口角炎(口角の荒れ)

口角炎(口角の荒れ)の原因と鍼灸による対策方法

口角炎(口角の荒れ)

「唇の端が切れて痛い…」
「口角炎が何度も再発して治らない…」
「もしかして、胃腸が弱っているサイン?」

繰り返す口角炎にお悩みではありませんか? 口角炎は、唇の両端(口角)に炎症が起こり、ひび割れ、赤み、痛みなどの症状が現れる状態です。東洋医学では、この症状を単なる皮膚トラブルではなく、身体の内側、特に胃腸からのSOSサインと捉えます。この記事では、東洋医学の視点から口角炎の根本原因を探り、鍼灸によるアプローチと、再発を防ぐための栄養・生活習慣について詳しく解説します。

【目次】

1.口角炎の原因と症状~それは「胃の花」かもしれません~

胃の不調

口角炎とは、唇の両端(口角)が切れたり、ただれたりする炎症のことです。関西では「胃の花が咲く」、あるいは「カラスの灸」などと呼ばれることもあり、古くから胃腸の疲れや不調が口元に現れたサインと考えられてきました。

口から食道、胃、腸、肛門までは一本の消化管として繋がっており、どこか一部に不調があれば、他の部分にも影響が出ることがあります。特に口は、消化器系の状態が目に見えて現れやすい場所なのです。 口角炎がなかなか治らない、あるいは頻繁に繰り返す場合、それは「消化器官のどこかに不調があるかもしれない」という体からのSOSサイン(見張りイボのようなもの)かもしれません。

軽い口角炎であれば自然に治ることもありますが、いつまでも治らない、すぐに再発するという場合は、胃腸の状態がかなり弱っていて、口周りの免疫機能が低下している可能性が考えられます。 これを放置すると、胃炎から胃潰瘍へと進行したり、腸の不調が他の問題を引き起こしたりするリスクも指摘されています。

口角炎を繰り返す場合は、まず生活習慣を見直すことが大切です。

  • 食事
    胃腸に負担をかけないよう、よく噛んで食べることを心がけ、水で流し込むような食べ方は避けましょう。アルコールや刺激物の摂りすぎにも注意が必要です。
  • 睡眠
    身体の回復と免疫機能の維持のため、質の高い睡眠を十分にとるようにしましょう。
  • その他
    ストレスを溜め込まない工夫も大切です。

また、子供の場合は、はしかや肺炎、インフルエンザのような高熱を出す病気の後など、体力が落ちているときに口角炎ができやすくなることがあります。

2.口角炎に対する鍼灸治療

鍼灸治療では、口角炎を単なる皮膚の問題として捉えるのではなく、その背景にある身体全体のバランスの乱れ、特に消化器系の不調にも目を向け、根本的な改善を目指します。

口角周囲のツボへの直接的なアプローチに加え、全身の関連するツボに鍼やお灸を用いて気の流れを整え、免疫力を高める施術を行います。

主要なツボ

口角炎の治療では、以下のツボがポイントになります。

口周囲 「地倉ちそう」、「承漿しょうしょう
背中  「肝兪かんゆ」、「脾兪ひゆ」、「胃兪いゆ
腹部  「巨闕こけつ」、「中脘ちゅうかん」、「天枢てんすう
    「不容ふよう」、「期門きもん
足部  「足三里あしさんり

治療法とアプローチ(一例)

口角炎は胃腸の不調と関連が深いため、鍼灸治療では消化器系の機能を整えることを主眼とします。

  1. まず、口角炎ができやすい口のきわにある「地倉」は特効穴とされ、よく刺激します。
    ※「地倉」は、地の恵みである穀物(=食べ物)を取り入れ、大倉(=胃)へ送る場所という意味があり、ここを刺激することで胃腸の調子を整える効果が期待できます。
    • 喉仏の上方にある「廉泉れんせん」への刺激を加えると、さらに効果的とされています。
  2. 次に、背中の施術を行います。消化器の働きを整える「肝兪」、「脾兪」、「胃兪」など(いわゆる胃の六つ灸)は必須のツボと考えられます。
  3. 腹部では、「巨闕」、「中脘」、「天枢」などを刺激し、必要に応じて「不容」、「期門」なども加えます。
  4. 最後に、胃の経絡に属する「足三里」などを刺激し、口角炎の遠因となっている胃腸の機能を根本から整えていきます。

口角炎に対して塗り薬を使うこともありますが、根本的な改善のためには、上記のような身体の内側(特に胃腸)から調子を整えるアプローチが非常に重要です。食生活の改善と組み合わせることで、より良い結果が期待できます。

治療を受ける際の注意点

唇の荒れを伴う場合
口角炎だけでなく唇全体の荒れがある場合は、上記のツボに加え、左右の第8肋骨の先端あたりにある「承満しょうまん」というツボも処置します。このツボは胃の張りや重苦しさに効果があり、消化器機能を正常化して唇の荒れ改善を助けます。

鍼と灸の効果
口角炎には、鍼治療も灸治療も効果が期待できます。

灸治療の場合
特に「胃兪」、「中脘」、「天枢」、「足三里」などへの施灸が効果的です。毎日1回、各ツボに3壮程度を目安に行いますが、ご自宅で行う場合は、熱さや皮膚の状態に注意が必要です。お子様や皮膚が弱い方は、火傷のリスクが低い温灸(間接灸)を用いると良いでしょう。根気よく続けることが改善への鍵です。

3.食事で改善!口角炎と栄養の深い関係

口角炎の予防や改善には、適切な栄養摂取も欠かせません。

口角炎ケアに必要な栄養素

特に以下の栄養素は、皮膚や粘膜の健康維持に重要とされています。

  • ビタミンB2
    皮膚や粘膜の保護、エネルギー代謝に関与。不足すると口角炎や口内炎、舌炎などを起こしやすくなります。(多く含む食品:レバー、うなぎ、卵、納豆、乳製品など)
  • ビタミンB6
    皮膚や粘膜の健康維持、たんぱく質の代謝に関与。不足すると皮膚炎や口内炎などを起こしやすくなります。(多く含む食品:カツオ、マグロ、レバー、バナナ、にんにくなど)
  • 鉄分
    血液を作るのに必要。不足すると貧血になり、粘膜が弱くなることがあります。(多く含む食品:レバー、赤身肉、あさり、ほうれん草、小松菜など)
  • 亜鉛
    皮膚の新陳代謝、免疫機能の維持に必要。不足すると皮膚炎や味覚障害などを起こすことがあります。(多く含む食品:牡蠣、レバー、牛肉、チーズ、ナッツ類など)

ビタミン不足が引き起こす症状

特にビタミンB群(B2、B6など)の不足は、口角炎だけでなく、口内炎、舌炎、皮膚炎(脂漏性皮膚炎など)の原因となることがあります。また、目の疲れ、充血、結膜炎などを引き起こしやすくすることもあります。

食生活との関連性

偏った食生活過食(食べ過ぎ)刺激物の摂りすぎなどは、胃腸に負担をかけ、栄養バランスを崩し、結果として免疫力の低下を招く可能性があります。これが口角炎のリスクを高める一因となることも考えられます。バランスの取れた食事を心がけることが大切です。

4.なぜ治らない?口角炎の慢性化とその対策

口角炎がなかなか治らない、あるいは頻繁に繰り返してしまう「慢性化」には、いくつかの原因が考えられます。

なぜ慢性化するのか?

  • 基礎疾患の存在
    糖尿病、貧血、免疫不全などの病気が背景にある場合。
  • 継続的な栄養不足
    ビタミンB群や鉄分、亜鉛などが慢性的に不足している場合。
  • 口腔内の問題
    唾液の分泌不足(ドライマウス)、カンジダ菌などの感染、合わない入れ歯など。
  • 生活習慣
    ストレス、睡眠不足、不規則な食生活など。
  • 外的刺激
    唇を舐める癖、乾燥、マスクによる摩擦など。

慢性口角炎に対する鍼灸療法

鍼灸治療は、単に口角の炎症を抑えるだけでなく、その背景にある胃腸機能の低下、免疫力の調整、ストレス緩和、血行促進といった身体全体のバランスを整えるアプローチを得意としています。 これにより、慢性的な炎症状態の改善や、口角炎が再発しにくい身体づくりをサポートすることが期待できます。

【重要】長引く場合の注意点

口角炎が2週間以上経っても改善しない場合や、頻繁に繰り返す場合は、自己判断せずに医療機関(皮膚科、内科、歯科など)を受診し、背景に他の病気が隠れていないか確認することが重要です。 もちろん、お近くの信頼できる鍼灸院にご相談いただくことも、体質改善への一つの有効な選択肢となります。

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