てんかん

てんかん の症状ー原因とその治療法

てんかん は、西洋では「悪魔の病気」などと呼ばれて恐れられてきましたが、近年では治療法が進んで全治することも珍しくなくなってきています。しかし、やはり難しい病気であることは、現在もかわりありません。

【目次】

1.てんかんの原因と症状
2.てんかんの鍼灸治療
  ・主要なツボ
  ・治療法
  ・治療の注意点

てんかんの原因と症状

てんかんとは何か

てんかんは、脳の神経細胞の過剰な興奮によって引き起こされる慢性の病気です。この過剰な興奮が、繰り返し起こる発作となって現れます。発作の症状は人によって異なり、意識消失を伴う全身性のけいれんから、一点を見つめるだけの短いものまで様々です。

主な症状と発作の種類

てんかんの発作は多岐にわたりますが、代表的なものとして以下の種類があります。

  • 全般発作
    脳全体が同時に異常な興奮を起こす発作です。
    • 強直間代発作
      意識を失い、全身が硬直した後(強直相)、手足がガクガクと痙攣する(間代相)発作。多くの方が「てんかん発作」としてイメージするものです。発作後には、意識が回復するまで時間を要することがあります。
    • 欠神発作
      一瞬意識が途絶え、動作が止まったり、反応が鈍くなったりする発作。周囲からは「ぼーっとしている」ように見えることがあります。
  • 部分発作
    脳の一部から異常な興奮が始まる発作です。
    • 単純部分発作
      意識は保たれたまま、体の一部が痙攣したり、感覚異常(しびれ、チカチカするなど)が現れたりします。発作前に前兆を感じることもあります。
  • 複雑部分発作
    意識が変容したり、 Automatisms(無意識的な行動)が見られたりします。

てんかんの原因とは何か

てんかんは、大きく分けて真性てんかん症候性てんかんの2つに分類されます。

  • 真性てんかん
    原因が特定できないてんかんです。遺伝的な要因が関与している可能性も指摘されていますが、詳細はまだ解明されていません。比較的軽度の環境変化や刺激によって発作が誘発されやすい素因を持つ人が発症しやすいとも言われています。
  • 症候性てんかん
    脳の明らかな病変(脳外傷、脳腫瘍、脳炎、脳血管障害など)が原因で引き起こされるてんかんです。中年以降に発症するてんかんの多くは、この症候性てんかんに該当します。

誘因としては、過労、睡眠不足、ストレス、飲酒、発熱、光刺激などが知られています。特に飲酒は、覚醒後に発作を引き起こしやすいとされています。

家族歴と遺伝

真性てんかんの発症には、遺伝的な要因が関与していると考えられています。家族にてんかんを持つ人がいる場合、そうでない人に比べて発症リスクがやや高くなることが知られています。しかし、遺伝する形式や原因遺伝子は多岐にわたり、単純な遺伝病とは異なる複雑な遺伝形式をとることが多いです。

環境要因とその他のリスク

遺伝的素因を持つ人に加え、以下のような環境要因やリスクファクターがてんかんの発症に関与する可能性があります。

  • 出生時の異常(低酸素状態など)
  • 乳幼児期の重症な感染症
  • 頭部外傷
  • 脳卒中
  • アルツハイマー病などの神経変性疾患

遺伝性てんかんの種類

特定の遺伝子の異常が原因となる遺伝性てんかんも存在します。これらのてんかんは、発症時期や症状、治療への反応などが特徴的であることが知られています。

発作の頻度と持続時間

てんかん発作の頻度や持続時間は、患者さんによって大きく異なります。月に数回発作を起こす方もいれば、年に数回程度の方もいます。また、発作の持続時間も数秒から数分と様々です。

発作の前兆と兆候

一部のてんかん患者さんには、発作が起こる直前に特有の前兆(aura)を感じることがあります。これは、視覚異常(目がチカチカする)、聴覚異常(音が聞こえる)、体の一部が痺れる、嫌な臭いがするなど、人によって様々です。前兆を感じることで、発作に備えることができる場合があります。

発作のメカニズムと脳の働き

てんかん発作は、脳の神経細胞が過剰に興奮し、電気的な活動が異常に広がることで起こります。通常、脳の神経細胞は互いに抑制し合いながらバランスを保っていますが、何らかの原因でこのバランスが崩れると、発作が引き起こされると考えられています。

てんかんの鍼灸治療

東洋医学に基づく鍼灸療法は、体表にある特定の部位(ツボ)を鍼や灸で刺激することで、生体の持つ自然治癒力を高め、心身の不調を改善する治療法です。てんかんに対しては、脳の興奮を鎮め、心身をリラックスさせる効果が期待されています。

とくに真性てんかんは、ツボを使った治療法によって発作の回数を減らし、発作時間を短くすることができます。

目指す効果と実際の症例

鍼灸治療は、てんかんそのものを完全に治癒させることを目的とするのではなく、薬物療法と併用することで、以下のような効果が期待されています。

  • 発作頻度の減少
  • 発作時間の短縮
  • 心身のリラックス効果
  • 自律神経の調整
  • 手足の冷えなど、てんかんに伴う症状の緩和

実際に、鍼灸治療によって発作の回数が減ったり、発作時間が短縮されたりする症例も報告されています。

症状の緩和とリラクゼーション

鍼灸治療は、直接的な発作抑制効果に加え、心身のリラックスを促す効果が期待できます。てんかん患者さんは、発作への不安や日常生活でのストレスを感じやすいですが、鍼灸の施術によって心身が穏やかな状態を取り戻し、精神的な安定につながることがあります。

リラックス効果と自律神経への影響

鍼灸刺激は、自律神経のバランスを整える働きがあると考えられています。自律神経の乱れは、てんかん発作の誘因となることもあるため、鍼灸によって自律神経の働きを正常に近づけることは、発作の予防にもつながる可能性があります。

主要なツボ

頭部  「百会」、「前頂」、「後頂
後ろ首 「天柱」、「風池
背中  「肺兪」、「心兪
腰部  「三焦兪」、「腎兪
腹部  「中脘」、「大巨
手部  「曲池
足部  「足三里」、「三陰交

などがポイントになります。

治療法

東洋医学では、てんかんの癲(てん)が頭のてっぺんを意味し、癇(かん)がひきつけの発作をあらわしますが、この漢字の通りにツボ治療は頭に重点を置きます。

治療刺激は、灸と鍼が最も有効です。

灸治療は、中切りもぐさを使い、各ツボに1日5~7壮すえます。

上記のツボのほかに、手足をこわばらせて、のけぞる発作を鎮める効果がある、外くるぶしの前下方の「金門」を加えます。

てんかんは、手足の冷えも伴いますが、背中、腰、足のツボの刺激は体の冷えをとるうえで効果があります。

腸内環境が悪い大腸

なお、便秘をすると、てんかんの発作を誘発することになるので、便秘をしないように「中脘」、「大巨」を中心とした刺激は大切になります。

治療の注意点

てんかんの治療は、薬物療法が主流であり、発作の型によっても薬の種類は異なります。ツボ療法は補助的な治療として大変役立ちます。

また、患者は規則正しい日常生活を送り、睡眠を十分にとるようにして、心身の過労を避けます。便秘も悪影響なので、便意を催したら、必ず排便をします。

食事は腹八分目を心がけて、野菜や海藻類を努めて食べて、便秘を防ぎます。香辛料はなるべく少なくして、肉類、砂糖、脂肪の多いものはできるだけ取らないようにします。

また、てんかん患者は飲酒は厳禁です。飲酒によって発作を起こすケースは少ないです。リスクを減らす意味でタバコも避けましょう。

実際の治療体験と効果

鍼灸治療を受けたてんかん患者さんの中には、「発作の頻度が減った」「発作の持続時間が短くなった」「以前よりもリラックスして過ごせるようになった」といった効果を実感している方もいます。

鍼灸療法への期待と不安

鍼灸療法に対して、「副作用が少ないのではないか」「薬だけに頼りたくない」といった期待を持つ患者さんがいる一方で、「本当に効果があるのだろうか」「痛くないだろうか」といった不安を感じる方もいるかもしれません。鍼灸治療を受ける際には、鍼灸師に自身の症状や不安をしっかりと伝え、納得した上で治療を受けることが大切です。

食事や運動の重要性

バランスの取れた食事を心がけ、特に野菜や海藻類を積極的に摂り、便秘を予防しましょう。満腹になるまで食べ過ぎるのも避けるべきです。適度な運動は心身の健康維持に役立ちますが、激しい運動は避けるようにしましょう。

てんかんとの向き合い方は人それぞれですが、鍼灸療法は、症状の緩和だけでなく、患者さんの心に安らぎをもたらす可能性を秘めています。西洋医学的な治療と並行して、鍼灸治療を検討してみるのも一つの選択肢かもしれません。

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