神経を鎮め、目の奥の痛みや頭痛を和らげます。
  • 東洋医学的アプローチ
    「肝」の働きを整える足のツボなども用いて、全身のバランスを調整し、根本的な体質改善を目指します。

症状緩和に効果が期待できる主要なツボの例

眼精疲労の症状や体質に合わせて、以下のツボを中心に施術します。

顔面部 「攅竹さんちく」、「糸竹空しちちくう」、「睛明せいめい
    「瞳子髎どうしりょう」、「太陽たいよう
頭部  「百会ひゃくえ
後頚部 「天柱てんちゅう」、「風池ふうち
背部  「肩井けんせい」、「肩中兪けんちゅうゆ」、「曲垣きょくえん
    「腎兪じんゆ

具体的な鍼灸治療法

眼精疲労には、上記のツボへの鍼治療が非常に効果的です。マッサージや低周波療法を併用することもあります。

  1. 目の奥に痛みを感じる時
    まず、首の後ろにある「天柱」、「風池」を刺激し、痛みを和らげます。この刺激で首筋のしこりやコリがほぐれ、頭部への血流が改善します。
  2. 頭痛や肩こりを伴う場合
    百会」、「太陽」、「瞳子髎」、「睛明」、「天柱」、「風池」といった頭部・顔面部のツボにポイントを置き、治療します。さらに、肩の「肩井」、「曲垣」を刺激し、肩のコリもほぐします。
  3. 東洋医学的な根本アプローチ
    東洋医学では古来より「目は肝の臓に属す」とされています。そのため、足にある「太衝たいしょう(肝経の重要なツボ)や「光明こうめい」(肝と関連の深い胆経のツボ)といったツボも用いて、身体の内側から目の不調を整えます。

4.ご家庭でできる!眼精疲労のセルフケア

疲れ目を解消する眼球運動

意識的に眼球を動かすことで、目の周りの筋肉の緊張をほぐし、血行を促進します。作業の合間に短時間でも良いので取り入れましょう。

  • 上下運動
    まっすぐ前を見たまま、ゆっくりと視線を天井へ、次に床へ。数回繰り返します。
  • 左右運動
    同様に、視線を右端へ、次に左端へ。数回繰り返します。
  • 円運動
    時計回りと反時計回りに、ゆっくりと目を大きく回します。
  • 寄り目運動
    近くの目標物(指など)と遠くの景色に、交互に焦点を合わせます。

眼精疲労の家庭療法(温冷ケア・指圧)

  • 温冷ケア
    • 充血している時
      冷たいタオルを両目にあてて、炎症を鎮めます。
    • 疲労感が強い時
      蒸しタオルなどで温めると、血行が良くなりリラックスできます。
    • ケアの仕上げ
      温冷ケアの後に、まぶたの上から両手のひらの腹で、息を吐きながら、軽く眼球を押すようにすると心地よいです。
  • 指圧:
    • 頭重を伴う場合
      首の後ろの「天柱てんちゅう」をやや強めに、そしてこめかみ(「太陽」)を、こねるように優しく指圧すると良いでしょう。

画面作業時の注意点

  • こまめな休憩
    連続作業は1時間以内にとどめ、10~15分は目を休ませましょう。遠くの景色を見るのがおすすめです。
  • 適切な作業環境
    画面は目から40cm以上離し、やや下向きに設置。部屋の明るさに合わせて画面の輝度を調整します。
  • 意識的なまばたきと正しい姿勢
    意識的にまばたきをして目の乾燥を防ぎ、背筋を伸ばして作業しましょう。
  • ブルーライト対策
    ブルーライトカット機能やメガネを活用するのも一つの方法です。

ひごころ治療院では、あなたのつらい眼精疲労の原因を丁寧に見極め、最適な治療法とセルフケアをご提案します。長引く目の不調でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です