糖尿病

糖尿病 と鍼灸治療 ー鍼灸による体質改善と合併症予防の効果

糖尿病 は、体内のグルコース(血糖)を適切にコントロールする機能が低下する代謝疾患であります。その結果、慢性的な高血糖状態を引き起こし、全身の様々な器官に合併症を招く可能性があります。病態は、インスリンの分泌不全、インスリン抵抗性の増大、またはその両方に起因します。

【目次】

1.糖尿病とは何か ?
 ・糖尿病の症状
 ・糖尿病の原因
 ・糖尿病における鍼灸治療の効果
2.糖尿病の鍼灸治療
 ・主要なツボ
 ・治療法
 ・治療の注意点
 ・糖尿病網膜症
 ・鍼灸治療の具体的な効果と改善例
 ・西洋医学との併用と効果
3.体からのSOS
 ・異様にのどが渇く日が続く

糖尿病とは何か ?

膵臓のイラスト

糖尿病の症状

症状は人によってかなり異なり、また、病気の程度が軽い場合にはこれといった症状もあらわれません。症状には、代謝異常に起こる症状と、合併症が起こって出てきた症状があります。

糖尿病の自覚症状の中で最も多いのは、口が乾いて、必然的に水分を多くとるので、頻尿、多尿になることです。また、空腹感と多食、とくに甘いものを欲しがります。

症状が進むと、病気に対する抵抗力が落ちて、感冒にかかりやすくなったり、血管障害が起こりやすくなったりします。他に、急に視力が落ちる、手足がしびれる、おできができやすくなる、皮膚にかゆみが出る、歯槽膿漏になる、貧血になるなどの合併症を起こします。

糖尿病の原因

原因は、インシュリンを分泌するすい臓に異常があるとき、遺伝的素質のある人に何かの因子(肥満・ストレス・感染など)が加わると、それが誘因となって発病しやすいといわれています。

糖尿病は、生活や治療次第で良くも悪くもなる病気の典型であります。治療の基本は食事療法で、飲食に注意して体重をコントロールし、また、ストレスがたまらないように留意すれば、十分に予防できます。

糖尿病における鍼灸治療の効果

鍼灸が修正する体質と代謝
東洋医学において、糖尿病は「消渇(しょうかつ)」と捉えられ、その病態は陰虚燥熱、気陰両虚、陰陽両虚などに分類されます。鍼灸治療は、経穴(ツボ)への刺激を通じて、生体の気血の流れを改善し、自律神経系や内分泌系のバランスを調整することで、糖尿病の病態改善に寄与する可能性が示唆されています。

血糖値の改善に関する研究論文
複数の研究で、鍼灸治療が血糖値、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)、インスリン抵抗性の改善に有効であることが示されています。

東洋医学のツボ療法では、初期の段階であれば、全身の血行をよくして回復につなげられますし、糖尿病によって起こる合併症を軽くして、側面から治療をしていくこともできます。

糖尿病の鍼灸治療

東洋医学では、糖尿病の病態を全身の機能失調として捉え、鍼灸治療を通じて、これらの失調を改善し、代謝機能の正常化を目指します。初期段階においては、全身の血行改善による自然治癒力の向上を促し、進行した状態においては、合併症の軽減や症状の緩和を目的とした治療が行われます。

主要なツボ

背部 「肺兪」、「脾兪」、「腎兪
腹部 「天枢」、「肓兪」、「大巨
手部 「内関」、「手三里
足部 「足三里」、「三陰交」、「地機

などがよく使われます。

治療法

全身の気血の巡り、および陰陽のバランスを調整し、根本的な体質改善を目的とした治療が実施されます。

脾の臓のツボである「脾兪」を主に、背中の「肝兪」、「胆兪」、「胃兪」を刺激します。「脾兪」は、その名の通り脾の臓の働きに関係するツボですが、この脾は現代の解剖学的分類によりますと、まさにすい臓そのものに相当していますので、「脾兪」はおのずとすい臓の機能を整えてくれるわけであります。加えて、動悸や息切れ、手足の冷えをとるために「肺兪」、「厥陰兪」、活力をつけるために「腎兪」も刺激します。

腹部では、「中脘」、「天枢」、「大巨」、「肓兪」などを刺激します。これらのツボはお通じをよくして、胃腸の機能を整える働きがあります。

足は「足三里」、「三陰交」、「地機」などが効果を示します。これらのツボは灸治療が効果的です。「足三里」は、とりわけ糖尿病特有の、足のだるさ疲労感をとるのに有効です。運動不足の人には、家庭療法の一環として毎日「足三里」を押してみるだけでも、疲労、倦怠感がとれて元気になり、糖尿予防にも役に立ちます。「三陰交」と「地機」は、脾の臓と関係のあるツボとして昔からよく使われています。

手では、胸から腹にかけての症状を和らげるために、「内関」、「手三里」などを刺激します。

灸治療の場合は、上記のツボの中から症状別に選んで治療をしますが、基本的には「厥陰兪」、「脾兪」、「中脘」、「大巨」、「足三里」、「三陰交」、「地機」などに3~5壮すえます。3週間にわたって1日1回ずつ行ったら、1週間休み、そしてまた3週間行います。

頻尿多尿の場合は、「腎兪」、「膀胱兪」、「水分」、「水道」などの灸治療が効果的であります。

治療の注意点

インスリン注射を必要とする重症例を除き、鍼灸治療は糖尿病の症状軽減に一定の効果を示す可能性があります。ただし、糖尿病患者は創傷治癒遅延や感染リスクが高いため、灸治療を行う際は、米粒大よりも小さい艾を用いる必要があります。また、頭部や頸部など毛髪部位への直接灸は禁忌とされています。

糖尿病網膜症

日本で多い緑内障以外の失明の原因には、糖尿病網膜症加齢黄斑変性があります。これらの病気が進行しますと、網膜がはがれてしまい、視細胞が光感知機能を失ってしまいます。

網膜がはがれるとは、視細胞が色素上皮細胞から離れてしまうことです。色素上皮細胞は、光を受け取るために必要なレチナール分子を視細胞との接触部分から供給する役割があります。両者が離れることで、視細胞が栄養失調になり、機能を失います。

なお、レチナール分子の原料であるビタミンAが極端に不足すると、暗いところで目の感度が上がらない夜盲症になります。

糖尿病網膜症は、緑内障と並ぶ日本人の失明原因とされています。血糖値が高いと、網膜内部を通っている毛細血管がもろくなって、出血につながります。出血は、網膜のはがれの原因となる膜を作ってしまいます。

基本的に、糖尿病の治療を行うことが、糖尿病網膜症の治療につながります。

鍼灸治療の具体的な効果と改善例

鍼灸が軽減する症状

  • 血糖値の改善
  • 神経障害(疼痛、しびれ、感覚異常)の緩和
  • 疲労感の軽減
  • 睡眠の質の向上
  • 消化機能の改善

糖尿病性神経障害への影響

鍼灸治療は、神経の血流を改善し、神経機能を回復させることで、しびれ、痛み、感覚異常などの症状を緩和することが期待できます。

実際の患者の体験談

鍼灸治療によって、血糖値が安定し、インスリンの量が減った、神経障害の痛みが軽減した、などの体験談があります。

西洋医学との併用と効果

インスリン治療との相乗効果

鍼灸治療は、インスリン治療の効果を高め、インスリンの量を減らすことができる可能性があります。

食事療法および運動療法との連携

鍼灸治療は、食事療法や運動療法と組み合わせることで、より効果的な血糖コントロールが期待できます。

多角的アプローチによる改善

鍼灸治療、西洋医学、食事療法、運動療法、生活習慣の改善などを組み合わせることで、糖尿病の総合的な改善を目指します。

体からのSOS

異様にのどが渇く日が続く

・・・糖尿病

喉が無性に渇くという訴えがあれば、医師はまず糖尿病を疑うそうです。糖尿病とは、体内の糖のコントロールがうまくいかない病気です。その結果、血中の糖の量が増えます。角砂糖を置いて放置すると水分を含んでしけってくるように、糖には水分を吸い寄せる性質があり、血液中の糖も体内の水分を引き寄せます。

水分をとられた体は脱水気味になり、のどが異常に渇きます。また、行き場のなくなった糖を排泄しようとし、必要以上の尿も出てしまうことも、体内の水分量を減らす原因になります。

他にも、糖尿病の初期症状として、体重減少が挙げられます。糖分が全て尿として出されるので、食べても食べても栄養が足りない状態になり、瘦せてきます。血糖を悪者のように考える人もいますが、人間の体は糖と酸素で動いているので、血統の値が低くてもいけません。

糖尿病を放置しますと、眼や腎臓、脳、心臓などに様々な不具合が出ます。血糖値が高い状態だと血管がボロボロに傷ついて、糖尿病網膜症や糖尿病腎症、心筋梗塞などの怖い症状が起きます。

さらに、糖によって血液中で菌が育ちやすくなるため、怪我などで化膿したり、壊疽したり、最悪なケースだと切断に至るケースもあります。

このような最悪なケースを避けるためには、早期発見とケアが大切になります。初期の糖尿病なら、食事と運動、体重に気を付けていればきちんと治ります。

なお、家族や親せきに糖尿病患者がいる人は、特に注意します。糖尿病は家系によってなりやすさが異なります。必ず定期的に検診を受けて、血糖値などに気を配るようにしましょう。

何科に行くべき?

内科/糖尿病代謝内科

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