慢性気管支炎(咳・痰・息苦しさ)

慢性気管支炎の原因と鍼灸治療の効果 ー 長引く咳・痰・息苦しさを改善

慢性気管支炎(咳・痰・息苦しさ)

「しつこい咳や痰がずっと続いている…」
「少し動いただけでも息切れがする…」
「風邪でもないのに、なぜか呼吸が苦しい…」

その不調、もしかしたら慢性気管支炎かもしれません。 風邪は万病のもととも言われるように、こじらせてしまうと様々な不調を引き起こします。特に、大気汚染や喫煙などが原因で、治りにくい慢性気管支炎に悩まされる方が増えています。この記事では、慢性気管支炎の原因と症状、そして東洋医学に基づく鍼灸治療によるアプローチや、ご家庭でできるセルフケアについて詳しく解説します。

【目次】

  1. 慢性気管支炎とは?~その原因と主な症状~
  2. 慢性気管支炎に対する鍼灸治療
  3. ご家庭でできる!呼吸を楽にするセルフケア
    • 呼吸筋を鍛えるリハビリ(腹式呼吸)
    • 痰が出にくい時のための腹部・腰部指圧
    • 食べて改善 身体を温め、咳を鎮める食事
  4. 【重要】体からのSOSサイン~喉の違和感と注意すべき病気~
    • 「すっぱいものにだけむせる」のは危険なサインかも?
    • 早期発見のためにできること
    • 何科に行くべき?

1.慢性気管支炎とは?~その原因と主な症状~

咳をする女性

慢性気管支炎は、気管支に慢性的な炎症が起こり、たんが長期間(一般的に1年のうち3ヶ月以上、それが2年以上続く状態)続く病気です。

  • 主な症状
    • しつこい咳と痰
      特に起床時に多く見られます。痰の色は様々ですが、黄色や緑色など色が付いている場合は、細菌感染などを伴っている可能性があり、あまり良い状態ではありません。
    • 息切れ
      病状が悪化したり、肺の組織が壊れてしまう**肺気腫(はいきしゅ)**が合併したりすると、息切れを伴うようになります。気管支の奥の細い部分(細気管支)にまで炎症が及ぶと、初期から息切れが見られることもあります。
    • その他の症状
      痰が多いと、運動時に息切れしやすくなります。時に血痰(血の混じった痰)が見られることもあります。肺炎を併発すると高熱が出ますが、慢性気管支炎だけでは、熱が出ても微熱程度であることが多いです。
  • 重症化すると
    チアノーゼ(唇などが紫色になる)や安静時の息切れが見られ、顔が腫れぼったくなり、足がむくむなどの症状が現れることがあります。
  • 悪化しやすい時期
    特に秋から冬にかけての寒い季節に症状が悪化しやすい傾向があります。秋口になって咳を伴う風邪のような症状が始まったら、こじらせないよう注意し、早期に治療を行うことが重要です。

主な原因

慢性気管支炎は、大気汚染、タバコの吸いすぎ(受動喫煙含む)、刺激性のガスや粉じんなどと密接な関係があり、なかなか治りにくい病気の一つです。また、体質的にかかりやすい人もいます。 慢性気管支炎と診断されたら、まずは呼吸器内科などの医師と相談し、長期的な治療計画を立ててもらうことが大切です。

【鍼灸治療の役割】 東洋医学に基づく鍼灸治療は、西洋医学的な治療と並行して行うことで、胸の痛みや息苦しさ、つらい咳や痰といった症状を取り除き、虚弱体質に多い全身症状を改善することを目的とします。

2.慢性気管支炎に対する鍼灸治療

鍼灸が慢性気管支炎に効果的な理由

  • 気道の炎症緩和
    鍼や灸の刺激により、気管支周辺の血行を促進し、炎症を鎮める効果が期待できます。
  • 呼吸機能のサポート
    呼吸に関わる筋肉(横隔膜や肋間筋など)の緊張を和らげ、呼吸を楽にします。
  • 免疫機能の調整
    全身のバランスを整えることで、身体が本来持つ自然治癒力を高め、感染に対する抵抗力をサポートします。
  • 痰の排出促進
    東洋医学では、痰は体内の水分代謝の乱れ(水滞)から生じると考えます。関連するツボを刺激し、水分代謝を改善することで、痰の生成を抑え、排出を助けます。
  • 随伴症状の緩和
    息苦しさからくる不安感や、咳による体力消耗、不眠といった症状も、自律神経を整えることで緩和を目指します。

症状緩和に効果が期待できる主要なツボの例

慢性気管支炎の症状や体質に合わせて、以下のツボを中心に施術します。

背部 「大椎だいつい」、「定喘ていぜん」、「肺兪はいゆ
   「厥陰兪けついんゆ」、「腎兪じんゆ
喉元 「天突てんとつ
胸部 「中府ちゅうふ」、「膻中だんちゅう
腹部 「肓兪こうゆ
腕部 「孔最こうさい」、「列欠れっけつ
足部 「足三里あしさんり」、「陰陵泉いんりょうせん」、「三陰交さんいんこう

具体的な鍼灸治療法

  1. まず、うつ伏せの状態で、背中にある「大椎」、「定喘」、「厥陰兪」、「心兪」、「腎兪」、「志室ししつ」などを刺激し、胸の痛みや息苦しさを取り除きます。
  2. 背中や腰の緊張が十分にほぐれたら、仰向けになり、胸にある「中府」の治療をします。「中府」は呼吸器系の反応が現れやすいツボで、押すとシコリやかたまりを感じることがあります。
  3. 咳や痰がひどいときは、喉元の「天突」から胸骨の上端に向かって、鍼で響かせるように刺激します。
  4. 胸苦しさや動悸を鎮めるためには、胸の中央にある「膻中」や、みぞおちの「巨闕こけつ」が役立ちます。
  5. 腹部の「肓兪」は、腰の「腎兪」や「志室」と共に、身体の根本的なエネルギー(腎気)を補い、体質を強くするツボなので、しっかり刺激します。
  6. 手のツボでは「孔最列欠」が重要です。
    • 孔最」は、咳や胸苦しいときに大変よく効くツボです。
    • 列欠」にも同様の効果があり、さらに肺経から次の大腸経へと気血が流れるポイントであるため、下痢や便秘といった大腸の症状も同時に改善する効果が期待できます。
    • その他、「侠白」や「太淵」も咳や痰を取り除くのに役立ちます。
  7. 足のツボでは、「足三里」、「三陰交」、「陰陵泉」、「陽陵泉」などを刺激します。これらのツボは、咳や痰を取り除くと同時に、身体の冷えを防いでくれます。
  8. 治療後に、これらのツボに磁気粒などの粒鍼を貼っておくと、効果が持続しやすくなります。

【お灸(灸治療)の活用】
慢性気管支炎には、鍼治療だけでなくお灸も大変効果的です。上記のツボに米粒大のもぐさを1カ所に3壮(そう:お灸の単位)程度すえる治療を、「3週間続けて1週間休む」または「1週間続けて3日休むことを3週間続ける」といったサイクルで行います。

3.ご家庭でできる!呼吸を楽にするセルフケア

呼吸筋を鍛えるリハビリ(腹式呼吸)

呼吸筋(横隔膜など)を鍛え、呼吸を深くするため、1日に2~3回、1回に10分間ほど、腹式呼吸を行うと良いでしょう。

  • 方法
    仰向けに寝て、鼻からゆっくり息を吸い込みながらお腹を大きく膨らませ、口からゆっくりと息を吐きながらお腹をへこませます。

痰が出にくい時のための腹部・腰部指圧

咳や痰が続くと、腹筋が疲れてしまい、痰をうまく排出する力が弱くなります。そこで、腹筋の機能を高めるための指圧が効果的です。

  • 方法
    1. おへその両側(天枢のあたり)を、ご自身で優しく指圧します。その後、体力を高めるために、ベルトの高さあたりの腰(腎兪のあたり)を指圧します。
    • これを続けると、腹筋がしっかりしてきて、痰が楽に吐き出せるようになります。

食べて改善 身体を温め、症状を和らげる食事

身体を温め、「肺」を潤す食材を取り入れて、ひき始めのうちに風邪を追い出すことが大切です。

  • 身体を温めて風邪に対抗する食材例
    シソ、ショウガ、長ネギ、コショウ、黒砂糖、トウガラシ、八角など。
  • 咳を止め、喉を潤す食材例
    アーモンド、銀杏(ぎんなん)、カブ、ショウガ、ニンニク、ユリネ、ウメ(梅干し)、ナシ(梨)、海苔、はちみつなど。

4.【重要】体からのSOSサイン~喉の違和感と注意すべき病気~

「すっぱいものにだけむせる」のは危険なサインかも?

普段は何でもないのに、すっぱいもの(酢の物など)を食べた時にだけ、異様にむせる場合は、咽頭がん食道がんの可能性も考えられます。 特に、食べ物と空気を交通整理している、食道の上部や咽頭、喉頭の近くに腫瘍があると、刺激性の強いすっぱいものにだけ敏感に反応して、むせることがあります。

  • 進行した場合のサイン
    • がんが進行すると、すっぱいものだけでなく、どんなものでもむせるようになります。
    • 食べ物がつっかえるような感じが出てきます。(液体は通るのに固形物が引っかかるなど)
    • 何週間も治らない、風邪のような声がれが続く場合も、声帯のあたりにがんがある可能性があります。

早期発見のためにできること

食道がんや咽頭がんは、熱いものや濃いアルコールによる長年のダメージ、そしてタバコが大きな原因となります。発がん性物質を含む煙は、吸う時と吐く時に二度も喉や気管を通るため、ヘビースモーカーの方は特に注意が必要です。

これらの病気は、初期には発見されにくく、発見が遅れると予後が悪い厄介ながんです。早期発見が何よりも大切です。

  • 予防と検診
    • 咽頭がんや食道がんは、60~70代の男性に発症が多く、喫煙・飲酒が大きな危険因子です。年齢や習慣が当てはまる方は、必ず定期的に検診(胃カメラ検査など)を受けることを強くお勧めします。
    • 健診でのポイント
      胃カメラ検査を受ける際に、医師に「のどと食道が気になるから、しっかりと見てほしい」と一言伝えましょう。胃カメラは主に胃の中を見ることが目的ですが、その一言があれば、食道や咽頭もしっかりと観察してもらえ、早期発見に繋がる可能性があります。そのひと言が、あなたの命を救うことがあるかもしれません。

何科に行くべき?

  • 内科
  • 消化器外科・内科
  • 耳鼻咽喉科

ひごころ治療院では、このような重篤な疾患の可能性も視野に入れつつ、まずは専門医の診断を最優先としています。その上で、鍼灸治療でサポートできることをご提案させていただきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です