風邪の予防と治療 ー東洋医学のアプローチ
【目次】
1.風邪の原因と症状
2.風邪の鍼灸治療
・主要なツボ
・治療法
・風邪の下痢に効く手の先のツボ
・風邪の家庭療法
・食べて改善
からだを温めて風邪に対抗
せきを止める
風邪の原因と症状
日本人は1年に平均5~6回は風邪をひくといわれるほどで、「風邪くらいで医者にかかるなんて…」と軽んじられる反面、妙にこじらせると思わぬ病気を併発させる、油断できない一面を持っています。いずれにせよ、症状が軽いうちに手軽に治すことができればいいわけであります。
ふつう、風邪といわれるのは、外気の寒さ、冷え、湿気などによって起こる軽い呼吸器症状で、重症化すると、気管支炎や肺炎などになり、この段階に至りますと、専門医に任せる以外ありません。また、インフルエンザのようなウィルスによる風邪もここでは別にします。
鼻風邪、のど風邪の段階で、熱も高くないような症状にツボ療法を応用して悪化を防ぐことが肝要になります。
東洋医学では、病気は外からの邪気が体内に入って起こるものと考えています。風邪の場合は、文字通り「風の邪気」が体に入り悪さをして、頭痛や発熱、せきなどの症状をもたらすとされています。
東洋医学では、常に体の全体的な調整を行い、体内の治癒力をうながし、邪気を除くことに重点を置いた治療だけに、薬を使わず、気持ちよく体が回復します。
風邪の鍼灸治療
主要なツボ
などが重要なツボであります。
治療法
風の邪気は最初に背中の「風門」から体に入り、それが後頭部の「風池」に溜まり、さらにその上の「風府」に集まります。そして、これが頭の中に入り、体の節々まで及んで、いわゆる風邪の諸症状を引き起こす、と東洋医学では考えています。
したがって、まずこの三つのツボを治療を治療することから始めます。それらのツボに加えて、風邪の諸症状に絶対欠かせないのが「肺兪」の刺激であります。その他に、「大椎」や「大杼」も加えるといいです。
胸部では、「中府」が特効穴であります。「中府」は肺経の募穴となっていて、呼吸器を病んだとき、色々な症状がこのツボに集まるとされています。
腕では、「孔最」が特効穴であります。「孔最」は肺の郄穴で、風邪の邪気が最も集まるところとされ、のどの痛み、せき、たんなどの症状を取り除くのによく効くツボであります。合わせて、のどの痛みや食欲不振を解消するために「合谷」を使用します。
なお、咳が出て苦しいときは、のど仏の下の「天突」、胸では「兪府」、「彧中」、「中府」などを中心に刺激をします。特に「天突」は、発作的なせきを抑えるのに効き目があります。
風邪で頭痛、頭重があるときには、「百会」、「風池」をよく刺激します。肩こりを伴う場合には「肩井」、「曲垣」をポイントに、鼻づまりには、目の下の「四白」をポイントにツボ刺激を行います。
風邪の下痢に効く手の先のツボ
風邪をひいたとき、ウィルスが腸管に入って下痢を起こすことがあります。
この場合は、人差し指の爪のつけ根で親指側にある「商陽」を、もう片側の人差し指と親指ではさむように指圧するとよいでしょう。
このツボは、大腸経の始まりのツボになっており、大腸経の中でも特に腸の調子が悪くなって下痢気味の時、しかも単に下痢をしているというのではなく、風邪をひいて熱のある時に起こる下痢によく効きます。
このツボを、つまようじのとがっていない方で刺激しても、磁気粒をはってもよいでしょう。
ちなみに、風邪と腸は決して無関係ではなく、風邪をひくというのは、えてしてお腹を冷やしていることが多く、風邪のための頭痛や熱と同時に、お腹が渋ったり、下痢っぽくなったりすることが多いです。
このような場合は、「商陽」は一石二鳥の効果を発揮します。
風邪の家庭療法
風邪をひいて熱っぽいとき、手の指先をもむと、てきめんに熱が下がり、風邪の治りが早くなります。
手の指先は中指でも、人差し指でもよく、とくに爪の生え際の側面を、反対の手の親指と人差し指を強くもみます。かなり痛いですが、その痛みで交感神経が瞬時に緊張し、全身の末梢血管が強く収縮します。血管が収縮すると、そこを流れる血液量が減るので、血管というスチームの管を流れる蒸気の量が減るようなもので、体表が冷えて、温度が下がることになります。
食べて改善
からだを温め、肺をうるおす食材をとり入れて、引き始めのうちに風邪を追い出します。
からだを温めて風邪に対抗
シソ、ショウガ、長ネギ、コショウ、黒砂糖、トウガラシ、八角など。
せきを止める
アーモンド、銀杏、カブ、ショウガ、ニンニク、ユリネ、ウメ、ナシ、海苔、はちみつなど。
頸部 「風府」、「風池」
背中 「大椎」、「大序」、「風門」
「肺兪」
喉 「天突」
胸部 「中府」
腕部 「孔最」、「合谷」