耳の痛み ー鍼灸が有効なケースも|中耳炎と神経性の痛み

「ズキズキと耳が痛む…」
「物を噛むと耳のあたりが痛い…」
「原因不明の耳の痛みが続く…」
耳の痛みは、子どもから大人まで多くの人が経験するつらい症状です。特に、夜になると痛みが激しくなって眠れないこともあり、日常生活に大きな支障をきたします。
この記事では、耳の痛みの主な原因である中耳炎や外耳炎、そして原因不明の神経性の痛みについて、その特徴と、東洋医学に基づく鍼灸治療によるアプローチを分かりやすく解説します。
【目次】
1.耳の痛みの原因と症状

耳が痛む場合、その大部分は中耳炎や外耳炎といった耳の炎症が原因です。
中耳炎・外耳炎による痛み
- 急性中耳炎
- 耳の鼓膜から奥にある「中耳」という空間の炎症で、特に夜になると痛みが激しくなり、眠れないことも少なくありません。
- 主な原因
鼻や喉の細菌・ウイルスが、耳と鼻をつなぐ「耳管」を通って中耳に侵入することで起こります。 - かかりやすい人
大人でもかかりますが、耳管が太く短い幼児は特にかかりやすい傾向があります。
- 慢性中耳炎
- 急性中耳炎を治療せずに放置したり、軽い急性中耳炎を繰り返したりすると、慢性化することがあります。
- 身体の免疫力が弱っている時や、鼻や喉に持病がある場合にも発症しやすいため、初期の適切な治療が非常に大切です。
- 外耳炎
- 耳の穴から鼓膜までの「外耳道」に炎症が起こる病気です。
- 主な症状
初めは軽い痛みでも、進行するとだんだん痛みが激しくなり、物を噛んでも痛みを感じるようになります。この状態になったら、運動や入浴などは避けて安静にする必要があります。
神経性の耳の痛み(神経性耳痛)
上記のような炎症以外に、特に原因が思い当たらないにも関わらず、物を噛んだ時などに耳の周りが痛む場合があります。 これは「神経性耳痛」と呼ばれ、生命に関わるような病気ではありませんが、ご本人にとっては非常に不快な症状です。 このような、原因がはっきりしない神経性の耳の痛みに対して、鍼灸治療は優れた効果を発揮することがあります。
【重要】まずは専門医の診断を
耳の痛みの原因は様々です。特に、高熱を伴う場合、耳だれが出る場合、聞こえが急に悪くなった場合などは、自己判断せずに必ず速やかに耳鼻咽喉科を受診し、専門医による正確な診断と適切な治療を受けることが最も重要です。 鍼灸治療は、医師の診断や治療方針を尊重し、連携を取りながら、痛みの緩和や体質改善のサポートとして行うものです。
2.耳の痛みに対する鍼灸治療
ひごころ治療院では、丁寧なカウンセリングと東洋医学的診断に基づき、耳の痛みの原因を見極め、症状の緩和と根本的な体質改善を目指した鍼灸治療を行います。
鍼灸が耳の痛みに効果的な理由
- 消炎・鎮痛効果
鍼や灸の刺激は、炎症を起こしている部位の血行を促進し、発痛物質の排出を助け、痛みを和らげます。 - 神経の興奮を鎮める
神経の過敏な状態を和らげ、ピリピリ、ズキズキといった神経性の痛みを軽減します。 - 免疫機能の調整
身体が本来持つ自然治癒力を高め、感染に対する抵抗力をサポートします。慢性的な中耳炎の体質改善にも繋がります。 - 筋緊張の緩和
耳の痛みに関連する、首や肩、顎周りの筋肉の緊張を緩めることで、耳周辺への血流を改善します。
症状緩和に効果が期待できる主要なツボの例
耳の痛みやその原因に合わせて、以下のツボを中心に施術します。
具体的な鍼灸治療法(症状別アプローチ)
耳の痛みに対する鍼灸治療では、まず耳の周りを押してみて、特に痛みを感じる部分(圧痛点)を見つけ、そこを重要な治療ポイントとします。
- 神経性の耳痛の場合
- 「角孫」、「頭竅陰」、「風池」、「翳風」、「頬車」、「耳門」といった耳の周囲のツボを対象に、鍼や灸で丁寧に刺激します。
- 加えて、心身の変調を整える腹部の「肓兪」、心身を整え活力をつける腰の「腎兪」も、神経性耳痛の治療には欠かせません。
- さらに、内くるぶしの上の後ろにある「復溜」は、頭痛や耳、歯の痛みを取るツボとしてよく知られており、このツボに「太渓」を加えて刺激します。
- 中耳炎による耳の痛みの場合
- 「耳門」、「翳風」、「完骨」、「合谷」が治療のポイントとなります。まず頭部や耳の周りの各ツボへ刺激を行い、最後に手の「合谷」を刺激します。「合谷」は、鍼治療の場合、ズーンと響くような感覚(得気感)を与えることで、より効果が高まることがあります。
- 慢性中耳炎の場合は、病院での薬物療法と鍼灸治療を併用すると、より効果を高めることが期待できます。ただし、慢性中耳炎は急に症状が悪化する(急性増悪)ことがあるため、鍼灸治療を続けながらも、定期的に専門医に治療の経過を診てもらうことが必要です。慢性中耳炎には、「聴宮」、「角孫」、「頭竅陰」、「翳風」、「天柱」、「完骨」、そして側頸部の「天窓」などを刺激します。
- 外耳炎による耳の痛みの場合
鍼灸治療を受ける上での注意点
- お灸(灸治療)の活用
- 耳が化膿しているような場合には、腕の「曲池」、「手三里」、「養老」などにお灸を数十壮すえると、排膿(膿を出すこと)を促しやすくなるとされています。
- 耳の痛みには「曲池」や「腎兪」にお灸をすえると、痛みが和らぐことが期待できます。
- 慢性的な症状では、特に耳の周りの手で押さえて痛むところに、阿是穴的に5カ所ほどお灸をすえるのも良いでしょう。熱さがマイルドな知熱灸でも効果は期待できます。
- ツボの数
特に炎症が強い場合などは、刺激が過剰にならないよう、治療に用いるツボの数はなるべく少なく絞り込むことがあります。 - 専門家との連携
中耳炎や外耳炎の治療は、まず耳鼻咽喉科での診断と治療が基本です。鍼灸治療は、これらの治療を補完し、回復をサポートするものとしてご活用ください。
耳の痛みは、原因によって対処法が大きく異なります。自己判断で様子を見ているうちに、症状が悪化したり、慢性化したりすることもあります。
つらい耳の痛みでお悩みの方は、まずは専門の医療機関を受診し、その上で、東洋医学的なアプローチとして鍼灸治療をご検討ください。
ひごころ治療院では、お一人おひとりの症状と体質に合わせた丁寧な施術で、あなたのつらい症状の改善をサポートいたします。