胆石と胆のう炎の原因 ー鍼灸治療の効果
症状
胆のうは右のわき腹、肝臓の下にあって、肝臓から分泌された胆汁をたくわえるところです。この胆汁は細い胆道を通って十二指腸に流れます。そして、胆道には細い胆管と袋のような胆のうがありますが、この管と胆のうにできる結石が胆石であります。
胆石は、胆汁の成分の一部が沈殿して石状になったもので、成分的にコレステロール系とビリルビン系のものがあります。旧来、日本人には後者のものが多くみられましたが、近年は次第に前者のものが増えています。
太り気味の人や、お産を何度もした女性などが胆石症になりやすいく、性別では女性は多く、食生活で脂っこい食べ物を好む人や、大食漢の人がなりやすいです。
しかし、胆石があっても症状が必ずあらわれるとは限りません。一生痛みを経験しないで、そのまま胆石に気づかない人もいます。ところが、ひとたび痛み始めますと、胆石疝痛発作といって、激しい痛みが発作的に起きます。痛みは右肋骨下を中心にすることが多く、みぞおちから始まることもありますが、右上腹部に寄っていきます。右肩や右背に響くような放散痛があるのも特徴であります。
症状が重いと、激痛とともに吐き気、寒気がして、冷や汗が出てきます。そして、発熱します。黄疸症状が出る場合もあります。しかし、軽い症状の場合には、単なる胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍と間違えやすいです。また、医師の治療を受けて痛みがなくなると、ケロッとして胃けいれんくらいにしか思わなくなりますが、放っておくと胆道がんになりやすいので、きちんとした治療が必要であります。
この胆石を持っていますと、胆のうは炎症を起こしやすく、反対に胆のう炎があると胆石ができやすく、胆のう炎は胆石症の余病の一つとさえいわれています。また、胆のう炎と胆管炎は同時に起こることが多く、両者を合わせて胆道感染症と呼んでいます。上腹部痛と発熱を主症状とする病気で、急性のものと慢性のものがあります。
胆石を持っている人は専門医の治療を受けることが基本ですが、ツボ療法を併用することによって、症状の軽快や苦痛を和らげることができます。胆のう炎も専門医の治療の補助として、症状を軽減するために行います。
鍼灸治療
主要なツボ
背部 「肝兪」、「胆兪」、「陽綱」、「腎兪」
腹部 「巨闕」、「期門」、「日月」、「肓兪」、「大巨」、「天枢」
足部 「陽陵泉」、「丘墟」
手部 「内関」、「合谷」
などがポイントになります。
治療法
背中の「肝兪」、「胆兪」、「陽綱」に灸治療をします。「肝兪」は肝の臓の邪血が注ぐところ、「胆兪」は胆の腑の邪血が注ぐところとされています。とりわけ、「胆兪」は胆の兪穴で、現代医学でも「ボアスの圧痛点」として有名なところであり、胆のう炎のときは必ずここに痛みがあらわれます。
さらに、体の活力をつけるために「腎兪」にも刺激を与えます。
腹部では「巨闕」、「期門」、「日月」に治療を施します。特に「期門」、「日月」は、胆のうの位置と重なり、重要なツボであります。「日月」は右側を丹念に治療を行うと効果があります。お腹が張る、便秘を伴うときは、「巨闕」、「大巨」にも刺激を与えます。
足では、「陽陵泉」と「丘墟」に灸治療をします。特に胆のうに症状がある場合、右足首の「丘墟」のあたりが何となく重だるい感じがすることがあります。「陽陵泉」と「丘墟」は胆経に属するツボで、胆のうの症状を取り除くのにきわめて有効であります。加えて、肝、腎、脾の三つの臓腑をめぐる経脈が交わる「三陰交」も処置しますと、さらに治療効果が出ます。
手は「手三里」、「内関」を治療しますと、胆石、胆のう炎の痛みが軽減されます。
灸治療は、米粒大のもぐさを3~5壮すえます。3週間続けたら1週間休み、再び3週間続けるのが理想です。知熱灸やショウガ灸でも効果があります。
メモ
胆石症や胆のう炎のツボ療法の場合は、マッサージや指圧によるツボ刺激は、背中や足、手ならいいですが、腹部は避けるべきです。したがって、灸や鍼の治療のほうがいいでしょう。灸なら腹部の表面から熱刺激を加えますので、胆のうの収縮を促進して効果をあげることができます。鍼治療も同様の効果があります。また、極超短波の照射などもこの病気に効果があります。
体からのSOS
今まで経験したことのない強い腹痛・・・急性腹症
突然、今まで経験したことがないほどの腹痛が襲うことを、医学的には〝急性腹症〟といいます。脂汗が出て、七転八倒し、意識を失いそうになるくらいの強い痛みが起きるお腹の大事件です。
急性腹症といっても原因は様々で、イレウスいわゆる腸閉塞と急性膵炎、急性虫垂炎などがあります。
イレウスとは、腸がねじれてしまう病気です。普段はうまくお腹に整理して入っている腸が、運悪く何かかの原因で途中でねじれてしまい、血液が滞って腸が腐ることで、ひどい腹痛、嘔吐、便が出ないなどの症状に見舞われます。
急性膵炎は、膵臓の消化酵素が膵臓自信を溶かしてしまう病気です。アルコールを飲みすぎるとなりやすく、大酒飲みの病気ともいわれています。膵臓がパンパンに腫れ、上腹部に激痛が起き、その痛みで気を失う人もいるほどです。死亡率も高い危険な病気です。
急性虫垂炎は、急性腹症の原因で一番多いとされる病気です。大腸の入り口にある盲腸に異物や便の硬くなったものが詰まって細菌が入り、炎症が起きる病気です。はじめはお腹のいろいろなところが痛くなりますが、だんだん盲腸のあるの右下腹部付近に痛みが集まってくることが多いといわれています。
ほかにも急性腹症には、胆のうが炎症を起こす急性胆のう炎や、腸に一時的に血液が行かなくなる虚血性腸炎など様々な病気があります。いずれの急性腹症も悪化すると〝急性腹膜炎〟に発展し大変危険です。腹膜とは、お腹と臓器を包んでいる膜で、どの臓器ともつながっていない清潔な場所で、ふつうは炎症は起こしません。そのため、菌が侵入すると一気に増殖してしまい、敗血症によって命を落とすことがあります。
よくあるのが盲腸をこじらせて腹膜炎で亡くなったというケースです。盲腸に穴が開き、そこから便が漏れて腹膜に炎症が起こることがあります。あるいは、イレウスで腐った腸に穴が開きそこから膿や細菌がもれる、急性膵炎の炎症が腹膜に及ぶなど、様々な原因で急性腹膜炎は起こります。
いずれにせよ、七転八倒する急性腹症は、すぐに救急車を呼んで、一刻も早く対処しましょう。
何科に行くべき?
消化器内科/消化器外科/すぐに救急車を呼んでください
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