症状
便秘というのは、健康の時に比べて排便の回数、あるいはその量が減少して、不快感を伴うものをいいます。
どの程度が病的なのかは個人差があるので一概には言えませんが、3~4日に1回程度の排便であっても、不快な症状がなければ生理的範囲と考えてもいいでしょう。
便通があっても残留感があったり、排便後すっきりとしなかったりするのも便秘のうちです。また、1日1回以上排便があっても、量が非常に少なかったり、硬く出にくいのも便秘であります。
便秘にはいろいろの原因があり、大腸自体の異常、体質的に無力(腸管の緊張減退)、食事の影響、精神・心因からの影響、内分泌の異常、多臓器疾患からの影響、常習の影響などがあります。この中で最も多いのは常習性便秘であります。
便秘といえば大部分が常習性便秘で、ことに日本人女性の70%は便秘症であるといわれています。この常習性便秘には、小腸や大腸の管がキュッと引き締められたように狭くなって内容物が先へ進めない痙攣性便秘と、腸の収縮が弱く内容物が送り出す力が弱い弛緩性便秘があります。常習者の9割は弛緩性便秘です。つまり、腸の蠕動運動が低下しておこる便秘が大部分ですが、これに運動不足や筋力低下が加われば、腸の蠕動運動はさらに弱まり、便秘症状は進みます。
弛緩性便秘の便は、かたく太くなるのが特徴です。また、痙攣性便秘の便はコロコロとウサギのふんのようになるのが特徴です。
便秘があると、腸内に異常発酵が起こり、腹部にガスがたまって膨らんだり、重い圧迫感があったりします。また、食欲不振、腹痛、むかつき、吐き気、頭痛などがしばしば起こり、吹き出物や痔核があらわれ、ひどい場合は、全身倦怠や不眠におちいります。これが、「便秘は万病のもと」といわれるゆえんであります。
東洋医学は、この常習性便秘に治療を施して効果があります。
鍼灸治療
主要なツボ
腹部 「中脘」、「天枢」、「大巨」
腰部 「大腸兪」、「小腸兪」
足部 「足三里」
手部 「神門」
などが特効穴です。
治療法
便秘には鍼灸治療を行うと非常に効果があります。上記のツボを軽く押して、痛みやしこりがあるところを選んで治療をします。
灸の場合は、特に効果のあるツボは「大巨」、「中脘」、「大腸兪」、「神門」、「足三里」であります。とりわけ「大巨」は昔から腸の病気に必ず使われた名穴で、大変面白い性質を持っています。腸が過敏になり過ぎて下痢をする場合もこのツボは有効で、反対に腸が弛緩して便秘する場合にもよく効きます。おそらく「大巨」には、腸の運動をうまい具合に調整して、正常にするような働きがあると考えられます。
手首の「神門」も便秘の名穴で、このツボに鍼灸治療をしますと、かなり頑固な便秘でも解消します。
「足三里」、「三陰交」、「合谷」、「手三里」などのツボは、胃腸の機能がよくなります。
灸治療の場合は、米粒大のもぐさを5~7壮を、毎日症状が改善されるすえます。知熱灸やニンニク灸、ショウガ灸、塩灸にしてもかまいません。
刺激に敏感な人や、あるいは症状の軽い人なら、腹部の時計回りのマッサージで症状が軽快し、排便がよくなります。ことに左腰骨の内側から太もものつけ根にかけては、念入りにマッサージを行います。この部分は、排便に直接影響を及ぼすS字状結腸や直腸があるからです。
メモ
常習性便秘にならない方法として第一に挙げられるのは、繊維質の多い食べ物をたっぷりと食べることです。繊維は、腸の働きを活発にして、便通をつけてくれます。
第二に、毎日の排便時刻を一定にするように習慣付けるとともに、排便を我慢しないことであります。次に運動を心がけます。運動する暇がない人でも、できるだけ歩くようにします。それもやや早めに歩くのがいいでしょう。
そして、安易に下剤に頼ることは慎むべきであります。
下痢の家庭療法
便秘と下痢が交互に起こる人はへその横を指圧をしましょう
便秘と下痢といえば、一見まったく正反対の症状のように思えますが、もとをただせば、いずれも腸の働きが正常ではないことが原因になっています。この状態を正さないと、症状は根本的に解決とはなりません。
その腸の働きを整える絶好なツボが「天枢」です。
自分で指圧する場合は、仰向けに寝た状態で行い、両手のなか指の先を左右「天枢」の位置にあて、指先に力を込めてゆっくりとグッと押しつけて、2~3秒たったら力を抜き、2~3秒休んでまた押すという指圧を繰り返します。5分ほど続ければ、便秘しているときは心地よい便意をもよおし、下痢をしていればその不快な症状がおさまります。
青竹踏みと便秘
健康法としてうってつけの青竹踏みは、便秘にも有効です。足の裏のツボを刺激して、胃腸の動きを活発にして、便通がよくなります。特に、女性に多い冷え性を伴った便秘は大変効果があります。1分間70回くらいのリズムで3~5分間ふみつけるのが理想です。
体からのSOS
細い便が出るのが続く・・・大腸がん
普通の大便は直径2~3㎝、長さ10~15㎝くらいです。塊状につながっている場合もあれば、なめらかなソフトクリーム状の場合もあります。便日の人の場合は、長さ5㎝くらいの塊がポコポコ出ます。
腸内環境が悪い人や過敏性腸症候群の人は、細くにゅるにゅるした便が出ますが、今まで普通の便だったのに、急に細い便が続くようでしたら大腸がんの可能性が疑われます。大腸がんになると、特に大腸の出口付近に腫瘍がある場合、大腸は狭まれて、直径1㎝くらいの便が出ます。
また、便に血が混じって赤い場合も大腸がんの疑いがあります。大腸がんによる便の血は赤い鮮血で、これが黒やチョコレート色ならば、大腸より上の十二指腸や胃に問題がある可能性があります。このときに血の付き方具合でがんの位置は予想できます。便そのものが赤いときは大腸の上の方、便に赤いものがまだらに混じっているときは大腸の真ん中あたり、便の表面に赤い粘液が付いているなら大腸の下の方にがんがあると考えてもいいでしょう。
ただ、厄介なのは痔があって大腸がんがある場合です。鮮血が出ても、痔だと思って見逃してしまう恐れががあります。
痔持ちの人で便に血が付くようでしたら、便を気を付けて観察します。晩自体が赤くなくて、便器の水がピンクや赤に染まっている場合は、肛門から出血のことが多く、水が赤くないのに便だけが赤い場合は大腸がんの可能性が高まります。
他にも大腸がんの兆候として、貧血症状があります。腸から出血が起こり、血液が減っているためです。特に生理中や閉経後の女性に貧血症状が見られる場合、医師は大腸がんや胃がんを疑います。合わせて、腹痛や体重減少などの症状も出るので、これらが重なる場合は、すぐに医療機関で検査をする必要があります。
なお、大腸がんは40歳以上から増加し、年齢が上がるにつれて増えていきます。50、60歳になったら、できれば内視鏡検査を3年に1回は受けることをお勧めします。大腸がんは家系的要素もあるので、身内で大腸がん患者がいる場合は、特に検査を受けたほうがいいでしょう。
大腸がんを予防するには、腸内環境を整えることが大切になります。ハムなどの加工肉や赤身肉を摂り過ぎると、腸内環境を荒れさせ、大腸がんのリスクが高まるといわれています。最近は、炭水化物を減らし、その代わりに肉や油をいくらでも食べていいというロカボダイエットが流行っていますが、体重を減らす効果はあっても、大腸がんのリスクを増すことになります。やはり健康を考えるのであれば、食事はバランスよくとるのが一番です。
また、たばこは大腸がんのリスクファクターとなります。タバコを吸っただ液に混じる発がん性物質が、食道や胃を通り、腸に達するためです。それぞれの場所の粘膜を傷つけ、がんになるリスクを高めます。
何科に行くべき?
消化器外科/胃腸科/肛門科
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