夜尿症の原因 と対策ー冷えと夜尿症の関係
【目次】
1.夜尿症(おねしょ)の原因と症状
・夜尿症の主な原因を探る
・おねしょする子供に見られる特徴
・東洋医学で考える夜尿症と冷えの関係性
2.鍼灸治療で夜尿症を改善する方法
・鍼灸治療の作用と夜尿症への効果
・主要なツボ
・夜尿症の鍼灸治療の実際
・治療後の注意点
・夜尿症に関する疑問解消
3.夜尿症改善のための生活習慣の見直し
・睡眠環境とトイレ習慣の工夫
・日中の水分と塩分のコントロール
・ストレスとの関係とその軽減方法
・親は子供の夜尿症を気にしない
夜尿症(おねしょ)の原因と症状
夜尿症の主な原因を探る
人間の排尿機構が完成するのは、3~4才と考えられています。この時期を過ぎても、夜間に排尿の失敗をするものを夜尿症と呼んでいます。
普通この年代になりますと、大脳から膀胱への抑制力が完成し、夜間の失敗はほぼなくなり、また睡眠中に腎臓から分泌された尿が満タンに溜まるまで、つまり尿意感じるまでの時間がおよそ8時間以上になるので、おねしょの心配はなくなるはずです。
とある資料によりますと、夜尿症の子供は4~5才でも15%あり、小学校6年生になっても、4%強の子供がまだ悩みを抱えているといいます。
夜尿症には、何らかの病気がひそんでいる場合があります。尿崩症、萎縮腎、萎縮膀胱、膀胱炎、尿道炎、外陰炎、膣炎などであります。さらに、膀胱を支配している神経に異常がある場合もあります。この場合は専門医に相談することをお勧めします。
しかし、こうした病的なものは夜尿症の一部で、ほとんどは膀胱などには何の異常もないのに、自分の意識することなしに、夜間に正常と同じ排尿行為をしてしまうのであります。
原因として指摘されるのが、精神的、心理的要因であります。例えば、今まで排尿で失敗のなかった子供が、下に弟や妹が生まれたとたんにおねしょをするようになった場合などであります。日頃の習慣、不規則な生活も原因となります。
おねしょする子供に見られる特徴
おねしょをする子供の多くは、深い眠りにつきやすい傾向があります。このため、膀胱が満杯になった信号を感じ取れない場合があります。また、遺伝的な要因が関与することもあり、両親のいずれかが夜尿症の経験を持つ場合、その子供も同じ症状を経験する可能性が高くなります。
東洋医学で考える夜尿症と冷えの関係性
東洋医学では、夜尿症のほとんどを冷えが原因であると考えます。いわば、子供の冷え症で、おねしょに改善がない子供は必ずお尻や足が冷えています。冷えによって下半身の血流が悪くなると、膀胱の機能が低下し、尿意のコントロールが難しくなることがあります。特に寒冷な季節には、体温の維持が重要です。
また、「腎虚(じんきょ)」や「脾虚(ひきょ)」など、身体のエネルギー不足が原因と考えられています。これらは、腎臓や消化器官が十分に機能していない状態を指し、全身のバランスが崩れることで夜尿症が引き起こされるとされています。ツボ療法はこの点に留意して処置します。
鍼灸治療で夜尿症を改善する方法
鍼灸治療の作用と夜尿症への効果
鍼灸治療は、身体のツボを刺激することで、エネルギーの流れを整え、臓器の機能を活性化させます。これにより、腎臓や膀胱の働きが改善し、夜尿症の緩和が期待できます。
主要なツボ
などが中心となるツボです。
夜尿症の鍼灸治療の実際
夜尿症には、昔から灸治療がよく効くといわれてきています。灸に耐えられない場合は、知熱灸や温灸の方法もあります。むろん、マッサージや指圧でも十分に効果を示すことがあります。
灸治療の場合は、10歳未満の子供には糸状灸などできるだけ小さい灸をすえます。10歳以上の人には、さらに「極泉」や「足三里」、「曲泉」など加えます。
ところで、子供の夜尿の周期をよく観察しますと、月によって多い月と少ない月があったり、1週間のうちでも、週末になると決まっておねしょをして、知恵熱といわれる軽い発熱状態と、体力減退を起こす場合があります。
そのような場合は、治療を二つに分けて行います。夜尿の多い月や週末に多い場合には、「関元」、「中極」、「志室」、「腎兪」、「膀胱兪」を用いて、足の冷えが強い人には、「足三里」、「三陰交」、「太渓」、「大敦」を加えて刺激します。
夜尿の少ない月や週始めの時の場合は、全身の変調効果をねらって、「百会」、「肩井」、「身柱」、「心兪」、「大巨」、「合谷」、「湧泉」などを選穴して、施術を行います。
子供の場合は、刺激に非常に敏感で、特別ツボを選ばなくても効果があります。この効果を治療に応用したものが皮膚鍼で、子供の背中、胸、お腹などにリズミカルな刺激を与えますと、全身の自律神経が調節され、外部の刺激に対して体は適度に反応するようになり、過敏な体質は変調されていきます。ポイントとなるツボ付近に温灸や小児はりの方法で行います。
治療後の注意点
夜尿症の子供は寝てから1時間前後で粗相するといいます。夜はあまり水分をとらせないようにして、足先の保温には十分に注意します。また、おねしょをした子供をやたら叱ったり、意識させたりするのは禁物です。要は夜尿の習慣を断ち切り、丈夫な体、明るい性格、規則正しい習慣をつけることであります。
夜尿症に関する疑問解消
夜尿症の治療頻度について
夜尿症の治療頻度は個々の症状によって異なりますが、通常は週1〜2回の鍼灸治療が効果的とされています。特に初期段階では、頻度を高めることで改善を促進し、その後症状が落ち着いた場合は治療間隔を広げることが一般的です。
治療期間と改善の目安
治療期間は夜尿症の程度や原因によりますが、通常数ヶ月〜半年程度の継続的な治療が必要となるケースが多いです。軽度の場合は数週間で改善が見られることもありますが、根本的な原因に対応するためには長期的な計画が重要です。
悪化する可能性について
適切な治療を行えば悪化することはほとんどありません。ただし、冷えやストレスなどの環境要因を放置すると症状が悪化する可能性があります。また、治療が不適切だった場合や生活習慣が改善されていない場合、期待した効果が得られにくい場合もありますので、専門家との継続的な相談が推奨されます。
夜尿症改善のための生活習慣の見直し
睡眠環境とトイレ習慣の工夫
寝る前にトイレを済ませる習慣をつけること、また、過度に厚着をせずリラックスできる睡眠環境を整えることが大切です。
日中の水分と塩分のコントロール
日中の水分摂取量を適切に調整し、塩分を控えることで、夜間の尿量を減らす工夫をすることができます。
ストレスとの関係とその軽減方法
ストレスが夜尿症を悪化させる場合があるため、親子のコミュニケーションやリラックス法を取り入れることで、ストレスを軽減する努力が必要です。
親は子供の夜尿症を気にしない
子供の夜尿症を母親が気にしていると、それが子供に移ってますます萎縮してしまいます。夜尿というのは一度覚えてしまった癖なので、これを忘れるのに数年の歳月を要してしまいます。
背中 「身柱」
腰部 「腎兪」、「志室」、「膀胱兪」
「次髎」
腹部 「水分」、「関元」、「中極」
足部 「三陰交」、「太渓」、「大敦」