甲状腺病の症状 ー鍼灸治療の効果
【目次】
1.慢性甲状腺病の原因と症状
2.慢性甲状腺病の鍼灸治療
・主要なツボ
・治療法
・汗をかき過ぎる場合は…
3.体からのSOS
・急に暑がりになった・・・バセドウ病
・何科に行くべき?
慢性甲状腺病の原因と症状
甲状腺病の症状のうち最も多いのは、首が腫れる甲状腺腫であります。これは甲状腺疾患の局所症状の一つですが、甲状腺の腫大はよほど大きくならない限り、自覚されることは少ないです。
そのため、甲状腺病は触診による診断が重視されます。患者を自然の姿勢でまっすぐに椅子に座らせて、患者の正面に座るか、もしくは背後に立って検査します。
まず、首の前面で正中線に気管を、次いで、喉頭結節を触診すれば、その両側で腫れた甲状腺を触知できます。正常ならば、このように触知されることはありません。甲状腺腫であるか否かは、この位置関係のほかに、飲み込み運動によって移動するか否かが決め手となります。動かない場合は、リンパ節の腫脹であることが多いです。
この甲状腺腫は、甲状腺腫の大きさによって二つに分類されます。甲状腺がそのままの形で腫脹するびまん性甲状腺腫と、その一部のみが腫脹する結節性甲状腺腫がそれであります。びまん性にはバセドウ病や慢性甲状腺炎があり、結節性には甲状腺腫や甲状腺がんなどがあります。
これらの甲状腺の病気は医師の診断と治療をもとに管理されるべきものでありますが、慢性化、症状が一応安定した状態になれば治療とともに、生活の中での積極的な健康デザインが必要になります。その意味では、鍼灸治療は有意義であります。
対象としては、何となく体がだるくて微熱がとれず、脈拍が速くなったり、動悸がしたり、汗をかきやすく、冬でも暑がる、瘦せてくるなどの症状を持つ、いわゆる甲状腺機能亢進症、代表的な病名はバセドウ病が挙げられます。
この逆の場合の、体に水分がたまって太ったように見える甲状腺機能低下症にも、鍼灸治療が適用できます。その他、記憶力の低下をもたらす甲状腺機能障害なども対象になります。
慢性甲状腺病の鍼灸治療
主要なツボ
などがポイントになります。
治療法
うつぶせで、「天柱」、「翳風」を処置します。
その後、背中の「大椎」、「心兪」、「肝兪」さらに、腰の「腎兪」を刺激します。体力を向上させるために腰の「命門」も処置します。
次に、あおむけで首の「人迎」を軽く刺激します。「気舎」、「天突」も刺激します。
さらに、「膻中」、「中脘」、「肓兪」、「関元」を刺激します。
これらの治療は、東洋医学でいう心・肝・腎の機能を正して、循環機能と全身の筋緊張を是正し、あわせて全身のエネルギー循環を調整して、患者の反応を変調させ、安定させることを目的として行うものであります。
仕上げとして、「足三里」、手では「合谷」と「曲池」を刺激しますと、さらに有効になります。
汗をかき過ぎる場合は…
バセドウ病の症状の特徴の一つは多感でありますが、その他、自律神経の失調によって汗が多い人も結構います。
ツボ療法は、頭の機能を整える意味で「百会」、気分を安定させ頭をスッキリさせるために「天柱」、「風池」を刺激します。
また、〝肺は皮の合〟といって、昔から肺機能は皮膚と関係する、つまり、肺の異常は皮膚に表れるといわれています。その意味から、汗は皮膚から出てくるので、肺機能を整える「肺兪」の処置も必要になります。また、肺の邪気が集まるとされる「中府」のツボも重要で、注意深く刺激します。
加えて、肺の臓と表裏一体の関係である大腸の働きを正常にする「合谷」も刺激しますと、いっそう効果があります。
また、手首の「太淵」は肺の原穴として、肺機能を全体に調節する重要なツボでありますので、ここのツボの処置も忘れないようにします。
体からのSOS
急に暑がりになった・・・バセドウ病
バセドウ病は甲状腺の病気です。甲状腺はのどの両脇にある蝶々の形をした組織で、ここでは元気ホルモンともいわれる甲状腺ホルモンがつくられます。
甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝を調整したり、心拍数を上げたり、交感神経に働きかけて体温を上昇させたりします。この甲状腺ホルモンが過剰につくられてしまうのがバセドウ病です。
必要以上に元気ホルモンが生まれるために、体が常にアクセルを踏んでいる状態となり、脈拍は速く、体温は上昇し、心臓はドキドキし、汗がたくさん出やすくなります。そのため、急に暑がりになるという症状が出るわけです。
他にも、常にエンジン全開で無駄にエネルギーを消費するので、体重が落ちて瘦せますし、疲れやすくなり、精神的にも不安定になります。日常の生活に大きな支障が出てきます。また、バセドウ病が原因の不整脈から、心不全や脳卒中を引き起こす人もいるので注意が必要です。
特に、女性は意識したい病気の一つです。バセドウ病は、女性の方が圧倒的にかかりやすいからです。また、遺伝的な要素もかかわってくるといわれています。身内にバセドウ病患者がいる女性であれば、定期的に血液検査で甲状腺ホルモンの値を調べることをお勧めします。数値でバセドウ病かすぐにわかります。
バセドウ病は、早期発見をすれば薬で治せる病気です。なるべく早い対処で、後悔しないようにしましょう。
何科に行くべき?
内科/内分泌内科/代謝内科
後ろ首 「天柱」
耳裏 「翳風」
背部 「大椎」、「心兪」、「肝兪」
「腎兪」
頸部 「人迎」、「天突」、「気舎」
腹部 「膻中」、「巨闕」、「中脘」
「肓兪」、「関元」
足部 「足三里」
手部 「合谷」