心臓の動悸(心臓神経症)の原因と鍼灸治療の効果 ー ツボ刺激で不安なドキドキをケア
「理由もなく胸がドキドキする…」
「時々、脈が飛ぶような感じがして不安…」
そんな心臓の動悸でお悩みではありませんか? このページでは、動悸の原因や症状、そして東洋医学に基づく鍼灸治療がどのようにその不快な症状にアプローチするのか、詳しく解説します。
【目次】
1.その動悸、大丈夫?~原因と見分けるべき症状~
動悸とは?心臓が原因の場合とそうでない場合
動悸とは、自分の心臓の拍動を普段より強く感じたり、速く感じたり、あるいは不規則に感じたりする自覚症状のことです。 動悸の原因には、心臓自体に何らかの病気があって起こるものと、心臓には器質的な異常がないにも関わらず症状が現れるものがあります。
【重要】専門医の受診が必要な危険な動悸のサイン
普段よく経験する一時的な動悸とは異なり、以下のような症状を伴う場合は、狭心症や不整脈といった重大な心臓病の可能性も考えられます。このような場合は、自己判断せずに必ず速やかに循環器内科などの専門医を受診してください。
- 激しい動悸と速い脈拍(1分間に120回以上)が同時に起こる
- 動悸に加えて、息切れや胸の痛み・圧迫感を伴う
- 意識が遠のくような感覚や、実際に失神する
その他の動悸の原因
上記以外にも、動悸を引き起こす可能性のある病気や状態には以下のようなものがあります。
- 高血圧症や低血圧症などの血管系の病気
- 貧血症といった血液の病気
- 呼吸器系の疾患(喘息など)
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などのホルモンの病気
心臓や血管の障害が原因となっている動悸は、発作的に起こることが多く、前述のような頻脈(脈が速い状態)や息切れ、胸痛を伴うことが多いのが特徴です。血液の病気(貧血など)であれば、めまいや立ちくらみ、顔面蒼白などが、呼吸器の病気であれば、動悸に先立って咳や息苦しさといった呼吸器症状が現れることが一般的です。
鍼灸治療が特に効果を発揮しやすい「心臓神経症」とは
しかし、多くの方が訴える動悸は、上記のような明確な病気と結びついたものではなく、病院で心臓の検査をしても「特に異常なし」と診断されるケースが少なくありません。 日常生活で脈拍に大きな異常がないにも関わらず動悸がするのは、いわゆる自律神経失調症や更年期障害に伴う症状であることが多く、このような心臓に器質的な問題がないにも関わらず動悸や胸部不快感を訴える状態を総称して「心臓神経症」と呼ぶことがあります。
また、「期外収縮」といって、時々急に脈が乱れる(例えば、トトンと連続して打ち、その後一拍抜けるように感じる)不整脈の一種も、多くは心配のない生理的なもので、疲労や睡眠不足、ストレス、ビタミン不足などで起こりやすくなります。(ただし、頻繁に起こる場合や他の症状を伴う場合は医師の診察が必要です。)
ひごころ治療院の鍼灸治療は、このような心臓自体に器質的な異常がない、あるいは生命に危険が及ぶ可能性の低いタイプの動悸(心臓神経症や一部の期外収縮など)に対して、大変効果を発揮しやすいと考えられています。
2.心臓の動悸(心臓神経症)に対する鍼灸治療
鍼灸が動悸に効果的な理由
鍼灸治療は、身体全体のバランスを整えることで、心臓神経症などによる動悸の改善を目指します。
- 自律神経の調整
鍼灸刺激は、交感神経と副交感神経のバランスを整え、過度な興奮や緊張を和らげ、心臓のリズムを安定させる効果が期待できます。 - 血行促進と筋緊張緩和
首や肩、背中、胸部の筋肉の緊張を緩め、血行を促進することで、胸部の圧迫感や息苦しさを軽減します。 - 精神安定作用
不安やストレスは動悸を悪化させる大きな要因です。鍼灸には心身をリラックスさせ、精神的な安定をもたらす効果があります。 - 内臓機能の調整
東洋医学では、動悸は「心」だけでなく、「肝」や「腎」といった他の臓腑の機能失調とも関連すると考えます。関連するツボを刺激し、これらの働きを整えます。
動悸ケアに効果が期待できる主要なツボの例
動悸のタイプや体質に合わせて多くのツボを使い分けますが、代表的なものには以下のようなツボがあります。
具体的な鍼灸治療法と東洋医学的視点
- まず、首の後ろ、背中、胸部の筋肉の緊張を取り除くために、「天柱」、背中の「厥陰兪」、「心兪」、胸の「膻中」、みぞおちの「巨闕」などを丁寧に刺激します。
- 特に背中にある「厥陰兪」は、東洋医学で「心包(心を包み保護する機能)」と関連し、心臓の機能に異常が起こり、全身の血の巡りが悪くなって手足や身体が冷えるような場合に用いられる重要なツボです。これをみぞおちの「巨闕」と併用することで、動悸、息切れ、胸苦しさ、手足の冷え、のぼせ、顔のほてりといった症状に対して、非常に良い効果が期待できることがあります。
- 胸の真ん中にある「膻中」は、東洋医学では「気」が集まる場所とされ、精神的なストレスや感情の乱れからくる動悸や胸のつかえ感、呼吸の浅さなどに効果的です。「膻中」も、他の関連するツボと組み合わせることで、その効果をより発揮します。動悸とともに胸の痛みがある場合には、背中の「肺兪」や手首の「神門」なども併せて刺激することがあります。
- 動悸の治療には、手のツボも大変重要な役割を果たします。
- 「郄門」は、急な動悸や胸の痛みに対して、特によく用いられるツボの一つです。
- 「神門」も、心臓に由来する動悸、息切れ、胸痛、胸苦しさ、不眠、精神不安などによく用いられ、特に胸痛発作を伴うような場合には「郄門」と共に重要なツボとなります。
- 小指の爪の生え際の内側にある「少衝」と、その外側にある「少沢」も、胸苦しさを鎮めるのに有効とされるツボです。日常的に、思いつくたびに小指を優しく揉む癖をつけるのも良いでしょう。
施術の方法
動悸の治療に対するツボ刺激は、マッサージや指圧だけでなく、鍼灸刺激が効果を発揮しやすいと考えられます。
上記のようなツボの中から、押して特に痛みを感じる場所や、しこりのように硬くなっている場所などを丁寧に選び、お灸であれば米粒大のもぐさを1カ所につき3~5壮程度行います。
手の小指の先にある「少沢」には、ごく少量の血を出す瀉血という方法が用いられることもありますが、これは専門家による判断と手技が必要です。
3.日常生活での注意点とセルフケア
動悸の改善と再発予防のためには、日々の生活習慣を見直すことも大切です。
- 動悸の大敵を避ける
- カフェインの摂りすぎ
コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、心臓を興奮させ、動悸を誘発・悪化させる可能性があります。摂取量や時間に注意しましょう。 - アルコールの飲みすぎ
アルコールも心拍数を上げ、不整脈を引き起こすことがあります。 - 喫煙
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、心臓に負担をかけます。禁煙が望ましいです。
- カフェインの摂りすぎ
- 規則正しい生活を送る
十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、生活リズムを整えることが、自律神経の安定に繋がり、動悸の予防にもなります。 - ストレスを上手にコントロールする
過度なストレスは動悸の大きな誘因です。自分に合ったリラックス法を見つけ、ストレスを溜め込まないようにしましょう。深呼吸や瞑想、趣味の時間なども有効です。 - 急な温度変化に注意
寒い場所から急に暖かい場所へ移動したり、熱いお風呂に急に入ったりすると、血圧や心拍数が急変動し、動悸が起こりやすくなることがあります。
ひごころ治療院では、鍼灸治療と合わせて、このような日常生活での注意点やセルフケアについても、お一人おひとりの状態に合わせてアドバイスさせていただきます。 不安なこと、気になることは何でもご相談ください。